第24話

「私も今からお小遣い貯めなきゃな」


「何で?」


「だって、水希の誕生日は11月だから…」


「言っとくけど、高いプレゼントはいらないからね」


「私だけ高いプレゼント貰えないもん!」


「だったら、芽衣の手作りチョコレートケーキがいい」



だから、値段を言いたくなかった。ドン引きされるのも嫌だけど、芽衣はお返しに同じ金額のプレゼントをするって分かっていたから知ってほしくなかった。

それに、芽衣の手作り料理の方が嬉しい。



「水希。チョコレートケーキと何かあげるじゃダメ?」


「じゃあ、チョコレートケーキとこのスポーツバッグがいい」


「どれ?」


「このバッグ、欲しかったの」


「値段安いよー」


「ケーキも付いてくるし、いいの」



私は芽衣が作ったチョコレートケーキさえあれば幸せだからそれでいい。

バッグも使いやすさ、気軽さが大事だし変に高いと使いづらい。だから、お手頃価格のバッグが一番なんだよ。



「じゃ、明日買いに行こう」


「誕生日は11月だよ?」


「早めにあげる。だって水希、普通のバッグにジャージとタオル入れてるからいつもパンパンだし」


「いいの?ありがとうー」


「こっちこそ、ありがとう///」



嬉しい、芽衣が久しぶりに甘えてくれた。私の腕を組みながら、頭を肩にコツンと預けてくれた。いつぶりだろ、芽衣からこんなに近い距離にいてくれるの。

左腕がポカポカする。人肌って温かい。感想がちょっと変態っぽいけど素直な気持ちだ。


芽衣の首からチラリと見えるネックレス。チラリズムな感じがしてとても良い。

頑張って買って、贈った物を付けてくれるのはかなり嬉しい。昔で言う給料3ヶ月分の指輪を贈る感じで頑張ったから。



「そろそろ寝る?」


「うん」


「芽衣は壁側で寝てね。芽衣が落ちるんじゃないかと心配で寝れないから」


「やだ、壁側は水希でいいじゃん」


「こら、話を聞け」


「この前と同じように寝ればいいじゃん…」


「まぁ、それでいいなら」



芽衣は壁側は好きじゃないのかも。壁側は窮屈だから、圧迫感が嫌いな人は嫌がる。

だったら、仕方ない。芽衣を抱きしめながら寝るの結構気に入ってたし、ふわふわとした抱き心地でよく眠れる。


眠れない…今日の芽衣の甘え方に戸惑ってしまう。甘え方がいつもより強く、距離もめちゃくちゃ近いからドキドキが止まらない。

それに、こんなに引っ付かれると体勢がキツく、身動きが出来ない私の右腕が死ぬ。



「芽衣、頭あげて」


「こう?」


「よし、これで完璧」


「腕枕…」


「枕と首の間に入れているから痛くはないでしょ」


「うん…」



恋に恋する私は腕枕に憧れて、彼氏の腕が痛くならないようにするにはどうしたらいいかを調べたことがある。

腕に直接頭を乗せると自分も相手もキツいと書いてあって、なるほどって思った。

実際にこのやり方だと、全然腕が痛くないし芽衣を抱きしめやすい。


芽衣の体温が温かい。やっぱりまだ具合が悪いのかもしれない。早く治して欲しくて少しだけギュッと強く抱きしめた。

私に風邪を移してほしい。治りも早くなるし、私は鍛えているから芽衣から貰った風邪菌なんて蹴散らしてやる。


今日もいい夢を見れるといいなと思いながら眠りについた。前回、いい夢を見た気がする。この香りがすると私を包み込むように夢の世界へ連れて行く。

今回は香りが長く感じた。この香り…芽衣の匂いだ。甘いミルクの香り。まるでミルマロを飲んでいるかのように唇まで甘く感じる。









「水希…起きて」


「うーん、もう朝?」


「そうだよ」


「もうちょっと寝たい」


「私は起きるから…腕、緩めて」


「やだー、このふわふわを離したくない」



犬を飼ってる人が犬のお腹に頬擦りしたくなる気持ちが分かる気がする。これは気持ちいいよね、芽衣の体や髪が気持ちよくて離したくない。



「水希、離して///」


「嫌だー、もふもふしたい」


「私は犬じゃない」


「芽衣わんこ、可愛いよー」


「もう///、いい加減にして」



芽衣が暴れるから仕方なく腕を緩める。今、何時だろう?天気は晴れたのかな。

昨日はチョコレートケーキも食べれたから元気一杯で、今日はクレープも食べるから最高1日になりそうだ。



「水希。顔、洗ったら朝ご飯食べよう」


「うん」


「じゃ、着替えようよ」


「はーい」



しまった、私は学校から直接来たから制服しかない。一度家に帰らないと洋服がない。

流石にジャージで買い物はしたくないし、クレープを買いに行けない。急いで家に一度帰らないと遊べる時間が減ってしまう。



「芽衣、一度着替えに帰っていい?」


「あっ、そっか。水希は制服だった」


「うん、だから一度帰って着替えるよ」


「分かった」



昨日の不安が解消し、朝から最高の気分だ。芽衣のお母さんの朝ご飯も美味しく、私は芽衣のご両親にお礼を言って、芽衣と一緒に一度私の家に帰った。

隣にいる芽衣は笑顔で話をしてくれる。芽衣が元気になって良かった。やっぱり好きな人には笑っていて欲しい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る