第307話 任せられるのは……
突然半魔だの鬼だの、術者だのと言い出した高耶。当然だが全く事情を知らない満と嶺が立ち上がった高耶を見上げ、口を空けてポカンとする。
彰彦はワクワクと目を輝かせており、俊哉は少しムッとしていた。
これに気付き、高耶は自身の額に手をやる。そして、最も事情をよく知る俊哉へ声をかけた。
「……俊哉、ちょい様子見て来るから……」
「はあ……分かってるよ……夕食には間に合うんだろうな?」
「今回は様子見だけにするから大丈夫だ。彰彦達と先に戻ってくれ」
「いいけどさ……」
どこまでも不満そうだが、子どものように駄々をこねたりはしない。
俊哉としては、せっかく旅行に来て居るのだから、仕事を忘れて楽しんで欲しかったというのは高耶も分かっている。
だから、高耶も伝えておく。
「今回は旅行で来てるんだ。困ってる人達を保護して、後は後日ってことにするよ」
「……それなら、まあ……分かった」
「悪いな……」
「……おう」
頼りにしているというのが伝わったのだろう。納得もしてくれたようだ。
そして、一応当事者となる女性店員にも断っておく。
「さすがに、すぐに鬼をどうこうすることはできません。なので、あなた方を保護させていただき、里と土地神の方は改めて対応します。上とも相談しないといけませんので」
「わ、分かりました……ただその……保護というのは……」
彼女が不安に思っているのは、保護ということ。
自分たちの存在は術者達であっても、受け入れ難いものだと思っているため、どのような扱いを受けるのかと心配なのだろう。
「大陸より、こちらはまだ対応が優しいと分かっておられるから、ここに里を作られたのでしょう。そう心配されずとも、時代は変わっていますし、上も寛容な方です」
「っ……ですが……」
閉鎖的な暮らしをしていた者達にとっては、いつまで経っても迫害され、理解されないものと思っている。
だが、この国だけでなく、大陸の
たがら、彼女は一番気掛かりなことを口にした。
「その……私は、悪魔の力を少し受け継いでいまして……」
俯く女性店員。悪魔と聞くだけで、悪い存在だと思われると思っているのだろう。しかし、高耶は苦笑しただけ。
「確かに、未だに悪魔が悪だと決め付ける
この喚びかけに応えて、高耶のと女性の間に、その子どもは現れた。
《はいっ》
悪魔と天使から生まれた瑪瑙は、最近は優希達とも遊べるくらい、力の制御が上手くなった。よって、ここに呼んでも、結界の中の者達には気付かれないだろう。
紫がかった黒い大きな瞳。ほんのりと赤い頬。誰が見ても可愛らしい三歳児頃の幼児の姿だ。
瑪瑙には、悪魔と天使の魅了の力が混在しており、不安そうだった女性店員も少し興奮した様子になった。
「この子は悪魔と天使、両方の力を持っています」
「っ……こんな……っ、こんな子が……っ、この子はあなたと……?」
「契約しています。この子が生まれた時、あちらの
「っ……本当に……っ」
「はい」
「っ、ああっ……ありがとうございますっ。お願いしますっ」
「はい」
涙を流す女性を高耶と瑪瑙で宥めながら、茶屋の奥へと向かう。
残された俊哉達は、それぞれ複雑そうな表情をしていた。
「……え?」
「え? 今の何?」
「あの子ども、どっから出て来た?」
「天使? 悪魔? 彰彦の影響か!?」
満と嶺が大混乱している。
「ふっ。さすがは、高耶だ。天使だけではないとはっ……最強ではないかっ」
こうして彰彦は興奮すると分かっているから、瑶迦の所にも連れて行くのを躊躇う。
「ったく、ホント、仕事人間なんだからさ〜。有能なのも問題だよな〜」
俊哉は不貞腐れながら、残りの団子を腹に納めていた。
すると、満と嶺が事情を知っていると見て、俊哉に詰め寄った。
「「俊哉! どういうことだ!?」」
「うおっ」
それから、俊哉は高耶の仕事のことをポツポツと話す。これにより、修学旅行になぜ高耶が来なかったのか、付き合いが悪かったのは何故かを知り、密かに二人で反省していた。
四人が山を降りる頃には、高耶は、焔泉に電話し、対応をお願いしていた。
そして、充雪に改めて調べてもらうことにしたのだ。
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読んでくださりありがとうございます◎
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