第28話
暑い!めちゃくちゃ暑い!夏に外でする部活なんて地獄でしかない。梅雨はまだなの!少しは雨を降らして室内で運動させてほしい。
雨よ降って、私を日焼けから守って。日焼け止めクリーム塗ってるけど、太陽のギラつきに負けそうで怖い。乙女に日焼けは大敵なんだから勘弁して欲しい。
「水希、今日の部活は午前中で終わりだって」
「さわちん、マジで!」
「午後から雨が降るみたい」
「神様が私の願いを聞いてくれた」
「何を言ってるの?」
「さわちん、神様はいるよ」
さわちんの呆れた顔は置いといて、この灼熱から逃れられる。汗も大量にかいてるし、早くシャワーを浴びたい。
学校にシャワー室を作ってほしい。女子校だからこそ乙女の気持ちを汲んで欲しい。
「ねぇ、今日さ勉強会しない?」
「勉強会?」
「宿題が進まない!」
「ふふふ、さわちん…大変ですのう」
「水希もでしょ!」
「私は芽衣という素晴らしい家庭教師がいるから大丈夫なの」
「くそ。じゃ、芽衣を貸して」
「嫌だ、芽衣は私の物だ」
芽衣のおかげで宿題がスムーズに進み、まだ夏休みの前半なのにある程度終わっている。もうね、感謝だよ。感謝しかないよ。
芽衣の手作りお菓子を食べられ、勉強も教えて貰って私は芽衣を崇めないといけない。
「2人とも何の話してるの…」
「水希が酷いの。芽衣を貸してくれない」
「当たり前でしょ、芽衣は私の専属なの」
「2人とも何を言ってるの?」
「みんなで一緒に勉強する話。水希が芽衣を独占して拒否する」
「したらよくない?」
「芽衣のバカー」
「やったー、芽衣がOKを出してくれた」
くそー、さわちんめ。芽衣に直接言うのは反則だ。芽衣を独り占めしていたのに、さわちんが乱入してきた。
別に芽衣は私の物ではないから文句言える立場じゃないけど、さわちんに芽衣の手作りお菓子を半分持っていかれる。
勉強の後のお菓子は最高なのに!めちゃくちゃ悔しいけど仕方ない。
諦めてみんなで勉強するしかない…さわちんに少しだけ幸せをお裾分けしてあげよう。でも、今日だけだからね。
「今日、勉強会するの?」
「うん。芽衣の家に行きたい」
「さわちん、何で芽衣の家なの!」
「だって、水希の部屋汚さそうだもん」
「失礼すぎるぞ」
「ごめん。今日ね、親戚が来るんだ。だから、水希の家でいい?」
ふふふ、ははは、さわちんよ。幸せのお裾分けは出来ないみたいだ。
芽衣の手作りお菓子は私の物だ。しょがない、帰りにお菓子を少しだけ買っていってあげるよ。さわちん、優しい私に感謝してね。
「水希の顔がムカつく」
「なんでよ」
「芽衣の家が良かった」
「じゃ、今日の勉強会なしね」
「それはダメ!」
悔しさを乗り越えた先に幸せはある。さわちん、勉強会できるだけでよかったと思うようにして一緒に宿題を頑張ろう。
ふふふ、ははは。何だろう、この高揚感。楽しくて、自慢の彼女を羨ましがれているような気分だ。
あれー、あれ?この孤独感はなんなの?3人で夏休みの宿題をしてるのは普通だとして、座る位置が納得できない。
私の部屋の机は横長で、只今2対1の状態で別れて座っている。私達の間にはまるで、七夕の天の川が流れているかのように2人との距離が遠い。
確かに私は芽衣のお陰で宿題は進んでいる。だから、芽衣がさわちんの隣にいて宿題の分からない所を教えるのは仕方ないけど…めちゃくちゃ寂しい。
2人の距離近すぎる。絶対近いよね、さわちんもさ問題分からなさすぎだよ。
私も分からない所を芽衣にかなり助けられたけど…このモヤモヤはなんなの。
芽衣を取られた気分になる。芽衣の隣は私の場所なのに。少しは私の隣に来てほしい。私もまだ宿題が全部は終わってないよ。
「2人とも飲み物いる?」
「いるー!」
「いる」
「じゃ、ちょっと待ってて」
「水希、手伝うよ」
「芽衣はお客さんなんだからここにいて」
1人になって少し休憩をしたい。頭が痛くて、なぜか息がしずらかった。
私は病気なのかな…風邪でも引いた?思考も変だし、体調もおかしい気がする。胸がムカムカするし、モヤモヤが取れない。
3人分のジュースをコップに入れ、ため息を吐き一呼吸する。あっ、お菓子の用意をしなきゃいけない。お菓子、、夏休みに入って竹本さんのお菓子を食べてない。
竹本さんのお菓子は美味しいからまた食べたい。でも、その前にちゃんとお返ししなきゃ…私は幸せを貰ってばかりだ。
「水希、手伝うよ」
「芽衣、別によかったのに」
「3人分は重いでしょ」
さわちんにヤキモチ焼いていたのかもしれない。芽衣が隣に来てくれたことで心がスッキリし嬉しかった。
芽衣は今までの友達の中で一番仲が良くて、一番気が合う。だからかな、思いが一番強く我が儘になってしまったのかもしれない。
友達におもちゃを取られて泣く子供みたいに、共有することが出来なかった。
みんなで一緒に遊べばいい。芽衣は私の物じゃない。早く大人になりたい、子供っぽい自分が嫌になる。
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