第27話

明日から夏休み。夏休みなのに終業式が終わったあと生徒会室で私は黙々と掃除をしている。これは、自分で課した修行だ。

私は自ら生徒会室の大掃除に立候補し、入念に掃除をしている。これで、頭の中がスッキリするはずだ。雑念、煩悩108個、モヤモヤよ、消え去るのだ!


部活もあれば良かったのに。明日から部活があるけど、出来れば今日もしたかった。

体を動かすと一つのことに集中できる。あの日見た夢が頭から離れず、私をずっと悩ます。

くそー、この忌々しい煩悩め!いくら恋がしたい、彼氏が欲しいからって芽衣をあんな夢に出さないでほしい。芽衣が可哀想だよ。友達に…あんな夢を見られて絶対嫌な気持ちになるよ。



(コンコン)


「はーい」


「あの…あっ、水希1人?」


「そうだよ」


「生徒会の仕事は終わったの?」


「終わって、掃除してる」


「手伝おうか?」


「いいよ、これは修行、、もうすぐ終わるし」


「じゃ、ここで待ってていい?」



芽衣がいると掃除に集中できない。私の意志の弱さに軟弱さにビックリする。

修行の成果が全くなくて、これじゃただ掃除をしているだけだ。



「先に帰って良かったのに」


「一緒に帰りたかったの」


「芽衣は優しいね」


「そんなんじゃないよ」



こんな優しい友達を変な夢に出演させて申し訳ない。恋に飢え、恋に憧れて、恋に欲求不満になり私は最低の人間だ。

まだまだ修行が足りないし、旅に出たくて仕方ないけどお金がない。

芽衣の首にあるネックレス、制服の上着からチラリと見えて心がモゾモゾする。


私がプレゼントしたネックレス付けてくれて嬉しくもあり、恥ずかしくもある。

昨日、ネックレスをプレゼントに贈る行為は2人の絆を深めたい・永遠に繋がっていたいの意味があるらしく友達に贈るプレゼントではないと分かり発狂しそうになった。

やっぱりそうだよね!って恋人同士で贈り合う物だよね!ってベッドの上で暴れた。



「何?じっと見て」


「何でもないよ」


「水希、少し髪伸びたね」


「うん、今度切りに行く」


「私もボブぐらいの長さにしようかな」


「今ぐらいが私は好きだよ」


「そっか。じゃ、この長さを保つ」



芽衣は髪が短くても似合うと思うけど、私があんまり髪を伸ばせないぶん芽衣に似合う髪の長さの理想像を押し付けてしまった。

私は高校生になって髪をボブにした。少しでも女子力があがるようにって。

別に陸上部のメンバーでも髪が長い人は多いけど、私は髪が軽い方が走りやすいから短くしてる(+面倒くさいから)


芽衣の髪はふわふわして気持ち良くていつも触りたくなる。ちゃんと手入れして偉いよ。

私なんてお風呂から上がって髪を乾かさないからいつも朝起きたとき髪が爆発している。

女子力の差だよね。見た目より心を入れ替えないと女子力は上がらないかもしれない。



「よし、終わったー」


「じゃ、帰ろう」


「うん」


「あっ、水希。少し、しゃがんで」


「これぐらい?」



髪にゴミでも付いていたのかな。芽衣が私に近づいてきて距離が一気に近くなる。

このシュチュエーションって…夢で見たのと同じだ。えっ!私、芽衣にキスされるの!キスはできれば、私から動きたい。私の方が身長が大きいし、、


って違うー!!!何を考えているんだ!芽衣は頭に付いたゴミを取ってくれようとしているだけだ。

ほら、芽衣の手が頭に付いた何かを取ろうとしてるし。決してキスではない。あんな夢、正夢になるはずない。



「ゴミ付いてたよー」


「ありがとう…」


「どうしたの?ボーッとして」


「お、、お腹空いたなって」


「早く帰ろう。私もお腹空いたし」



空腹は思考力を奪い、正常な判断ができなくする。私は朝ご飯をしっかり食べずに来てしまい、もう時間も14時を越えている。

お腹が空きすぎて血液が頭に回っていない。早く帰って、沢山お昼ご飯を食べよう。そしたら、大丈夫。私は変態じゃない!!!



「芽衣、今日部活ないしトレーニングを兼ねておんぶしたい」


「えっ、おんぶ…別にいいけど」


「じゃ、乗って」


「うん///。でも、恥ずかしいよ」


「人がいないから大丈夫だって」



芽衣がこんなにも近い距離にいる。大丈夫、ドキドキはするけどトレーニングのせいだ。

決して、芽衣の匂い・肌の感触・胸の感触にドキドキなどしていない。

明日から夏休みが始まる。学校が始まるまでに修行を頑張り、私は煩悩を捨て去り悟りを開くと決めた。


煩悩を抑えるには質素な食事が大事だ。糖分は煩悩の敵で大好きなチョコレートを封印しなくてはいけない。

大好きなチョコレートを我慢できたら、私は打ち勝てる気がする。涙を耐えながら我慢してやる。だけど、ココアだけは許してほしい。



「あっ、水希。あとで、クッキーあげるね」


「えっ、クッキー?」


「うん、実は作ってきたんだ。チョコチップクッキー」


「チョコ…芽衣の意地悪」


「えっ、なんで!?」



私は煩悩なんかより、芽衣に打ち勝たなくてはならないと気づいた。当然だけど、芽衣から貰ったチョコチップクッキーは美味しい。

せっかく作ってくれた手作りクッキーをむげに出来るはずなくちゃんと有り難く食べた。

ごちそうさまでした…全部食べてお腹が満たされたよ。煩悩に勝てる気がしません。

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