第21話
今日、ドキドキしながら鞄に芽衣の誕生日プレゼントを入れ登校したのに、肝心の芽衣が風邪で休むと知った。
LINEには今日は会えないって連絡が来て凹む…できれば、当日にプレゼントをちゃんと渡したかった。
昨日、日付が変わった時にお誕生日おめでとうのLINEを送って既読にならなかったのはてっきり寝ていたからだと思っていた。芽衣は具合が悪くて寝ていたんだね。
明日も芽衣と会えないと分かり気分が落ちていく。お金はあんまりないけど芽衣と出掛けたかった。芽衣と遊びたかった。
「つまんないー」
「こら、芽衣がいないからって不貞腐れるな」
「だって」
「私に失礼だろ」
「ごんちゃん、ごめん」
いつも芽衣とずっと話をして、いつも一緒にいるから寂しくてたまらない。別に私にも芽衣以外に友達がいない訳ではない。
普通に仲の良い友達(ごんちゃん)がいるし、問題はないけど寂しい。寂しい!寂しい!芽衣に会いたい!
プレゼントを渡したかった。せっかくの芽衣の16歳の誕生日なのにお祝い出来ないなんて切なくて悲しい。
だから、部活が終わりにプレゼントだけでも渡しに行くと決めた。心配でもあるし、芽衣の顔を見たくてたまらなかった。
「水希。今日、全ての部活が休みらしいよ」
「そうなの?」
「今日さ、夕方から暴風雨って予報されてるから部活は中止なんだって」
「天気予報見てないから知らなかった…傘、ないよー」
「大丈夫だって、授業は午前中で終わりだし暴風雨は夕方からだから」
「そっか、じゃ大丈夫か」
授業が終わったら速攻芽衣の家に行ってプレゼント渡さないと家まで帰れなくなる。
もし、家に行って寝ていたらお母さんから渡して貰おう。顔を見たいけど、具合悪いのに起こしちゃダメだよね。
「ねぇ、水希って好きな人いないの?」
「いないー」
「まぁ、女子校じゃ出会いがないか」
「ごんちゃんはいるの?」
「ふふふ」
「えっ、いるの?」
「いない!」
なんだよー、思わせぶりな反応しといてそれはないよ。でも、女子校じゃ出会いがなさすぎて恋なんてできない。
それに私は部活と生徒会で毎日が過ぎていく。もう7月なのに、もうすぐ夏休みなのに、恋の季節なのに。
夏休みに浴衣を着て、好きな人と手を繋ぎながらお祭りを楽しみたいという願望はいつ叶うのだろう。
多感な高校生時代があっという間に終わりそうで怖い。11月になれば私の誕生日が来る。あと4ヶ月…余りにも早すぎる。
「水希はモテるからすぐに恋人出来そうだけどね」
「どこが!モテないよ」
「モテてるよ。女子に」
「はぁ?何言ってるの?」
「鈍感野郎め…まだ気付いてなかったの」
「意味わかんない」
女子にってどういうこと?前、芽衣が部活対抗リレーで私は注目されてるとは言っていたけどそれとこれとは違うし理解できない。
それにそれが本当だとしても、女の子にモテても仕方がない。私が欲しいのは彼氏だ。
「彼氏が欲しいー」
「彼女だったらすぐに作れると思うよ」
「だ・か・ら彼氏が欲しいの!」
「そんなこと言っていたら、水希のファンが泣くよ」
「私にファンなんていません」
「水希を好きになった子は大変そう」
いい加減にしてほしい。私にファンなんていないし、私を好きな子なんていない。好きであっても、きっと友達としてだ。
ごんちゃんは私を揶揄って楽しいかもしれないけど、男の子にモテないのは短い女子高生時代にとって死活問題だ。
あっという間の3年間を一度も彼氏が出来ずに卒業したくない。
せめて恋はしたい。彼氏がいるお姉ちゃんが羨ましいなんて思ってないんだからね。ツンデレでもないからね、ただの僻みだよ。
「水希。そういえば、知ってる?」
「何…急に小声になって」
「噂なんだけどさ…2組の女子と4組の女子が付き合っているらしいよ」
「嘘!マジ?」
「マジ、大マジ」
「女子校ならではだね」
まさか、女の子同士で付き合っている人がいるなんて…女子校だからありえるけど本当に現実にいるんだなって驚いてしまう。
同性同士の恋なんて、漫画の世界だけかと思ってた。私は…ないな。女の子に恋をするなんて…ありえない。
「水希ちゃんはどんな恋をするのか楽しみだね〜」
「水希ちゃんって…気持ちわる」
「恋の相談とか乗ってあげないからね」
「恋ができるか分からないに…」
「まぁ、恋は焦らずじゃよ」
「ごんちゃん、お爺ちゃんみたい…」
ごんちゃんが私の言葉に怒ってそっぽを向く。でも、“じゃよ”はずるいよ。じゃよって、どう考えてもお爺ちゃんだもん。
焦って恋をしても意味がないのは分かっている…だけど、私に好きな人が出来るのかなと不安なんだ。好きで好きで、毎日会いたくて仕方ない人が現れるのかなって。
私にとって毎日会いたい人って誰だろう…。
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