第50話

「私、帰るね」


「芽衣、待って」


「最近、水希の考えてることが分からないよ」


「ごめん…私もどうしたらいいのか分からなくて」


「悩みでもあるの?」



芽衣に対しての感情を話せたらどれだけ楽になるかな。でも、自分でもこの気持ちがよく分からないんだ。

芽衣を意識してしまう、芽衣を抱きしめたくなる。この感情は何なの?


友達の枠を超えた様な感情が芽生えて戸惑っている。私は芽衣を友達としてではなく違う感情で好きなのかな?

もしそうだったら嫌だな、芽衣と距離を取らなくてはいけなくなる。


芽衣と距離を置きたくない。だったら、こんな感情なんて捨てる。封印してしまえば、そのうち風化し芽衣の側にずっと入れる。

それに、恋をしたことないから勘違いしてるだけかもしれない。恋に憧れ、意味のないドキドキを恋と勘違いする。平凡な私らしい。



「水希…話したくない?」


「ごめん、今は頭を整理したい」


「分かった。帰ろう…」


「うん、明日は海に行く日だから早く帰らないとね」



明日は何時起きだっけ。お姉ちゃんは6時には起きるって言ってたかな。帰ったら急いで明日の準備して、お風呂に入ろう。

頭をスッキリさせたいし、今日は早く寝たい。起きていると、芽衣のことばかり考えてしまう。芽衣のことを考えると疲れて、現実逃避したくなる。


頭が痛いよ。勉強の時より頭が痛すぎる。でも、勉強にはちゃんと答えがある。

でも、芽衣のことは正解が分からないから考えても考えても答えに辿りつかない。

明日、さわちんと会うし…また追求されるかも。嫌だな、追求されても、答えられないから勘弁してほしい。


芽衣に何でキスしたのか、、私がしたかったからだ。風邪を私に移してほしかった。

こんな風に答えてたらさわちんは納得した?きっと、しないよね。キスで風邪を移そうなんて馬鹿だ。子供の発想だよ。

それに言えるはずない。言いたくもないし、言ったらさわちんに冷めた目で見られる。



「水希、手を繋ぎたい」


「いいよ」



もし、私と芽衣が手を繋いでいる姿をさわちんが見たらどんな風に見えるの?付き合ってるように見えるのかな?それとも、ちゃんと友達関係に見える?

学校の生徒からはどんな風に映っているのかな?私達のやっているスキンシップは友達の枠を超えて見えるの?


無邪気にジャレあっていた行為は人によっては違う光景に見えるかもしれない。

だから、お姉ちゃんもさわちんも芽衣と私が付き合ってると勘違いをした。芽衣に対する接し方が分からなくなる。芽衣に迷惑をかけたくない。


もし、他の生徒が私と芽衣の関係をそんな風に見ていたら私は…。やっば、涙が出そう。

また、芽衣に心配をさせてしまう。早く、バスに乗って家に帰らないと。

夏の空って雲が少なく青空が広がって綺麗だ。気温は相変わらず蒸し蒸しするけど空を見るのは好きだ。こんな風に好きって簡単に言えるっていいな。


暑いから涙がすぐに乾きそう。出来れば、早く乾いてほしい。首が痛くなってきた。

空は綺麗だけど、ずっと空ばかり見るなんて芽衣に変な人って思われそうだし。

さっきから手を繋いでいる力が強いし、馬鹿力にも程があるよ。見た目とのギャップがあるから芽衣は面白い。



「芽衣、今日は歩いて帰るよ」


「えっ」


「怪我して以来運動不足だから、トレーニングを兼ねて歩くよ」


「・・・分かった」



この暑さでも涙が乾いてくれなかった。太陽、もっと頑張ってよ。きっと明日までには涙は乾いているはずだ、じゃないと困るし。

家に帰ったらまずは顔を洗って、シャワーを浴びて、明日の準備してご飯てべて寝よう。


うん、完璧だ。私にしてはちゃんと計画ができている。1人で歩いているとバスが横を通っていく。芽衣が乗っているバスだよね。

あっ、芽衣と目が合った。芽衣の目が不安と悲しみに包まれている気がする。


昔はいつも楽しそうな顔をし、目がキラキラしていた。芽衣の笑った顔が好きで、、好きなのにな。最近見れてないや。全て私が悪いから自業自得だよ。



「水希!」


「えっ、芽衣?」


「私も一緒に歩いて帰る」


「わざわざバス降りたの?」


「一緒に帰りたかったから」


「馬鹿だな、部活で疲れてるでしょ」


「いいの」



芽衣はずるい。私の心をガッチリ掴んで離してくれない。こんなことされたら嬉しくて…抱きしめたいけどここは我慢だ。

また芽衣と手を繋ぎ、今を楽しもう。芽衣との時間を大事にしたいし、周りを気にしていたら芽衣と手を繋げなくなる。



「芽衣、明日の水着どんなの着るの?」


「ビキニ…」


「おぉ…そうなんだ」


「水希は?」


「私はタンキニタイプの水着」


「水希に似合いそう」


「褒めてないからね」



私のお胸は寂しいから大きい布で隠す水着って決めていた。それにTシャツ着る予定だし。

お胸の大きい芽衣やお姉ちゃん達と一緒にいると絶対比較されるの分かってるし、惨めになるの目に見えてる。


明日はいっぱい楽しめたらそれでいい。よくよく考えたら恭子先輩やお姉ちゃんと海に行けるのは今年で最後だし。来年は受験生になる2人とはなかなか遊べなくなる。

だから恭子先輩とお姉ちゃんは海に一緒に行くって言ったのかも。2人とも何気に優しいし、ヘッドロックをかけるところを除けば。

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