第83話
体育館に人が沢山いる。もうすぐ演劇部の劇が始まるからだけど、みんなパンフレットを持ちながら今か今かと待っている。
壇上の近くにお姉ちゃんがいた。先生と放送部と打ち合わせしてるみたいだ。
「ここで、水希が歌うのかー」
「芽衣…プレッシャーかけないで」
「あっ、ごめん」
私には裏方が性に合っている。表に出て何かするのは苦手で目立つことが嫌いだし、お姉ちゃんみたいに人前で堂々と話せない。
でも、今回は少しだけ話さないといけないから辛くて、トークは軽音部の先輩がしてくれるけど挨拶のとき喋る予定になっている。
「お姉ちゃん、何か手伝うことある?」
「水希、来たんだ」
「一応、生徒会だし」
「もう演劇部の準備は終わってるし、アナウンスだけだから大丈夫よ」
私がやれることはないのか。じゃ、どうしよう。このまま演劇部の劇を見てもいいけど、芽衣と他を回ってみたいし今だったら家庭部のお菓子が食べれるかもしれない。
「芽衣、色々見てみようか」
「うん」
「行きたいところある?」
「あっ、茶道部で抹茶が飲めるらしいよ」
「じゃ、茶道部に行こう」
私の学校って少しお嬢様学校的なところがあり女子校ならではの部活があったりする。
園芸部に家庭部、箏曲部でしょ…あとは華道部で女子校!って感じするよね。
私の性格上、文化部は性に合わない。常に体を動かしたいタイプだし、黙々と何かをするのが苦手だ。
「あっ、まだ家庭部でクッキー配ってる!芽衣、行っていい?」
「ふふ、いいよ」
「やったー、朝ご飯食べてないから少しだけ甘い物が食べたかったの」
朝が早い+流石に食欲がなく食べてこなかったけど甘い匂いを嗅ぐとお腹が反応する。
少しだけもエネルギーを取らないと。壇上でお腹が鳴るのは嫌だし、クッキーの美味しそうな匂いが堪らない。
「やった、クッキーゲット!」
「良かったね。水希、向こうで食べる?」
「うん」
「あ、、あの…」
「えっ?」
私と同じ一年生の子に急に声を掛けられたと思ったら「ここで待ってて下さい!」って言いながら調理室に入っていった。
あの子、誰だろう。他のクラスの子は全然顔が分からない。さわちん・ひかると同じクラスの子かも、時々話に行くし。
「すみません…これもどうぞ」
「いいの?ありがとう〜」
得しちゃった。貰ったお菓子はチョコ味のマドレーヌで、美味しそうで涎が出る。
「水希…行こう」
「うん」
あれ、茶道部に行く予定なのに芽衣に腕を掴まれ歩いていると、部室の方に向かっていることに気がついた。
私は芽衣に着いていくような形で陸上部の部室まで来て、芽衣がドアの鍵を閉める。
「芽衣?どうしたの…」
「甘えたくなった…」
芽衣に甘えたくなったと言われ、嬉しくなりギュッと抱きしめる。私も芽衣からエネルギーを貰いたかったし抱きしめると安心する。
芽衣といると幸せで私の活力になり、大変なことでも頑張れる。
準備もあるからあんまりゆっくりは出来ないけど、こうやって芽衣と2人で過ごせて良かった。甘えられると嬉しい。
付き合ってると実感できて、こんなに可愛い人が私の恋人なんだって幸せものだよ。
「芽衣、頑張るね」
「うん」
「明日、いっぱいご褒美頂戴ね」
「バカ///」
「そろそろ行こうか」
「うん」
クッキーを食べたいし、抹茶も飲みたい。マドレーヌは演奏が終わってから芽衣と一緒に食べよう。食べすぎると緊張で吐きそうになってしまうし。
芽衣と一緒にいると時間はあっという間に過ぎていく。24時間、一緒にいれたらいいのに、芽衣と離れたくないよ。
「あっ、芽衣」
「何?」
「(チュッ)エネルギー、貰うね」
「バカ///」
もう少しで本番だ。ここまで来たらやるしかない。芽衣からエネルギーのチャージをしたし、カッコいいところを見せないと。
「水希」
「うん?」
「もっとエネルギーあげる」
「・・・」
これは…ちょっとエネルギーを貰いすぎ。満タンを通り越して今にも爆発しそうだ。
でも、エネルギー貰えるのは嬉しいし…もう本番間近までここにいて、ずっとエネルギーを蓄えた方がいいかも。
芽衣の唇が私の唇を離してくれない。磁石のように強力な力で引っ張られる。
芽衣の瞳が濡れてて、少しだけいやらしさを感じさせる。先に16歳になった恋人は私より大人だ。私をこんなにも虜にさせる。
「早く、芽衣の全てが欲しい」
「・・・あげる、、全てあげるよ」
「今日の歌、芽衣を思いながら歌うね」
「ラブレター的な?」
「私からの愛の告白」
「水希がキザになった」
「似合わないね」
「でも、嬉しい」
人は恋をすると成長し変わっていく。芽衣を守れるように、ちゃんと大人になりたい。じゃないとバチが当たるよ。
特にお姉ちゃんからの罰が一番怖い。閻魔様の如く喝が降り、頭に大きいたんこぶができてしまう。
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