第109話
はぁ、はぁ、久しぶりに走ると楽しくて、季節も秋だし風が気持ちいい。
やっとウォーミングアップできた。上を見上げると空が澄み渡っていて、あと2ヶ月後で1年が終わるのかと感慨深くなる。
早いな。中学生の時は1日が長く感じていたのに、高校生になって芽衣と出会って1日が短い。もっと話していたい、触れていたいのにあっという間に時間が過ぎていく。
恋って凄い、こんなにも夢中にさせるから毎日が楽しくてしかたない。
久しぶりに走って疲れた。一度、水分補給をしよう。汗も拭きたいし…って絆創膏!が取れてる。
いつのまに取れたの。気づかなかった。急いで付けなきゃ、、えっと…絆創膏はどこ!
「水希、怪我したの?」
「いや、、絆創膏を探してて」
「えっとね、ここにあるよ」
「ひかる、ありがとうー」
「私が首に貼ってあげようか?」
「えっ…うん、、ありがとう」
ひかるに絆創膏をどこに貼るか気づかれていた…恥ずかしい。ってことは、もうキスマークを見ちゃってるし気づいている?
意外にも部員は絆創膏のことを誰も何も言ってこなくてホッとしていたけどやっぱり気づいているよね(恭子先輩も何も言ってこないから驚いた)
「芽衣ちゃん、積極的だね」
「これは…」
「ふふ、意地悪してみた」
「えっ?どう言うこと」
「ピンクの柄物の絆創膏を貼っちゃった」
「ひかるー、、目立つじゃん」
いや、既に目立ってるけどピンクの柄物の絆創膏なんて更に目立つ。まさか、ひかるに遊ばれるなんて思わなかった。
「みんな…気づいてるよね」
「うん。でも、ここまで堂々とした位置だとどっちだろう?とも思う。本当に怪我かもって」
「そうなの?」
「こんなにハッキリ見える位置に付ける人いないと思うから」
「だよね…」
だから、みんな何も言ってこないのかな。どっちだろうと悩み、揶揄っていいのか本当に怪我をしているのか分かりづらいから。
こっちとしては嬉しいけど、ひかるにはバレてしまった(遊ばれたし…)
「あれ?ひかる、指どうしたの?」
「あっ、昨日怪我しちゃって。私も絆創膏を貼り替えにきたの」
「私が貼ってあげるよ」
これでさっきのお返しができる。私の首に貼ってあるピンクの柄物の絆創膏と同じ物をひかるの指に貼った。
これ、めちゃくちゃ目立つやつだ!ひかるめ、よくもこれを貼ったな。
「お揃いにしてみた」
「あー、水希に仕返しされちゃった」
こんな風に揶揄うと言うか、接してくれると嬉しい。腫れ物扱いやコソコソと噂されるよりハッキリ言ってくれて、互いに笑い合えたら心が軽くなる。
ひかるは本当に良い子だ。何で私なんかをってずっと思っていたぐらいだし。
「あっ、遠藤さんだ」
「遠藤さん?」
「ほら、調理室にい、、る」
「知り合いなの?」
「うん」
遠藤さんがこっちを見ていたから、手を振ろうとしたら後ろを向かれてしまった。いつもタイミングが悪い。
ずっと心の中でマドレーヌの子と呼び、やっと名前が分かったのにあんまり接点がないから話す機会がない。
「水希、浮気しちゃダメだよ」
「浮気!?しないよ!」
「水希って無自覚な所あるから、芽衣ちゃん大変そうだよ」
「無自覚って…別に普通だもん」
「水希の優しさは勘違いしそうになる」
難しいよ、人に優しくしたら勘違いされるの?普通のことをしてるだけなのに、勘違いしそうな優しさって何だろう。私には違いが分からない。
「分からないよー」
「芽衣ちゃんへの優しさを他の人にしちゃダメ」
「もっと、分からない」
「もし、芽衣ちゃんが爽子に甘えてたらどうする?」
「嫌!ダメ!すぐに引き離す」
「ほら、それと一緒だよ」
ひかるの言っていることがやっと分かった。もし、芽衣が私に甘えるように他の人に甘えていたら嫉妬してヤキモチを焼いてしまう。
でも、、それでも難しい。優しくしてはいけない訳ではないけど、加減とかが分からないし…全ての行動に戸惑ってしまう。
「水希。だから、芽衣ちゃんに対して今まで以上に優しくしてあげたらいいんだよ」
「それなら出来る!」
「良かった」
ひかるはいつも私を助け、考え方が大人で子供っぽい私を嗜めてくれる。もうすぐ同い年になるけど、ひかるの方がお姉さんだ。見た目もどんどん大人っぽくなってるし。
私も頑張らないと。いつまでも子供のままは嫌だし、見た目も大人っぽくなりたい。髪を伸ばしたら少しは変わるかな。
でも、結んだりするの面倒くさい…今の長さのボブぐらいが丁度いい(女子力皆無!)
「そろそろ、戻ろうか」
「うん。ひかる、ありがとう」
「あっ、あの子が遠藤さん?」
「えっ?あっ、そうだよ」
今度は何とか目が合った遠藤さんを見たひかるが苦笑いしながら「芽衣ちゃん、大変だな…」って言う。
何で芽衣が大変なのか分からず頭に?マークを浮かべるとひかるに頬をつねられた。
「えっ、痛い」
「芽衣ちゃんの代わり」
「何でー」
ひかるに頬をつねられる日が来るなんて思わなかった。最近、ひかるとの仲が良い意味で距離が近い(友達としてだよ)
最初は大人しい子だなって思っていたからこそ、この砕けた関係が嬉しかったりする。
ひかると笑い合いながらチラッと校舎の方を見ると、また遠藤さんと目が合いなぜか悲しそうな顔をされた。
私は能天気だから、ひかるとの噂を完璧に忘れていた。首の絆創膏のせいで私とひかるの噂がどんどん大きくなっていく。
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