第173話

うーん、私用の飲み物は何がいいかな?寒たいから、やっぱり温かい飲み物がいいよね。

私もお姉ちゃんと一緒でお茶にしよう。



「よし、買えた」


「あっ、お茶が売り切れ…」



うん?後ろで並んでいた女の人が残念そうな顔をする。人が多いから買う人も多く、私の番でお茶が売り切れになった。

うーん、お茶が絶対に飲みたいわけじゃないし、お姉ちゃんの分は買えてるからいいか。



「これ、どうぞ」


「えっ、でも悪いから…」


「いえ、どうぞ」


「あっ、じゃお金」


「ありがとうございます」



よし、私の分のミルクティーも買えた。早く、2人の元に戻らないと冷めてしまうと苦情を言われたしまう。

ふぅ、今日は寒いな。雪は降ってないけど手が悴んで指が痛い。芽衣は私がプレゼントした手袋をつけてくれてるかな。



「はーい、買ってきたよ」


「水希、ありがとう〜」


「ありがとう、どこで飲もうか?」


「お姉ちゃん、自販機の近くは人が少なかったよ」


「じゃ、そこに行きましょ」



冷たい指を温かいミルクティーで暖め歩いていると、さっきお茶を渡した女の人がいた。私と目が合うと会釈をされ、私も会釈をする。うぉ、、お姉ちゃんが勢いよく振り返り睨まれた。怖い…絶対、勘違いしてる。



「芽衣ちゃんに言いつけるからね」


「お姉ちゃん、違うー、、」


「さっきの人、可愛かったわね。流石、目をつけるのが早いわ」


「恭子先輩も…勘弁してください」



はぁ、、お正月早々変な疑いばかりもたれ、ため息吐きたくなる。甘いミルクティーが私に癒しを与えてくれて体に染みるよ。

神社の大きい木はもたれ掛かるのに丁度いい。木に背中を預けながらミルクティーを飲んでいるとグエっと吐き出しそうになった。


ドンっと私より少しだけ小さな恭子先輩が寄っかかってくる。私を木の代わりにしてるよね…いくら服を汚したくないからって酷い!あっ、お姉ちゃんも私を木の代わりにする。2人して私に寄りかかり、このままじゃ私は木と一体化しそうだ。



「お姉ちゃん、恭子先輩、私は木じゃない!」


「服が汚れるからいいの。水希はパーカーだしいいでしょ」


「お姉ちゃん、酷っ!」



あっ、笑われた。恥ずかしいよ…さっきの人がチラチラと見てクスクスと笑っている。

早く、この場から離れたいけど身動きが取れない。くそ…私を何だと思っているんだ。後輩をもっと可愛がってくれてもいいのに。



「あっ、先輩。お久しぶりです」


「ひかるちゃん、久しぶり〜」


「ひかる、私もいるよー」


「えっ、水希?ふふ、何やってるの?」



ひかると会えたことで、やっと木の役目を終えた。くそ、背中が痛いし、、ってか背中汚れてないかな?ほぼ、磔の刑だったよ。



「ひかる、背中汚れてない?」


「うーん、大丈夫だよ」


「良かった。ひかるは家族とお参り?」


「うん」


「今日の服、可愛いね。ひかるに似合ってる」


「ありがとう///」



久しぶりに会えたひかるはお洒落な服を着ていて可愛い。ザ・女の子でパーカーにズボン・キャップの私とは大違いだ。

ちゃんとした服を着ればよかった…下僕心で来たのが間違いだった。



「じゃ、失礼します」


「ひかる、今度遊ぼうね」


「うん」



恭子先輩がなぜか私をガン見をし「これか」とボソッと呟き、ため息を吐かれた。

お姉ちゃんもため息を吐きながら呆れていて、意味が分からない。ひかるに遊ぼうって言ったのがダメだったの?



「水希って、何て言ったらいいのかな…」


「恭子、これが天然のどタラシよ」


「そうね、それしか思いつかない」


「何で!」



2人して呆れないでよ。私、何もしてないじゃん。あっ、、またさっきの人に笑われた。

目が合うと申し訳なさそうに逸された。

誰かと待ち合わせしているのかな?さっきから携帯をチラチラと見ている。



「痛っ!」


「水希、見過ぎ!」



お姉ちゃん、叩かなくてもいいじゃん、、だって、女の人がずっと1人だと気になる。

もし、デートだったらどんなイケメンが来るか気になって野次馬心が疼く。

けど、結果を見れず移動することになった。待ちに待ったクレープのためだ。



「水希って子供みたいに喜んでクレープを美味しそうに食べるよね」


「そうですか?でも、恭子先輩に奢って貰ったクレープ美味しいです!」


「水希にお菓子で餌付けしたくなるのちょっと分かるかも」


「失礼な、、恭子先輩は私を何だと思ってるんですか」



恭子先輩に頭をよしよしされ「ほら、食べる〜」ってからかわれたから思いっきり大口で食べてやった。

うむ、苺カスタードクレープが美味しい。ただ「バカー」って叩かれ腕が痛い。


うん?あっ、あの女の人が男の人と歩いている。やっぱりデートなんだ。相手、イケメンだけど遅刻は厳禁だぞ。

私はお姉ちゃんに彼女を待たせるやつにロクな奴はいないと何度も教えられた。



「うぉ」


「水希、どうしたの?」


「お姉ちゃん、ほら、さっきの女の人、、」



遅刻が原因か分からないけど、男の人が頬を叩かれた。女の人が怒り、言い合いになってるし喧嘩でもしているのかも。

喧嘩をしている姿を見るとさわちんと未来ちゃんを思い出す。もう、仲直りをしたとは思うけどもう巻き込まれたくない。


他人の喧嘩に巻き込まれるって理不尽なこと多いよね。私は関係ないのに罵倒され、喧嘩したのは私のせいだと言われた。

プンプンだよ、さわちんが勝手に狼になり襲ったからじゃん。私だって早く狼になりたいのに…芽衣が恋しすぎる。


うん?あれ、、は大丈夫なの?男の人がかなり激怒してる。声がこっちまで聞こえてくるし、原因は男の人の女癖みたいだ。

女癖が酷い男の人は最低だよ。私が一番嫌いなタイプ。あの人みたいな人をタラシって言うんだよ。私は一途だし、マジであんな人と一緒にして欲しくない。


あっ!男の人が女の人の腕を掴んで無理やり歩こうとしている。最低だぞ!嫌がってる女性にそんなことするなんて。

あっ、女の人と目があった。これは、、助けた方がいいよね。だって、目が助けてと訴えていた。



「うぇ、えっ?お姉ちゃん!待って!」



ちょっと走るの早いから待って。急に走り出しお姉ちゃんは女の人の近くまで行くと、携帯を取り出し何処かに電話をしている。

驚いていた男の人が慌てて手を離し、何処かに行ってしまった。一体…何をしたの?聞くのが怖いんだけど。



「ありがとう…」


「いえいえ」


「あの、大丈夫ですか?」


「うん、、ごめんね。お茶も貰って、助けてもらってばかりだね」



良かった〜ってホッとしたけど、クレープが、、クレープが!!!走る時に手に力が入ったみたいで大事なクレープを握りつぶし手の上に苺と生クリームが飛び出してる。

大事に食べてたのに…ショックだ。お姉ちゃんと恭子先輩はちゃっかり全部食べきってるし私だけ被害をくらった。

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