第175話
「ここでいいよ。送ってくれてありがとう」
「それじゃ、、すみません、トイレお借りしていいですか?」
「トイレ?いいよ」
気のせいかな、さっき電信柱の所で人影を見えた。通行人なら止まるはずないのに隠れるように消えた気がする。
何となく嫌な予感がしたんだ。そして私の予感は的中する。入り口の門が開けた瞬間、男の人が見えたから私はダッシュし捕まえた。
ふん、陸上部で鍛えた足を舐めるなよ。どれだけ恭子先輩に部活でしごかれていると思ってるの。夏休み、何度も坂ダッシュして死にそうになったんだから!
その顔に頼り切った貧弱な体つきで私に敵うはずないじゃない。露出の高い服を着るならもっと鍛えなよ、ガリガリすぎる。
「ど、、どうしたの?」
「晴菜さん、警察呼んで下さい」
「違う!晴菜と話し合いたくて」
「だったら、何で隠れたんですか?ストーカーみたいに見てましたよね」
「真也…いい加減にして。本当に警察を呼ぶよ」
「分かった…ごめん」
けっ、散々モテてきて浮気して晴菜さんに振られたから付き纏うなんてロクでもない奴。
写真を撮って、SNSにこいつに要注意って拡散したいよ。また被害者が出て欲しくないし。
やっぱり、恋をするなら顔より中身だよ。私なんて中身しか自信がない。
お姉ちゃんの言う通り晴菜さんを送って正解だった。絶対こいつ、晴菜さんが1人になるチャンスを狙ってた。マジで最低だ。
また、来ないか心配だけど一応は反省してるっぽいから信じるしかない。大丈夫だよね?
「水希ちゃん、ありがとう」
「いえ、何かあったらLINEして下さい」
「うん、助かる」
はぁ、良かった。今度はちゃんと守れたからホッとした。晴菜さん、実家暮らしだから少しだけ安心かな。
さて、お姉ちゃん達と合流しなくっちゃ。買い物するって言ってたし、荷物持ちになるのは目に見えてるけどチョコレートの美味しいお店に行ける!
「あっ、晴菜さん。これ、どうぞ」
「飴玉?」
「気持ちが落ち着くかなって」
「ふふ、ありがとう」
「それじゃ」
「あれ、晴菜の新しい彼氏?」
「えっ!?違います!私は女です」
ドアが開き、晴菜さんのお母さんが出てきていきなり言われた言葉に驚く。彼氏…マジで服装に失敗したよ。
帽子を被ってマフラーも巻いてるから髪型が隠れて勘違いされたみたい。結構ショック。
「あら、ごめんね」
「いえ…それじゃ、失礼します」
「うん、菜穂ちゃんに大学の見学はいつでもいいからって伝えてね」
「はい」
お正月早々疲れたな。飴玉を舐めると糖分を摂取でき少しだけ疲れが取れる。ただな、、晴菜さんのお母さん、コソコソ話はもっと小声でして欲しい。
「あの子、晴菜の新しい年下の彼氏と思ったわ」って聞こえているから。髪、伸ばしてみようかな…似合うか自信ないけど。
あっ、芽衣からLINEが来た。へへ、何してる?だって。電話しちゃダメかな?
芽衣の声が聞きたいよ。今日含めて2日我慢すれば会えるけど、まだまだ先が長い。
私は今からお姉ちゃん達とカフェに行くよと送ると〈良いな〜〉って返事が来たから、写真を送るねと約束した。
そして少しでも、距離を近くに感じられるようにお互いの写真送り合うことになった。
やった、これで毎日芽衣の写真を眺めて幸せな気持ちに浸れる。
早速一枚撮ろうかな、この姿男の子っぽいけどひかるに好評だったし芽衣も喜んでくれるかも。うーん、角度が難しい。
「写真撮ろうか?」
「えっ?あっ!あの、その、、///」
しまった、晴菜さんの家からもっと離れて写真を撮ろうとすればよかった。もう家に入っていると思っていたら、まだ外にいたらしく一連の行動を見られた。
うわぁ///…恥ずかしいよ。いきなり道端で自撮りなんて自意識過剰にみられる。
「あの…大丈夫です」
「彼氏に写真送るの?」
「いや…その、、はい」
「だったら、可愛く撮らなきゃ」
撮ってくれるのは有難いけど緊張する。取り敢えずピースをして笑顔で写真を撮って貰った。よし、これを芽衣に送ろう。
あっ、やった。芽衣からも可愛い写真が送られてきた。可愛いー、可愛いよー。
口がタコさんになってて絶対自分の可愛さを理解してるでしょ。可愛すぎるもん。
「彼氏とラブラブなんだね」
「まぁ…」
「良いな〜、羨しい」
「晴菜さんだったらすぐに良い人が現れますよ」
「だったら良いな」
あっ、お姉ちゃんからLINEが来た。買い物が終わったよって書いてある。
よし、急いで戻らないと。甘くて美味しいチョコレートが私を待っている。
「それじゃ」
「うん、バイバイ」
4歳年上の晴菜さんは大人で、高校生と大学生は違うなと感じるぐらい差を感じた。
ふぅ、緊張した。少しだけ私の好きなアイドルに似てるだもん。ドキドキするよ。
晴菜さんか、綺麗な人だったな。
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