第3話

「水希ー、部活に行くよー」


「ういー」


「ほら、シャッキと歩いてよ」


「昨日の鬼のトレーニングで筋肉痛なの」


「えい」


「痛っ!マネージャーならマッサージとかしてよ」


「私は忙しいの」



月日が進むのは早いもので入学式から1ヶ月が経った。高校初日で芽衣と喧嘩して、陸上部に強制入部になってからあっという間だ。

芽衣とは喧嘩をしたからか、お互い曝け出して仲良くなった。席も隣だし、今はお弁当も一緒に食べている。


そして、芽衣はお姉ちゃんに捕まり陸上部のマネージャーになった。私と仲良くなったことで陸上部を見にきた時、マネージャーを探していた顧問とお姉ちゃんに目をつけられ逃げることが出来なかった。

ふっ、可哀想。でも、私は15年もそんな状態だからね!15年もだよ!



「はぁ、お腹空いたー」


「お昼ご飯食べたでしょ」


「成長期だから足りないー」


「水希が大食いなだけだよ」


「ふふ、実は身長1センチ伸びたんだ〜」


「嘘!じゃあ、163センチなの!?」


「そうだよん」


「水希ばっかり何で…私は毎日牛乳飲んでいるのに身長が伸びないの、、」


「ミルマロとか変な組み合わせで飲んでいるからだよ」



あっ、心の声がついポロッと出てしまった。この言葉は芽衣にとって地雷だったのに、私はすぐに忘れて地雷を踏んでしまう。

痛い!痛いから!それに、身体中が筋肉痛だって言ったのに容赦なく叩いてくる。

私の筋肉は今再生中だから優しく労ってほしい。芽衣って小さいのに力は強いから、いつか叩かれすぎて痣ができると思う。



「あっ、遅刻しちゃう」


「うげ!お姉ちゃんに怒られる」


「もう、水希のせいだからね」


「芽衣が叩くからじゃん」


「水希が悪い」



廊下は走ったら先生に怒られるから、早歩きで陸上部の部室まで目指す。

短距離で鍛えた足を使い、颯爽と歩けばと思っていたけど芽衣が遅い。遅すぎる!

身長が小さいゆえ歩幅が小さく…これじゃ、本気で遅刻だ。後ろを振り向くと芽衣は必死に小走りで歩いているけど、私との差が開いていく。



「芽衣、遅刻しちゃうよ」


「だって、運動音痴だし…水希と身長も違うからそんなに早く歩けない」


「はぁ、仕方ないな。ほら、背中に乗って」


「えっ、何で?」


「おんぶしてダッシュで部室まで行くの」


「嫌よ///。子供扱いしないで」


「うるさい、遅刻して怒られたら芽衣のせいだからなー」


「わ、、分かったわよ///」



よし、これで遅刻は免れる!私は背中に芽衣を乗せ、部室まで小走りで向かった。最後は50%の力で走り、背中の芽衣がキャーキャーうるさくて耳が痛くなり最悪だったけど意外に良いウォーミングアップになった。

丁度いい軽さ、おんぶしやすい身長の高さ…これからは部活に行く時は芽衣をおんぶして行くと体を鍛えられる。



「よし、間に合った」


「早く降ろせー」


「ねぇ、これから部活に行く時おんぶしちゃダメ?」


「えっ、何で///」


「丁度いいウォーミングアップになる」


「嫌だよ!おんぶされてる方は恥ずかしいもん」


「えー、マネージャーなら協力してよ」


「私はみんなのマネージャーなの。水希専属じゃない!」


「ケチー」



芽衣に拒否されて、早く降ろせと暴れる芽衣をゆっくり背中から降ろす。

ジャージに着替えて今日も鬼のトレーニングしないといけない。1年生は基本最初は体力アップの為にひたすら走らされる。

毎日毎日、グラウンドをぐるぐると走り続け目が回りそうだ。走り続けたお陰で体重は自動的に減ったのは感謝しておこう。



「こら、そこの2人イチャイチャしてないでさっさと着替えろ」


「おぉ、さわちんも今来たの?」


「だから早く着替えたいの」


「ねぇ。良いウォーミングアップ方法を見つけたよ」


「何?」


「芽衣をおんぶして走るといい感じにアップできる」


「マジで?私も試してみたい」


「2人とも私で遊ばないで!」



道具代わりにされたことに対して怒る芽衣と部室に入り、さわちんと急いで着替える。

この学校は1年生だから先輩の代わりに準備をしないといけないとかが無いから楽で有難いけど、陸上部は何度も大会にも出ていて強くライバルが多いし鬼の軍曹(お姉ちゃん)がいるから手を抜けない。


私の輝かしい高校生活は今のところ部活一色で、家と学校の往復しかしてなく男の(お)の字も無い生活を送っている。

あまりにも、真面目な高校生活すぎて現実逃避しそうだ。せめてカッコいい先生がいたらと思ったけど、おじさん先生しかしなくてガッカリだ。この学校は夢も見させてくれない。

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