第176話

待って待って!あり得ないから!今日は芽衣がやっと帰ってくる日なの。何で、私はお姉ちゃんと大学見学に行かないと行けないの。

せめて明日にしてよ、ずっと指折り数えて待っていたの。早く芽衣に会いに行きたいのに問答無用にお姉ちゃんに連行された。



「芽衣…」


「芽衣ちゃん、帰ってくるの夕方でしょ」


「だから、準備していつでも会えるようにしたかったの」


「夕方には見学は終わるわよ。だから我慢しなさい」



お姉ちゃんは横暴だ。昨日から芽衣に会えるって楽しみにしていたのに、いきなり夜に部屋にやってきて明日、晴菜さんと一緒に大学見学行くわよって決定事項を言うんだもん。

酷いよ、私の予定もちゃんと聞いてから決めてほしい。一気に喜びが半減した。



「晴菜さん、こんにちわ!今日はよろしくお願いします」


「うん、よろしくね」


「ほら、水希も」


「よろしくお願いします…」


「どうしたの?水希ちゃん、浮かない顔してるね」


「いや…別に、、」


「もしかして今日デートだった?」


「違います。芽衣ちゃんが帰ってくるの夕方なので問題ありません」


「お姉ちゃん!」



ちょ、ちょっと何言ってるの!晴菜さんは彼氏と思っているから勘弁してよ。

お姉ちゃんも“しまった”って顔してるし、私の周りは理解ある人達ばかりだから有難いけど、ごんちゃんの時のように最初は受け入れられない人もいるから慎重にならないと。



「水希ちゃんの友達?」


「はい、今日は友達が帰ってくる日で」


「そうなんだ。じゃ、早く周ろうか」



うわぁ、めちゃくちゃ綺麗な大学だ。構内も広いし、高校とは大違いだ。私だったら迷子になりそうだな…広すぎて、確実に迷う。

お姉ちゃんは目をキラキラさせてる。行きたいの大学だから、熱心に晴菜さんに色んなこと聞いてるしメモまで取ってる。


大学って三が日も開いてるって凄いね。高校は部活もお休みで学校は閉じてるのに。

学生の人がまばらだけど歩いている。みんな、何しに来ているのだろう?もしかして、補習授業とかやってるのかな。



「どう、楽しめてる?」


「はい!楽しいです」


「水希ちゃんはどう?」


「三が日なのに、来てる人は補習受けているんですか?」


「違うよ、実験やあとはサークルとかかな」


「サークルか。晴菜さんは何かサークルに入っているんですか?」


「入ってたけど辞めちゃった。元彼とはサークルで出会ったから」


「あっ、すみません…」



地雷を踏んでしまった。お姉ちゃんに肘で小突かれたし、晴菜さんも苦笑いしている。

ってことはストーカー野郎も同じ大学なの?えっ、大丈夫なのかな。



「大丈夫なんですか…?」


「水希ちゃん、大丈夫だよ。大学違うし」


「えっ、でもサークルが一緒って」


「インカレだから」


「はぁ…」



インカレの意味が分かんない。インドカレーの略なのかな?インドカレーを他校の大学生と一緒に食べるサークルとか変だよね。

うー、インドカレーのことを考えているとお腹が空いてきた。流石に食堂は開いてないから残念。さっき、チラッと見たけど広くて綺麗な食堂だったな。



(ぐぅー)


「水希ちゃん、お腹空いたの?」


「少し…(恥ずかしい///)」


「水希、朝ご飯沢山食べたのに早すぎ」


「だって、動くとお腹空く」



大学の食堂は開いてないけど、晴菜さんが大学近くのファミレスに行こうって言ってくれてやったーと喜ぶ。

一度、食事をしたあともう一度大学に戻りサークルなどの部室がある棟を紹介してくれることになった。



「水希ちゃんて美味しそうに食べるね」


「水希はワンコなので」


「違う!人間だよ」


「仲が良い姉妹だね」



仲なんて良くないよ。だって小さい頃から私は下僕でお姉ちゃんは王女様だ。でも、最近では女王様に格上げした。



「水希ちゃんも東條大学受けるの?」


「私なんて無理です。勉強苦手なので」


「そう言えば言ってたね」



奇跡で入った高校の勉強はいつも私を苦しめる。試験の時、いつも芽衣に泣きついて勉強を教えてもらっているけど勉強が嫌いだから赤点さえ取らなければいい。

はぁ、、運動だけをしていたいよ。授業は仕方ないとして、試験がなくなればいいのに。



「水希、お母さんに頼んで塾に行く?」


「やだ!部活で忙しい」


「ずっと、芽衣ちゃんに頼るつもり?」


「それは…」



分かってるよ、ずっと芽衣に頼りっぱなしはダメだって。でも、勉強嫌いだし塾は絶対に行きたくない。

お姉ちゃんは今年受験だから、塾に通う予定だけど私まで巻き込まないで欲しい。



「水希ちゃん、私が家庭教師してあげようか?」


「いや…」


「私がお願いしたいです!元々塾に行く予定なので」


「いいよ。じゃ、菜穂ちゃんの家で勉強する?」


「はい!家庭教師代は母と相談していただいて、お支払いします」


「お金はいいよ。助けてもらったお礼だし」


「ダメです!こちらからお願いしてるので」



お姉ちゃん、晴菜さんが家庭教師になってくれて嬉しそう。高校の先輩にもあたるし、行きたい大学の先輩でもあるから尊敬の眼差しが凄い。



「出来れば、試験前だけでいいので水希の勉強もお願いしたいです。水希、バカなので」


「いや、私はだい、、」


「いいよ。水希ちゃんもよろしくね」



酷いよ、何で勝手に決めるの!それもバカって、勉強は苦手だけどお姉ちゃんと同じ高校に通っているから少しは勉強できるもん。

でも、試験のたびに芽衣に頼るのは悩む。情けない姿ばかり見せたくないし。


早速、家に帰ったあとお姉ちゃんはお母さんに家庭教師の相談をしている。行きたい大学の先輩だと話すとお母さんは塾代を回すからいいよってOKが出た。

そして、私も試験前だけ家庭教師してもらう事になり、項垂れる。勉強嫌い…。

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