第3話 認められた二人の関係

『男らしさ』っていったい何だろう?

この問いにはいつもミスチルの「OVER」って曲を思い出す。

虚勢を張ることよりも相手のことを考えてあげること。

それが男らしさなんだって思うから。


S子と晴れて結ばれる日を迎えたけど試練はまだ続く!

そう!Y子ちゃんと友人Hへ、そのことを報告することだ!!!

そこは男らしく対応してあげたいしS子を悪者にする訳にはいかないけど、何をどう説明したって私達二人がヒールになることは当たり前だよ(汗)


いつも四人で集まるファミレスだったが、いつもと違うのは座ってる配置だった。

S子は私の隣の席に座り、そして二人は寄り添うような距離だった。

あれこれ長く説明するよりも、簡潔に私からこう告げた。


『俺からS子ちゃんへ付き合って欲しいと告げたんだ』


これは後から聞かされる話しだが、S子は私と付き合わない運命ならHとはもう会わない決意をしていた。

そして四人の関係を白紙にしようと心に決めていたんだ!


『私は初めからTETSUOさんのことしか見てなかったの』

S子はそう言って自分の気持ちを二人に打ち明けた。


S子も友人Y子ちゃんに気をつかって自分の本心を言えなかったし、私がS子と付き合う選択をするとは想定外だったようだ!

彼女が身を引くことで、私との関係も終わりにしようと思っていた矢先に、私から思わぬ告白を受けたんだと。


『でも俺はS子ちゃんのことが好きだし、何でもっと早くそのことを言ってくれなかったんだよ!』

S子から友人Hに話せるだけの余裕を与えなかったのは、H自身だとは分かっていた。

でも、それを今更言ってみたところで、Hが納得する答えなんて出すことは出来ないことも分かっていた。


『二人の関係を認めて欲しいなんて思ってないし、悪いのは全て俺だから』

私はファミレスで説明を聞く二人の反応も気になったが、S子が私の言動をどう思ってるかが気になっていた。


『なあ!Y子も黙ってないで何とか言えよ!!!』

友人HがY子ちゃんへ話を振った。

私がもう一つ気になっていたのはY子ちゃんの存在だった。

彼女は俯いた姿勢でずっと席に座ったまま何も発言をしなかった。


『・・・うん』

そう友人Hへ返事はするものの、Y子ちゃんが寡黙になる事は私も分かっていた。

でも、自分の気持ちに嘘を付いて、これ以上Y子ちゃんと一緒に居ることの方が、彼女自身の為にもならないと思っていた。

友人Hは腕組みをして貧乏ゆすりをしながら、苛立ちを隠せない態度をずっとしていた。


そして二人とも納得なんて出来ないだろうが、最後は私達の関係を認めてくれたのだ。

勿論、二人の関係を祝福するような雰囲気でも当然ない!!!




『卒業』と言う映画のラストシーンで、主人公のダスティン・ホフマンが、好きな異性の結婚式に乗り込んで花嫁を奪い、そして二人でバスに乗り込み駆け落ちをするシーンがあった!

正に略奪愛を象徴する衝撃のシーンだ。


それは『ストックホルム症候群』と呼ばれていて、特殊環境における連帯感がいつしか恋愛へと発展していくことなんだとか。

そして特殊環境で結ばれた男女の関係は、長続きしないとも言われていた。

正にS子と私は、特殊な人間関係によって結ばれた二人だった。


もっと幼稚な表現をすれば、友達が持っている玩具やお菓子を欲しがる子供の様に、友達の異性を求めた略奪行為に似ているのではないのかと?


いや!二人の関係は違う!!!


それを証明するかのようにS子と私の認められた二人の関係を、大切に育んで行こと私は心に誓ったのだ!!!

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