第14話 僕はJKだぞぉ~
そう言えばこの路線は一緒なんだっけ?
電車内の通風口を見上げる。
学校には2通りの行き方がある。渋谷から二本、学校の近くに駅を持つ違う路線がある。
登録した定期が僕とミナで違うから、この山手線を僕ら二人とも使うのに、毎回別々に下校するのだ。
次はミナと同じ路線に合わせようかな…。
そういえばミナって女の子…っ、なんで異性系統の話題に頭の中は持って行きたがるのかなぁ!?おい!
そしたら余計意識しちゃうだろ!?
…あっ!
※この陰キャ、自ら陰キャになったとホザくものの、女子との接触に敏感なのである!
久しぶりの天の声にぐぅの根も出ない。相手がミナならあんまりドギマギしないんだけど…普通に女の子って分かると…なぁ…。
そう、となりのJkと服が擦れてるのだ。ヤバい…変な気分…。
あぁっ、駄目だ、別の事を考えないと…。
横に逸れて逃げようにも、少し混んでいるせいで動けない…。しかも動いたらそれこそ意識しているようで変人と思われるっ。
※既に意識しているのでは?
うるさいっ…。
『恵比寿〜恵比寿〜…』
アナウンスが流れて、後ろの扉が開いた。
はぁ…ようやく、次で渋谷だ…渋谷に着けば離れられる…。
「だーれだ」
突然、視界が塞がれる。リュックが少し重くなる。
首筋に吐息を感じ、くすぐったい…。
じゃないっ!これはっ。
「ミナッ…やめろっ…」
なんとか理性が間に合って、怒鳴る声が小声にとどまる。
首だけねじって振り返ると…やっぱりミナだった。ミナはしたり顔で笑ってる。
「にへへ…何JKと服が擦れたぐらいでドキドキしてるんだよ。はたからみてて面白かったぜ?…少し妬いたけど…」
「…陰キャなんだよこっちはっ。あと最後なんて言った?」
「なんでもないさ。それよりねぇ、僕もJKなんだけど?」
「…っ…変に意識するからやめてくれ…」
「そ…僕はJKだぞぉ~…ね、ドキドキするかい?」
…心臓が強く鳴り出す。耳がミナの吐息に包まれて生暖かくて興奮す…っ!
「やめろっ…ほんとにっ…」
ミナを振り払って、顔を合わせる。…と、ミナの顔も、少し赤かった。目が合ったと思うと、すぐ逸らされる。
「…み、見るなっ…」
「…」
こいつ、馬鹿だ。なんで人を恥ずかしがらせる目的で自分も恥ずかしくなってんだか…。
やり返したくなって、ミナの声をリピートした。自分では上手く真似できたと思ってる。
「バーカ。ね、ドキドキした?」
「女声出せてないよ、キモ」
心に電動ノコギリを入れられた気分だ。
いつの間にか渋谷に着く。ここで別れられる…よな?
「じゃ、ぼ、僕こっちの路線だから。ミナは地下鉄でしょ?」
「おや、逃げるのかい?」
「ちげぇよっ、金の無駄遣いだからだよっ。そっちの地下鉄はよく止まるでしょ?シケた電車乗ってるよね!」
なんの煽りをしているんだろうか…意地を張るのが僕の悪いところ。
「そ…。我らがこの地下鉄を馬鹿にしたね?じゃあ…学校まで競争だ」
「あぁいいさ、勝負しようじゃねぇか」
「勝った方にジュース一本と、言うこと1つ聞く」
「奢ってくれてありがとよ。あとでパンツでも見せてくれよ」
先に勝利宣言をしておこう。この勝負…僕の勝ちだっ…。
「やぁ、遅かったね」
「…クソッ…」
教室に駆け込む…が、ミナは既にそこにいた。にひっ、と笑みを浮かべている。
「じゃあパンツを…」
「はっ、そ、それだけはっ!冗談で僕は言っただけで…!勝ってもミナのパンツなんて見る気なかったし!」
「そうか…せっかく僕のパンツを見ろ、て命令をしてあげようかとおもったんだけど…。
まぁいいか。ねぇカイ?来年は君も僕と同じ地下鉄にしたら?あぁ、それを僕の命令にしよう」
パンツ云々の話はどうせ嘘だから聞き流そう。いちいち反応してたらからかわれるだけだ。
それよりも…悔しい。僕が言おうとした台詞を、奪われてしまった。
来年は俺と同じ電車を使え、それが俺の命令だ。って…。
で、でも僕がそう言いたかったのは決して、一緒の電車で登校したい、とか言う訳じゃない。
ミナがどうなのかは知らないけど。僕は、違う、そんな理由じゃない…はずだ。
「え、クラちゃんプール入らないの?」
「怪我?体調でも悪いの?」
「クラリスくんの水着姿楽しみにしてたのに…」
…小耳に挟んだ最後の言葉はかなり恐怖だ。
意外と女子って性欲高い。ちなみに『おなご』って読んだ方が『じょし』って読むよりもおっさんクサくて変態だ。
「うん、ちょっと持病で入れないんだ」
プールの授業…だが、ミナは着替えないでそのまま地下のプールに降りていった。
ちなみにこの学校、なんと地下に屋内プールがあるという最強設備。水泳部しか嬉しくない事実。
まぁもういっこのちなみには、カリキュラムが面倒だからレーンと教師は男女別なだけ。だから嬉しいことに、鑑賞会ができるってこと。
「え~大丈夫?」
「あぁ、普通の行事は全然、大丈夫だから。心配ありがとね」
「キャッ…格好いい…」
アイツ…男子に回ってくる女子の人数を減らしやがって…許せん。そして…授業を見学する僕を心配してくれる人が誰も居ないのが酷すぎる。
皆が僕の事をサボり野郎とか言いやがる…。確かに朝『今日水泳だな~』って思って部屋の水着を敢えて忘れてきた気もするけどっ!少しぐらい『大丈夫?』とか言ってくれてもいいんじゃない!?
「ねぇミナ」
クラスメイトがミナから離れた後で話しかける。女子の水着はいいですねぇ…。
今日の見学は僕とミナだけなようだ。
「なんだい?」
「休む理由はガラコンと髪染め?」
「あったりぃ~。そういえば君には見せたんだっけ。青目だよ」
「知ってる。めっちゃ綺麗で印象的だったし」
「っ…はぁ…君は凄いよ。小学生のころはみんなが僕を気味悪がったからさ」
「小学生とかガキと一緒にするなボケ」
頭を軽くチョップで叩く。髪の毛に手が触れた瞬間、ドキッとした。
…そうだ…朝も電車でからかわれたけど…こいつJKだ…。
再びドキッとする。
「いてて…ひどいなぁ君は。なぁ、僕の髪の毛、見たいかい?」
「…興味はあるけど、そう言うのって奇跡的に見たときの方が嬉しくないか?」
「例えば?」
「僕がミナの風呂を覗いて髪色を知るとか」
「…変態さが最近とっても目立つね」
「男はみんな同じだから。頭の9割は性欲だよ」
天罰とばかりに、プールからはじけ飛んだ水飛沫が頬にぺちゃっと付いた。
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