第20話 エルフ族長会議
私、エルフの少女エーネは首をひねっていた。
うーん。何でこうなった?
いや、大賢者に会いたいとはライオネルに言っておいたけどさ、念頭にあったのはおじさんであって、何故に我らがエルフの女大賢者のサリュート様に、面会する羽目になどなったのだろうか?
ワケガワカラナイワー?
何かもう、色々なことで私の「未来設計図」が崩壊していく。
「穏やかな日常を一生過ごそう計画」も早速、破綻しちゃったし、ぐぬぬ、何故だ、何故なのだ、何かがおかしい。
あう、お花畑が・・・お花畑が・・・お花畑が・・・私を誘って来る。
おいでー、おいでー、おいでー、幸せになれるよーって。
ここに来ちゃいなよー、とっても楽になれるよーって。
ああ、まだだ。まだ、私はあきらめてはいないのだ。
まだ、私の輝かしい「未来設計図」をあきらめていない。
「穏やかな日常を一生過ごそう計画」も何とか軌道修正して、出来るだけ元の軌道に戻してやるぞ。まだ何とかなるはずだ。はずだし・・・。
しかし・・・。
信じられる?
さっきまでエルフの族長会議だったんだぜ。
レマールの里長や、何人かの証言をする里人と共に(特に見張り役とか、直接エルフ狩り部隊の進攻やレッドドラゴンを目撃したエルフ達、そして当然ライオネルを目撃したエルフ達でもあるけど)私はオブザーバーとして参加。
なのに・・・族長達の視線が痛い。
まあ、今回の件に大賢者を巻き込んでいなければ、レマールの里のエルフは全員狩られて終わりだったろうし。
何でもさらに別の隠れ里まで襲う計画もあったという話も漏れ伝わって来る。
本当なら、もう言葉も無い話だよ。
私達を物扱いだよね。ただの物ですら、もう少し大事にされるかも。
本当にひどい話。
で、私に対して「わざわざ大賢者を巻き込んでくれてありがとう」という見識らしいのだが。
そこから超えて、なぜか族長達の私への扱いが、レマールの里の次期里長、もしくは次期次期里長位の扱い。
ならないから。私の「未来設計図」にそんな予定は書きこまれていないから。
いやだ、そんな面倒くさそうで、重い責任だけ背負わされそうなもの。
私はもっと自由が欲しいし。
そもそも私は、もう田舎の隠れ里のただのエルフの一少女だよ。
それ以上でも、それ以下でもないよ。
皆、何を勘違いしているのだ?
たまたま、おじさんという貧乏くじを引いてしまっただけの話じゃないか。
ええ、おじさんには、もう感謝していますよ。本当に。
嘘じゃないんだ。感謝して、感謝して、感謝してもし足りないぐらい感謝しているんだけどさ・・・。
でも、エルフにあるまじき私の心の中の呪いのリストの燦然と輝く永久筆頭「おじさん」の座はもう不動中の不動なのだよ。
一位、おじさん。二位、ライオネル。三位、エルフ狩りに来た馬鹿ども。
ああ、自分でもちょっとおかしいのでは無いかと思う順位なのだが。
自分の心に嘘はつけない。
さらに一位のおじさんと二位のライオネルが結構、競い合ってはいる。
いつかおじさんの永久筆頭の座を、怒涛の追い上げを見せたライオネルが奪う日も来るのかも知れない。
いや、二度とライオネルと会うことは無いだろうから、そんな心配はいらないはずなのだが・・・嫌な予感が抜けない。
ああ、自分の直感を恨めしく思う日が来るとは夢にも思わなかったよ。
このひしひし感は何なのだ!
嫌だ、私は穏やかな日常を一生過ごすのだ。意地でも過ごすのだ!
それが私の未来なのだ。
確定した未来なのだ!
ああ、でもエルフの族長達、さすがに凄かったな。
威厳があり、カリスマ性があり、才能にあふれ、経験値は半端なさそうで。
それぞれが族や里ごとの特徴を持ち、さすが一門の長達という感じ。
その族長達に、次期里長張りの視線を浴びながら会議に参加って、針のむしろだわ。
あれは拷問ですか。
驚いたのは、世界賢者協会から、ライオネルの目から見た、エルフ狩りの連中の魔砲の砲撃やレッドドラゴンなんかが魔結晶に記録された音声無しの映像で提供されて来たことだ。
いやー、再生された時、あせりましたよ。私の何かがバレるんじゃないかと思ってヒヤヒヤでした。
映像は、嘘は一つも無いんだが、まあまあ都合のよい所だけの切り貼りみたいだった。
おかげで助かりもしたのだが、心臓に悪い。
ちなみにあの小さな画面に映っていた映像は一つも無し。
大体、映像を記憶し再生できる魔結晶の魔道具って(動力は魔石だけど)貴重品もよいとこだったはずだが、何かレマールの里のささやかな日常の常識が通用しない。
さすがエルフ族長会議に世界賢者協会か・・・。
縁が無いにも程があるはずなのだが、ふと気が付くと「何で私ここにいるのかな?」状態。
いつ訪れる私の平穏。
懐かしの平穏よ、もう恋人みたいだぞ。
今は、お互いに会えない遠距離恋愛中か?
頼むから平穏よ、永遠の見果てぬ恋人にならないでおくれよ。
本当に切に頼むから・・・。
で、あれこれ発言を求められて、答えもし、ぐったり疲れて族長会議が終了。
聞いててよいのかの真っ青レベルの高度な政治的なお話まで族長間で飛び交い、ホント何故私はここにいる?
ああ、終わった終わったと喜んでいたら。
すっと、あのエルフの青年賢者のトリューテが近づいて来て。
「この後、世界賢者協会エルフ塔にて、エルフの女大賢者サリュートとの面談が用意されています。どうぞおいで下さい」と爆弾を投げ込まれました。
ええ、いそいそと付いて行きましたよ。拒否権無さそうなので。従順に。
ここで我らエルフの至宝、女大賢者様のお誘いを断れるだけの勇気は私には無い。
よってたかって私に何だよ。
悲しい・・・。
でも、この後のエルフの女大賢者サリュート様という美しく麗しい本当にエルフの至宝のような女性との会話で。
あんな世界の秘密や世界規模の未来の話を聞かされる羽目になるとは、夢の夢の夢にも思わなかったし。
「あなたはそれだけの存在を持っている。あなたには資格がある。ここまでたどり着いたこともその証明。いや、感じるのよ、あなたを。そして未来を」。
などという言葉を聞く羽目になるとも思ってもみなかったよ。
ただのエルフの一少女の私が・・・。
何もかもがさぁ、おかしいよ?もう!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます