第23話

「すみません、突然泊まらせて貰って…」


「いいのよ、芽衣も喜ぶから」


「ありがとうございます」


「水希、服とかどうしようか?」


「ジャージならあるよ、部活用に持ってきてたから」



今日、部活が中止で良かった。丁度お泊まり用の服もできたし、下着は…諦めよう。まぁ、秘策はあるから問題なしだ。女の子だったら分かる秘策。



「料理、美味しいです!」


「良かった、いっぱい食べてね」


「はい!」



芽衣のお母さんの料理はやっぱり最高だ!芽衣の料理の上手さはお母さん譲りだね。

余りにも美味しくて食べすぎた。芽衣も食欲はあって良かった。顔色も良く具合は良くなったみたいだ。



「この後、ゆっくりお風呂に入ってね」


「はい」



芽衣の誕生日なのに私がかなり幸せだ。美味しい料理にお風呂まで、突然のお泊まりなのに申し訳ない気持ちになる。

あとで、お茶碗ぐらい洗いたいけど…芽衣のお母さんがいるから無理だよね。



「水希、ケーキあるからお風呂から上がったら一緒に食べよう」


「いいの!?」


「チョコレートケーキもあるよ」


「やった!」



愛しのチョコレートが、それもケーキが食べられる!10円チョコでずっと我慢していた私にとって神様からのご褒美だ。

芽衣もニコニコしてるし、かなり緊張したけど来て良かった。



「芽衣、お風呂上がったよー」


「髪、濡れてるよ」


「髪が短いからすぐに乾くよ」


「ダメ、ここに座って」


「乾かしてくれるの?」


「今日だけ特別///」



自分以外の人に髪の毛を触られると気持ちいい。だけど、芽衣の手が優しく私の頭を撫でるから眠くなる。せっかくの芽衣の誕生日なのに私はしてもらってばかりだ。



「ほら、もう乾いたから芽衣もお風呂に入っておいで」


「うん」


「あっ、ネックレス外さないの?」


「そうか…今度、ネックレスを飾るスタンド買わなきゃ」


「明日、見に行く?」


「うん!」



芽衣がかなり気に入っているみたい良かった。ネックレスを外したあと嬉しそうに見つめていたし、チョコレートを我慢して頑張った甲斐があった。

芽衣がお風呂からあがるまで、のんびりベッドの上で横になっていよう。ベッドから芽衣の匂いがして心地いいし、落ち着く。









「こら、水希。起きろー」


「うぉ、芽衣…お風呂から上がったの?」


「うん」


「いつのまにか寝っちゃった」


「起きて、ケーキ食べよう」


「あっ、そうだった!」



やってしまった。ケーキに釣られて勢い良く起き上がりベッドの上に乗っていた芽衣が体勢を崩してしまった。

危なかった。慌てて芽衣を抱きしめ、なんとか芽衣がベッドから落ちずに済んだ。



「芽衣、大丈夫?」


「うん…」


「あっ、芽衣の髪いい匂いする」


「同じシャンプーでしょ」


「今日はそうだね」


「ケーキ…取ってくるから」


「一緒に行くよ」


「1人で大丈夫だから!」



芽衣が私から勢いよく離れ、部屋から出て行ってしまった。離れた後も芽衣の肌の柔らかさの余韻が残る。

芽衣の体、小さいね。抱きしめると腕の中にすっぽりと入り、ずっと腕の中に閉じ込めたい不思議な気分になった。



「持ってきてよー」


「待ってました!」


「はい、チョコレートケーキ」


「わーい!芽衣、大好き!」


「早く食べよ///」



チョコレートケーキが美味しい!甘くて、柔らかくて、最高の舌触り。

口の中にいれるとチョコが溶け、鼻に甘い香りがし何度も私を虜にする究極のお菓子。

美味しさのあまり、ベッドの上でバタバタ暴れたい衝動を抑え、一口ずつ食べていく。



「芽衣、美味しいよ…泣けるー」


「チョコに飢えている人みたい」


「飢えてたの」


「もしかして、プレゼント無理してないよね…」


「えっ、何が〜?」



ここでバレたら私がチョコレートを今まで我慢してきた意味がなくなる。

何とか誤魔化さないと…気持ち悪いって思われてしまう。嫌だ、嫌だ、芽衣に白い目で見られるのだけは嫌だ。



「水希。このネックレス、いくらだったの?」


「3000円…」


「ふーん、ネットでこのブランドを調べればすぐに分かるけどね」


「いやー、やめて…ごめんなさい」


「いくらしたの…」


「16500円…」


「えっ…」



引いたよね、絶対引いたよね!恭子先輩の言葉を鵜呑みにして友達に高いプレゼント贈るなんて気持ち悪いよね。

分かってるよ、、でも、お願いだからキモって言わないで。泣きそうだから。



「馬鹿…こんな高いやつ」


「すみません…嫌だよね」


「馬鹿…バカ」


「えっ、芽衣!泣かないでよー、そんなに嫌だったの?」


「違う…無理させたのが嫌なの」


「無理なんてしてないよ」



確かにプレゼントを買うため、お年玉使ってお小遣いを貯めて、チョコレートも我慢したけど芽衣の喜ぶ顔が見たかったからで無理はしていない。

まさか、芽衣が泣くとは思わなかった。恭子先輩のバカー…芽衣が泣き止んでくれない。



「芽衣、泣かないでよ」


「ありがとう…」


「うん、喜んでくれないと悲しいよ」


「大事にする…」


「良かった」



気持ち悪いと思われなくて良かった。確かに高校生が友達にプレゼントする値段ではないけど、相手を思う気持ちだと思うし芽衣に似合うプレゼントだったからいいんだよ。

芽衣が喜んでくれるなら全てが報われる。

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