即戦力

水谷一志

第1話 即戦力

「俺は、即戦力になれる…!」

そう思って、この球団にやってきたのに。


俺は、今までひたすらボールを投げ続けてきた。

そして昔の俺に比べて、球速は確実に上がっている。

俺は今なら160kmのストレートを投げることも可能だ。

それに変化球もキレのいい球を投げられる。

スライダー、緩いカーブ、それに今流行りのスプリット、ムービングボール―。

とにかく俺は、一般的なピッチャーに比べて多彩な球種を持っている。


それに俺は、他のピッチャーのフォームなんかも研究してきた。

これは、昔の俺では考えられなかったことだ。

こんな風に俺は進化してこの球団にやってきた。

しかし、しかし―。


監督は、なぜ俺を試合で使ってくれない?

俺はこんなにスペックが高いのに!

俺はこんなに努力しているのに!

もちろん開幕投手で、とは言わない。

ただ、せめてローテーションピッチャーとしてチャンスを与えて欲しい!


確かに俺は昔からいるベテランに近い存在だ。

でも俺は昔と違い、こんなに進化しているのに!

それを監督は分かっているのか?

俺は間違いなく、即戦力になれるのに!


「いやあ~まさしくこれは【即戦力】ですね、監督!」

「ああ、こんなにスペックが高いとは思わなかったよ。」

「何せ《相手ピッチャーのクセ》も再現できるんだからな。」

「そうですね、買って良かったです、この【ピッチングマシーン】!」     (終)


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即戦力 水谷一志 @baker_km

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