第98話 意外な加勢
「最上位の天使とはいえ、殺しの罪悪感に苛まされている奴が実力を出し切れるかな?」
「ちッ……」
ソロネは舌打ち、柄ではないのだが、どうにもアーサーという女の言葉はいちいち癪に触ると感じさせた。
「はァッ!」
「くッ!」
銃に取り付けた近接武器による斬撃だ。ソロネは距離を取るが、それもアーサーの狙いだった。
「死ね!」
銃のトリガーを引き、ソロネに向けて撃った。
「ふん、鉛の弾で殺せると思ったか」
ソロネは掠めただけだと鼻で笑う。天使もまた《霊》と同じ霊的存在だからであり、電気的な性質を持たない鉛の銃弾では当然殺せないのだが――。
「う……ッ」
ソロネが急にもだえ苦しみ始め、その場に倒れた。
「ソロネッ! 何をしたのです!?」
クロウリーの悲痛な叫び、そしてアーサーに銃口を向ける。
「霊的存在を殺せる銃がいくつかあってね。《黒き銃》には遠く及ばないが、霊的存在の実体を保てなくさせる改良を施してある」
「このまま消されるか――ッ!」
ソロネは背の車輪を回転させ魔力を高めると、剣から炎がほとばしった。
「むッ! ふむ……」
ソロネの煉獄の炎がアーサーを包む。しばらく燃えたのだが、恐ろしい事に無傷だった。
その白衣も燃えた様子もない。
「燃やし尽くせなかったようだな。やはり、殺しの罪悪感が邪魔をしたか?」
「バカな……」
ソロネは炎で殺せなかったことに愕然とさせられた。白衣も体も傷ついている様子がない。
そして、絶望してソロネはこの世界から消え去った。命が尽きた訳ではないが、敗北には違いない。
「言っただろう? エリクシル《銀の水》を飲んでいるし、肉体改造も施していると」
アーサーは消えたソロネをせせら笑う。そして、愕然としているクロウリーとブレットに顔を向け。
「さて、僕に銃を向けた罰として死んでもらおうか」
アーサーは歪な笑みを浮かべ銃口をクロウリーとブレットに向けるのだが。
「撃ち方、始め。一斉射!」
渋さを感じさせる男の声が聞こえて来た。それと同時に銃声が響く。
「ヤンか?」
「いいえ」
銃弾を避けたアーサーがいぶかしんだが、声の主はいいえとくびをよこにふり、
「初めまして、
声の主は、軍帽を被った精悍な男――博で、この参謀はアーサーの超人的な身体能力を見ても余裕の笑みを湛えていた。
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