第26話
待ちに待った念願のクレープ…めちゃくちゃ美味しい。美味しいけど、芽衣と隣同士でクレープを食べることに緊張が取れずにいる。
私は後悔していた。普段しないことをしたらダメだと。中学時代も友達と手を繋ぐなんて殆どしたことなかった。免疫のない行為は自分を緊張させる。
「水希、一口頂戴」
「はい」
「今日は素直にくれるんだね」
「今日はね」
芽衣が食べた部分をどうやって食べよう。前回はどうやって食べていたのか分からない。
芽衣と手を繋いだことで何も気にせず出来ていたことが急に出来なくなってしまった。
「水希も一口いる?」
「うん」
芽衣のクレープを食べたら、結果一緒だから自分のクレープを食べれるはずだ。
よし、食べる、食べるぞ。芽衣のクレープ美味しい!普通に食べれた。
こんなにも簡単なことに緊張してしまうのは私が芽衣を意識してしまっているせい…?
私が注文したクレープは苺とチョコと生クリームのクレープで、甘酸っぱさと甘さの最高のコラボレーションだ。
大好きなクレープなのに芽衣を見てしまうと味が分からなくなる。緊張が私の味覚をダメにし甘さを感じない。
「水希、もうすぐ夏休みだね」
「だね。ほぼ部活三昧だけど」
「宿題ちゃんとやりなよ」
「大丈夫、芽衣とやれば終わると思うし」
「ふふ、何それ」
芽衣といると勉強がはかどるし、部活が終わった後どちらかの家で宿題やれば私の宿題問題は解決される。これで、中学時代みたいに最終日にヒーヒー言わなくて済むよ。
夏休みはどこかに行きたい。海か山か、どちらかに行き夏休みを満喫し遊びたい。
芽衣を誘って計画を立てて、そしてどこかで出会いがあればいいのにな。
恋って見つけるものでなくて、いつのまにかしてるものだと偶々見ていた恋愛ドラマで言っていた。
いつのまにか心にいる人が好きな人だって。出会いがないと始まらないけどね。
「水希、夏休み遊ぼうね」
「もちろん」
「お祭りも行きたいな」
「チョコバナナ食べたい!」
「私はりんご飴食べたい」
「じゃ、約束」
「うん!」
明日以降の未来の予定が埋まると、待ち遠しくてワクワクする。芽衣の浴衣姿を見たいし、チョコバナナもたこ焼きもイカ焼きも食べたい。
私の高校生になって初めての夏はどんな夏になるのかな。今年の夏は去年までの夏とは違う気がする。
高校生になって、私の生活は色々変わった。まぐれで高校に受かり、お姉ちゃんの命令で陸上部に入り、とても小さな穴をすり抜ける様に生徒会に入り、小さな芽衣と出会った。
頭が痛くて、大変で、叫びたくて、楽しい。大変なのに、芽衣と出会って全てにおいて楽しいが優ってしまう。
「幸せだなー」
「水希、どうしたの?」
「心の声」
「私も幸せだよ、最高の誕生日を迎えられたもん」
「芽衣、来年も再来年も誕生日の予定を空けといてね」
「いいよ、水希のために予約しとく」
お互い笑顔で未来の予約をする。その日が来るのが待ち遠しくもあり、今が楽しくて時が止まればいいのにって言う気持ちが湧き上がりどっちだよ!ってツッコミたくなるけど両方本音だ。
今の幸せが永遠に続けばいいなんて無理だけど、自分次第で幸せは続く。
芽衣とずっと一緒にいたいと思えるこの想いは、初めての想いで少しだけ大人になれた気がした。
「さぁ、次はどこ行こうか」
「水希とだったらどこでもいいよ」
「他人任せー」
「じゃ、散歩しよ」
「いいよ」
「私、歩くの遅いから手を繋いで…」
「軟弱者め」
2回めの手を繋ぐ行為は、ドキドキというよりこの手を守りたいという気持ちが強い。
恋ってどんな気持ちなんだろう。体と心を温めてあげたいという気持ちは…友情だよね。恋を知らない私はまだ恋が分からない。
◇
ファースト・キス
初めてのキス
唇と唇が重なり合う行為
私はどうしたらいいのだろう。頬にキスをされたらキスしたことになるの?
違うよね…相手にいきなりされた行為だからキスしたことにはならないよね。
それに唇にはされていないから、これはファーストキスではない。
「・・・おわぁ!!!!!!!」
「水希、うるさい」
「へっ…夢?」
「何が?」
「芽衣に…」
「芽衣ちゃんが何?」
「何でもない…お姉ちゃん、ごめん」
芽衣にキスされた夢を見た。頬にキスだけどリアルに感じられて…芽衣にキスされている間、私は動けなくてただドキドキしていた。
なんて夢を見たんだ…こんな夢を見たと知られたら芽衣に気持ち悪いって思われる。絶対に嫌われるよ、自分でも怖い。
私は欲求不満なの、、女の子にキスをされる夢を見るなんて、変態すぎる。それも友達だよ!芽衣は大事な友達なのに。
男の人とキスする夢なら百歩譲ってありそうだけど、友達から頬にキスされる夢ってリアルすぎるし意味が分からない。
自分からは全く動けてないし、ヘタレすぎる。いやいや、違う。ヘタレとかじゃなく、ダメだ…頭がしっかり動かない。
こんな夢を見るのがまずおかしくて、された・したの話ではないのだ。今日は芽衣と楽しい1日を過ごした。
色んなものにドキドキしながら帰ってきてリビングのソファーでうたた寝していた。
自分の夢に驚き、近くにいたお姉ちゃんと家族を驚かせ私は自分に絶句する。
夏休みが来る前に私は煩悩を捨てに旅に出た方がいいのかもしれない。
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