第4話
疲れた、疲れたよ…今、何周目なんだろう。まだ季節は春だからいいけど夏だったら暑さもプラスされて死んでいる。
さわちんとお姉ちゃんは長距離選手だから息もそんなに荒くなく余裕の走りで私だけぜぇぜぇ言っている。
中学の時、帰宅部で運動をしてこなかった私は他の1年メンバーより基礎体力がない。
やっぱり、いくら少し走るのが早かったからって無理なんだ。そりゃ、一度だけ中学の体育会で陸上部にリレーで勝ったけど。
「水希、頑張ってー」
「芽衣。あと、何周、、?」
「あと、2周だよー」
「2周…死ぬ」
「ほら、さわちんはゴールしてるよ」
「私は短距離選手なの!」
だって、グラウンドを28周も走っている。体力が続かないし…喉も渇いた。水が欲しい。
あと、2周したら水が飲める…やっと水が飲めると気合を入れなおす。
「水希、お疲れ〜」
「芽衣。水…水を、、」
「あっ、待ってて。持ってくる」
「水希。これ、飲む?」
「えっ、頂きます!」
やった、同じ短距離をやっている井上恭子先輩が水をくれた。はぁぁぁぁ、生き返る。
もう少しで干からびてミイラになるところだった。陸上部のトレーニングは私にはハードすぎる。帰宅部だった私にはトレーニングなどが慣れてないからついていけない。
「水希、水…」
「あっ、ありがとう〜」
「芽衣ちゃん。これ、後で水を足してくれる?」
「はい」
陸上を始めてから水の有り難さを感じる。走り終わった後の水が幸せだ。でも、飲みすぎるとこの後のトレーニングに響くから程々にしないといけない。
私は芽衣から貰った水を一口だけのみ、軽くストレッチをする。関節をしっかり伸ばし、筋肉の疲労の軽減をしないと怪我をする。
「水、もういいの?」
「うん」
「あっ、タオル」
「芽衣の貸してよ。私の使っていいから」
「ちゃんと、洗って返してね」
「お母さんが洗ってくれるから大丈夫」
運動した後の汗は普通の汗とは違いスッキリ感がある。芽衣に借りたタオルで顔を拭くとふわりと芽衣の匂いがした。
女子力の高さがここにも出ている。タオルからは甘い香りがして、私にはない匂いだ。
部活が終わったあと制汗スプレーするけど、どうやったらこんな匂い出せるのだろう?
「ちょっと///。水希、何やってるの」
「うーん、やっぱりいい匂いする」
「何がよ」
「体臭…悔しい!」
芽衣の首元をクンクンと犬みたいに匂いを嗅ぎ、甘い香りを吸い込んでいたら芽衣が後ろに下がり逃げてしまった。この体臭をどうやったら手に入れられるか考えていたのに残念。
もし、この香りが体臭だったら諦めるしかない。だけど、女子力の高い芽衣だったら香水やボディクリームでも塗ってるかもしれない。
「ねぇ、芽衣は香水とかボディクリーム塗ってるの?」
「何もしてないけど…」
「くそー、生まれ持った匂いか」
どうやったら、芽衣みたいに女子力をつけることができるのだろう。もしかして、ミルマロのお陰?出来れば、甘い牛乳が嫌いだから飲みたくない。
女子力を上げるために髪でも伸ばすとかして、、でも、走るとき邪魔くさい。
考えが悪循環すぎて正解が分からないよ。
月日が過ぎるのは早く、もう5月だ。来月には生徒会の選挙がある。この前、お姉ちゃんに生徒会への立候補の紙に名前を書かされ強制的に色んなものが進んでいる。
今月の後半には個人で選挙活動みたいなことしないといけないし…意地でもしないけど。でも、全校生徒の前でスピーチは絶対だ。人前に出るの好きじゃないのに最悪すぎる。
「あっ、芽衣」
「何?」
「ジッとして」
「えっ?」
「白髪!」
「嘘!」
「うん?あれ、ただの光加減で白髪に見えただけだった」
芽衣の髪は細く柔らかくて気持ちいい。猫っ毛の髪を触っていると頬擦りしたくなる。
芽衣は動物に例えると小型犬で、あまりの可愛さにギューっと抱きしめたくなるけど怒られるから我慢している。163センチの私にとってこの小ささ(身長)が羨ましい。
「水希、髪がぐちゃぐちゃになる」
「だって、気持ち良くて」
「ほら、トレーニングの続きしないと」
「やっば…お姉ちゃんが見てる」
危ない、危ない。ちゃんとやらないと鬼のお姉ちゃんに家で怒られてしまう。今日はこのあとフォームのチェックや走り込みをするから、頑張らないといけない。
基本負けず嫌いだし、このまま何もせず同級生に負けるのだけは嫌だ。
やるからには絶対に勝ちたい。大会にも出たいし、お姉ちゃんに負けるのだけは嫌だからだ。お姉ちゃんは努力の鬼だから。
体力作りの為に休みの日とか走りに行こう。持久力が全然足りないし体力も少ない。あとは怪我をしないように体の柔軟性も必要だ。
「よしゃ、頑張ろう」
「うん、頑張って」
まだ、高校生活は始まったばかりだ。
私の青春はこれからだ!お姉ちゃんにはこれ以上屈しない。私は私の道を…いけるかな。
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