第111話

頭が痛い…修学旅行前に頑張って中間試験をクリアしたのに、今度は私の誕生日前に期末試験が来る。テストなんて大嫌いだー!

ギリギリで入った高校の勉強は難しすぎる。試験もいつも難しく芽衣に勉強を教えてもらい何とか乗り越えているけど、毎回心がげっそりする。



「もう、やりたくないー!」


「水希、ダメだよ。赤点取っちゃうよ」


「それは嫌だ…芽衣、、助けて」



図書室で芽衣とごんちゃんと3人で勉強している。家だと、つい芽衣とイチャイチャしてしまうから勉強する日は図書室で勉強すると決めた。部活が休みの中、勉強ばかりで嫌気がさすけど頑張るしかない。


数字が記号に見えてくる。この世に何で数学なんてあるの?覚えて意味があるのかといつも疑問に思う。屁理屈だけど仕方ない。

走りたい、、せめて部活があったらまだ気分転換が出来るのに。



「ジュース買ってくる…」


「水希。私は炭酸!」


「じゃ、1000円」


「何でよ!」


「冗談だよ、ごんちゃんはコーラでいいの?」


「うん」



私は何を買おうかな、、スッキリする飲み物がいいから炭酸かポカリ系か、うーん悩む。



「芽衣は何、飲みたい?」


「私も一緒に行くよ」


「えー、私が寂しい〜」


「芽衣、1人で大丈夫だよ」



ここから自販機は少し遠いし、気分転換する為に歩きたいから芽衣を付き合わせるのは申し訳ない。あっ、廊下の窓から風が吹いてきた。気持ちが少しだけスッキリする。

秋っていいな。暑くもなく、寒くもなく、運動しやすいし何より夕焼けが綺麗だ。これで試験さえなかったら幸せなのに。



「えい」


「あっ…」


「ひかる、ごめん。お金渡すから許して」


「水希、ビックリしたよ」



自販機の場所に着くとひかるが飲み物を選んでいて、偶然会えたことが嬉しくてちょっかいを出してしまった。

久しぶりのひかるとの会話。噂のせいでひかるに避けられて以来、クラスも違うから話せなくて…話せたことが嬉しすぎる。

噂がどこまで落ち着いたかは分からないけど、もう解禁してもいいと思うんだ。そろそろ、ひかると話せないのは寂しいよ。



「元気にしてる?」


「うん」


「やっと、ひかると話せて嬉しい」


「ごめんね…どうしたらいいのか分からなくて」


「芽衣に気を遣ってくれたんでしょ」



噂が大きくなればなるほど、芽衣も落ち込んでいた。恋人が他の人と噂になるのは私だって嫌だから気持ちが凄く分かり、申し訳なくて…芽衣は反省もしていたけど。

首のキスマークのせいで〈やっぱり!〉って空気感になったから。



「水希、試験が終わったら早めの誕生日ケーキを作って渡すね」


「当日にくれないの?」


「また、誤解されちゃうから」


「そっか…分かった。楽しみにしてる」



ひかるの作ってくれるお菓子はめちゃくちゃ美味しい。芽衣の作ってくれるお菓子も美味しけどね。あと、マドレーヌの、、遠藤さんのお菓子も。

前はよく、ひかるからクッキーとか貰っていて…芽衣と付き合いだして貰うことが減ったから、ガトーショコラを楽しみにしていた。



「ひかる、部活が始まったら避けるの禁止ね」


「うん…分かってる」


「寂しいよ」


「ごめんね…」



今日、話せて良かった。もし、隣にごんちゃんや芽衣がいたら話せてなかった。多分、ひかるは気を使って隠れたり、私も2人がいたら話せなかったかもしれない。

やっと、ひかると笑い合い…つい長話をしてしまう。ずっと話せなかった分を取り戻すように。



「ガトーショコラ、水希の家に持って行くね」


「私がひかるの家に行くよ」


「いいの?」


「ひかるの家、行ったことないしトイプードル触りたい」


「ミルクに?」


「ミルクって名前なんだ」


「うん、白いからミルク」



ひかるにしては結構安易な感じで名前を付けたんだなって笑ってしまう。

ひかるが私の笑った意味に気づいて「中学生の時に名前を決めたから、仕方ないの!」って恥ずかしそうにしてる。


純粋さを感じるね。白いからミルクで、携帯で小さい頃のミルクを見せて貰うとクリクリとした目の可愛いトイプードルだ。

私も犬が好きだから羨ましい。私の家は親が許してくれなかった。



「あっ、そろそろ戻らなきゃ」


「あっ、私も爽子を教室で待たせてる」


「ひかる。試験、お互い頑張ろうね」


「うん」


「おーい、水希!ここにいたんだ」


「ごんちゃん」



私があまりに帰ってこないから、ごんちゃんが探しに来てくれた。そんな、ごんちゃんは私とひかるを見ると少しだけニヤけた顔になり、何となく考えていることが分かった。


ごんちゃんの詮索にひかるを巻き込みたくなくて、ごんちゃんを連れて図書室に戻る。

ひかるに別れ際に手を振ると笑顔で手を振り返してくれた。やっぱり、嬉しい。やっと、ひかるとの距離がまた縮まった。



「竹本さんって可愛いよね〜」


「うん」


「水希の周りって可愛い人、多いよね」


「確かに…」



芽衣、ひかる、お姉ちゃん、恭子先輩、マ…遠藤さんと可愛い子が多い。

そんな中、私だけが普通で(一応、さわちんとごんちゃんは抜かす)神様は不公平だと思う。同じ人間なのに、何でこうも違うかな。



「何、ニヤニヤして…」


「竹本さんとお似合いだなって」


「そんな訳ないでしょ」


「側から見たらカップルだったよ」


「それはごんちゃんが色眼鏡で見てるからだよ」



仲の良さだったら芽衣との方が仲が良いし(恋人だから当たり前だけど)でも、芽衣と噂にならないのは入学当初からずっと一緒にいるからかもしれない。

人間はドラマチックさを求める。私がマネージャーのひかるをお姫様抱っこをした事で、ドラマ感が出たんだ。実はあの2人的な…


平凡な私と可愛いひかる。まるで、美女と野獣だ。いや…それは流石に言い過ぎか。

あっ!電車、、いや違う。私は男でもないし、オタクでもない。

とにかく対比が面白くて楽しんでいるだけなんだろう。ドラマチックな展開に進めばいいのにと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る