第93話 絡繰兵哪吒、撃墜

「ならば!」

 頼が哪吒ナタクの前に出る。もはやこれは意地だった。

「エェイッ!」

 頼はしゃむにに雷槌を振るうが、哪吒は的確に槌を素手で受け止めてみせる。

 功夫遣いの技だけでなく、絡繰兵の堅牢さも兼ね備えているのは間違いないだろう。

「ワンオフで製造された絡繰兵なのだろうな……」

 フェイがひとりごちた。かつてナタクが身に着けていた宝貝まで持たされている、つまりは試作機なのだろう。

「……」

 凛といえば、哪吒と戦う三人の後方で待機していた。

 医師資格を持つ衛生兵メディックであるのだから、前線を支えるのが任務とはいえ、歯痒さはある。

 ――何か糸口が……。

 ゆえに精鋭の三人が苦戦させられているのを見て、力になりたいと思い。哪吒を見る事に集中する事にする。

地獄飛炎ディユーフェイイェン――」

「みなさん、ナタクが腕を変形させました!」

 哪吒の腕が砲に変形したのを見て凛が叫ぶ。哪吒の仕様は量産型と同じものを流用しているようだ。

「発射――」

「ぐううッ!」

 ナタクが火炎をフェイめがけて放射上に放つ、フェイはとっさに外套で防御し、炎剣を投げつけた。

「!?」

 それにより哪吒の腕が切断される、どうやら砲に変形させた事により脆くなっていたようだ。

 切断面からは血液を思わせるようなケーブルが露出している。

「好機ッ!」

 頼が捲土重来だと前に出て雷槌を打ち付ける。

「!?」

 やはり片腕だけで雷槌をいなすのは苦しいようで、徐々に状況は遺失叡智部隊に有利になっていく。

 しかし、哪吒も愚かではない。脚の車輪を起動させ、距離を放す。

「なんの!」

 三人が距離を詰めようとするのだが、哪吒が纏っている布から霧を放出し始め、そして哪吒の全身が赤熱化する。

「奥義実行、鳳凰――」

「奥義だとッ!?」

 フェイたちは色を失くす。絡繰兵が奥義まで会得しているとは思っていなかったからだ。

「まずい……!」

 仮に哪吒ほどの遣い手となれば、宝貝と合わさることでその奥義はすさまじいものとなるだろう。


 奥義を止めなければ、確実に全滅させられる。哪吒を破壊しなければならない。


「あッ!」

 凛が何かに気づいたのか慌てて声を出した。

「排熱が不十分な箇所が……!」

 哪吒の肩部にある排熱機構の一部が歪んでいるを見つけた。どうやら返り討ちに合った絡繰兵の一撃によるものだと思わされた。

「ならば!」

 頼が頼槌の機能を起動させ、哪吒への突撃を敢行する。 


「おおおおおッ!」

 

 頼が雷槌を排熱機構めがけて振りかぶった。

「機能低下――」

 排熱機構を破壊されたことで宝貝の放出する水でも冷やしきれず、熱が籠ってしまったのだ。

「……」

 哪吒が態勢を立て直し構え直す。しかし、もはや哪吒には力は残っていなかった。

「トドメだ!」

 無防備になった哪吒を陣とフェイの剣が貫いた。


「機能……停止――」


 貫かれた哪吒はそのまま消えさる、哪吒を斃したのだ。


 

 

 


 



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