第35話

ずるいな…先手を打たれちゃった。芽衣に手を握られ身動きが取れなくなってしまった。2人で空を見上げ、私達は初めて指を絡めた。

いつもの手の繋ぎ方じゃなくて恋人繋ぎ。お姉ちゃんでさえ、彼氏と普通の繋ぎ方だったのに私達は恋人繋ぎをしている。


指と指が重なると、手の感触が普通の繋ぎ方より倍以上に感じる。照れ臭いね、、私達は友達なのに。

芽衣とのキスはどんな感触なんだろう、芽衣とのエッチはどんな感じなんだろうって、そんないやらしい考えが過ぎる私は芽衣と友達でいいの?

自制心はどこまで持つのかな?いつか、芽衣に無理やりキスをしてしまいそうで怖い。


私は芽衣のことをどう思っているのだろう。この気持ちは芽衣を男の子に取られたくないっていう独占欲なのかな?

うーん、分かんないや。深く考えることは私には性に合わない。いつも、まっいっか精神になっちゃうし考えたくなかった。



「水希、来年もお祭り行こうね」


「うん」


「再来年もだよ」


「いいよ」



予定は未定と一緒だ。未来の予定が埋まるとワクワクしていたのに、今はそんな考えにならなかった。

私の誕生日は芽衣に祝って貰えるのかなと不安になり、もしかしたら1人で祝う誕生日になるかもしれない。

未来が怖い、私達はどれだけ一緒にいられるのか分からないから不安になる。


さっきまで甘いチョコバナナやりんご飴を食べていたのに、口の中がほろ苦いブラックコーヒーを飲んだ感覚になる。

とっびきりの甘さが欲しい。甘党の私は糖分に飢えていた。どうやったら、満足できる甘さを味わえるのだろう。


前、夢で感じたミルマロみたいな甘さを欲してるかもしれない。最高の甘さだった。

また、味わいたい。何度寝たらあの夢を見れるかな、感じられるかな。

芽衣と一緒に寝たら甘くて幸せな夢を見れるのかなとか流石に苦笑いしちゃうよ。



「芽衣、たこ焼き食べよう」


「うん」


「イカ焼きも食べたいな〜」


「半分こしよう」



お腹が空くと思考はちゃんと回らなくなる。成長期なのか、いつもお腹が空く。だから、変な考えばかりしてしまう。

もう身長はいらないから、お胸だけ成長させて欲しい。芽衣は小さいのに、お胸は私の身長みたいに大きいからね!


たこ焼きとイカ焼きを食べたら、またチョコバナナを食べよう。お腹を満たし、糖分をしっかり取ろう。

我慢するのはよくないからダイエットはしばらくお預けだ。いっぱい食べて、いっぱい動く。頭が回れば変なことを考えずに済む。







私は竹本さんとLINEを交換して以来、どんどん仲が縮まっている。LINEで会話するようになり、夏休み中なのに竹本さんは部活を見に来てくれた。

木陰で体育座りをし、陸上部の見学をしている。手を振ると嬉しそうに手を振り返してくれて、なんか照れ臭い。

竹本さんは本当に私のファンなのかなって思うようになってきた。



「水希、あの子と知り合いなの?」


「お姉ちゃん、ビックリしたじゃん。友達だけど…何で?」


「部活は何かやってる?」


「帰宅部だよ」


「帰宅部…」



凄く嫌な予感がする。何かを考え込んで、お姉ちゃんがスタスタと竹本さんの元へ歩き出した。急に話しかけられた竹本さんは困った顔をしながらうなづいている。

これは助けに行った方がいいと思い走った。お姉ちゃんは強引な所あるし、無理難題を押し付けてる可能性がある。



「お姉ちゃん、竹本さんを困らせたらダメだよ」


「何で、困らせる前提なのよ」


「だって、竹本さん困った顔してたもん」


「私はマネージャーのスカウトしてたの」


「マネージャー?」


「芽衣ちゃん1人だと大変だし、もう1人マネージャーがいた方がいいでしょ」



確かにマネージャーが1人しかいないから、竹本さんがマネージャーになってくれたら芽衣が楽になる。それでも唐突すぎる。

今日初めて会った子にマネージャーの勧誘なんて竹本さんは驚くよ。

それにお姉ちゃん、生徒会長ってこと忘れてない?威圧感あるからね!



「あの…私でよければ」


「やった!マネージャーゲット!」


「えっ、竹本さんいいの?」


「運動は苦手だけど、お手伝いだったら出来ると思うから」



返事がまさかのOKで、お姉ちゃんはルンルン気分でグラウンドに戻って行く。

やっぱり、お姉ちゃんの魔の手からは誰も逃げられないのかもしれない。私も芽衣も捕まり、また被害者が増えた。

マネージャーが増えるのは有難いけど、本当にいいのかなと無理やりマネージャーにさせられてないかなと不安になる。



「竹本さん、無理しなくてもいいからね」


「無理してないよ。高瀬さんのお手伝いできるの嬉しいから」


「ありがとう。そうだ、せっかくだから名前の呼び方変えない?」


「名前?」


「さわちんがひかるって呼んでいるから、私もひかるって呼んでいい?」


「うん///」


「私のことは水希って呼んでね」


「分かった///」



これでまたひかるとの仲が縮まった。ひかるは大人しい子で、お菓子作りが上手な可愛い子だ。それに、たぶんだよ…たぶん。私のファンかもしれない。

変な感じがするけど、応援してくれるのは嬉しいから期待に応えたい。


芽衣もひかると仲良くなれるといいな。そしたら、4人で遊びに行ける。

せっかくの夏休みが部活だけでは終わりたくない。みんなで楽しい高校1年生の思い出を作りたいと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る