第5話 彼女の過去と初めての人
彼女と付き合いだしてディスコにも何度か出掛けた。
平成生まれだと「クラブ」って名称で理解が出来るかな。
当時は名古屋にも「マハラジャ」と言う店があってね、お立ち台で派手な扇子を持ったギャルが踊っていた。
自分が通っていたディスコは「Pハウス」が一番のお気に入りだった。
その店に彼女と二度目に行った時のこと。
私の先輩二人と鉢合わせになったことがあって、その先輩がS子のことを上から下から舐めるように見つめていた。
男と言う生き物は自分の彼女をまるで所有物みたいに捉えて、心の中でこう叫ぶのだ。
「どうだ!俺の彼女は素敵だろう!!!」
過剰評価かもしれないがS子は「オードリー・ヘップバーン」に似ていた。
だから、オードリー似の彼女を自慢したくてしょうがないのだった。
私は『女性不信』に陥った時期があった。
それは過去に出会った女性の影響であろう。
母親を含めて周りの女性には良い印象が無かったからだ!
私の初めての相手は18歳の時に出会ったT枝さん。
彼女は年上でお喋りが上手で大人の雰囲気の人だった。
そんな異性を好きになるのは自然のことで、サークルで海水浴に出掛けたことがキッカケで親密な関係になった。
彼女と親密な関係を持ったが彼女には彼氏がいた。
そして複雑な人間関係に巻き込まれて、最後は誰も信じられなくなり自己嫌悪に陥った時期もあった。
でも、それは全て自己責任であるとも頭では理解していた。
しかし、S子と出会って女性に対する印象が変わった。
今の自分が存在するのは、S子と出会ったからだと言っても過言ではない。
ある日、いつものようにS子とファミレスへ出掛けた。
そして食事を楽しみ、支払いを済ませようとレジに並んだ時、いつもと違う雰囲気の彼女に私は気付いたんだ。
それは彼女の『初めての相手』が、すぐ傍に居たことを後から知ることになった。
その初めての相手は家庭教師をしていて、S子が中学生時代に彼女の実家で個人指導を受けていたらしい。
よくあるケースで大学生の男性を見て、大人の男性に魅力を感じたのだろう。
そして彼女は家庭教師の部屋で、初めての経験をしたのだ。
それはファミレスを出た後に、車中でS子から過去の話しを聞かされた。
『最初の相手なんて蚊に刺されたようなものだったよ!』
凄く私のことを気遣っての発言だろう。
でも彼女らしい発想と例え話しに、私は嬉しかった。
『ねえ?TETSUOは私の初めての人になってくれない?』
彼女はそう言って、肉体関係についても強く要求をされたことがあった。
昔の彼氏に出会ってからと言うもの、彼女は『初めての人』に拘りを持つようになった。
『そんな趣味はないから止めようよ』
私にとってはどうでもいいことであったが、彼女の気持ちは収まらず最後は要望通り、私は彼女の「初めての人」になった。
その行為とは抽象的に表現をすると、アブノーマルな肉体関係のことだ。
私はそんな事実行為よりも、彼女の純粋な気持ちだけで嬉しかったのに。
『これでTETSUOは、私の初めての人になったね♪』
人には誰しも拘りがあるものだ。
彼女の拘りは自己満足ではあるが、私を想う気持ちが強過ぎてアブノーマルな関係を求めたのだと理解をしていた。
私は私の事をこんなに愛おしく思ってくれる『初めての人』と、永遠に居ることが最大の拘りだった。
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