夏だ!海だ!
さて、季節は夏。
僕らはフォールド家の領地の町にいた。
「いやー、ここの海はとっても綺麗ですなぁ」
「観光をメインにした町だからですよ。定期的に清掃されてますし、海の汚染なんかに繋がる施設関係は内陸にありますから」
「いかにもバカンスリゾート!って感じね」
「景観を損なわないように家の建築に基準を設けたりしてますから。ここまで徹底してるのはうちだけでしょうね」
六人乗りの馬車には男三人、女三人が乗っている。
まずは僕。向かい側にはステラ、キャロルさん、アヤメさん。
僕の横にはサトウ先生、そして
「ふん。なんだ人を睨みつけて」
なんで呼ばれたのかわからないクソ王子。
「いや、別に」
誘拐事件に直接関与はしていないけど、色々な疑いがかかっていたルークスを連れてきたくは無かったが、オヤジからの指示なので割り切ろう。
町の歴史や観光地をステラと僕で紹介しながらしばらく進むと、目的地のビーチについた。
周囲には屋敷が一つあるだけで、他に人はいない。何故ならここがフォールド家の別荘とプライベートビーチだからだ。
公爵家ともなればあちらこちらに別荘があるが、ここは特にお気に入りの場所だ。
「じゃ、また着替えてビーチで」
別荘に荷物を運んで、海で泳ぐために水着に着替える。
僕とルークスは主な特徴もない普通の海水パンツだったのだが、サトウ先生だけはフンドシだった。
「男といえばフンドシでしょうよ」
自信満々にそう言われたけど、僕ら二人は絶対に真似したくないなと思った。黒髪で日本人に近いサトウ先生ならいいけど、顔立ちが似てる銀髪の野郎二人もフンドシとかシュール過ぎる。
「さて、女性陣が来るまで時間がかかりますし、パラソルとかイスの準備をしましょうか」
「何故、王族たる俺がそんなことをしないといけない。屋敷の使用人にでも任せればいいだろ」
「残念ながら、フォールド家は出来ることはなるべく自分でする方針なので。それに屋敷のメイドさんは二人だけで、夕食の用意を頼んでいる。これくらいは自分でしろ」
立場は互角。血縁関係では僕が叔父だが、歳はルークスが上。それに、リリアの件があって僕の中でルークスの好感度は最低値を更新。よって、遠慮しないしタメ口。
「……ふん。ならさっさと案内しろ」
そう言ってバカ王子はそそくさと移動した。
意外にあっさり折れたな。どういう心境の変化だ?
「なるほどなるほど。そういうことですか」
屋敷の倉庫に荷物を取りに行くルークスを見て、うんうんと頷くサトウ先生。
「何がなるほどなんですか?」
「アインくん。人ってのは案外複雑な生き物だってことでさぁ。一概に決めつけてちゃいけませんで」
……どゆこと?
それから三人で準備をしていると、遅れて女性陣が出てきた。
「ごめんなさい。ちょっと時間がかかってしまったわ」
「HAHAHA、全然待ってないでステラはん」
やってきたトップバッターはビーチ舞い降りたヴィーナス。僕の嫁! 嫁って言っちゃったキャー‼︎
「アインくん、テンション上がりすぎてナンバの訛りになってるでさぁ」
いや、だって水着だよ?タダでさえ可愛いステラが大胆に肌を露出してんだよ?
普段は長いスカートとかストッキングで見えない生足が惜しげもなく晒されている。水着はフリル付きの白ビキニ。程よい形と大きさの美しいバストにくびれた腰回り……女神ですかあなた様は?
「もう、そんなにジロジロみないでよアイン」
もじもじと恥ずかしがるステラの姿、バッチリと脳内メモリーに焼き付けました。ご馳走です。
「いや〜、ステラ嬢は何を着ても似合いやますなぁ」
「サトウ先生。人の婚約者に手を出さないで下さいよ」
「心配しなくてもいいでさぁ。ウチのはインパクト凄いですからさぁ」
余裕のあるサトウ先生。その視線の先には……
「すまない。待たせてしまった」
スイカが二つやってきた。
「どうでさぁ?」
「おぉ、デカいな」
男性陣の視線はキャロルさんのある一点に絞られた。水着はパレオタイプで色は彼女の特徴的な髪色と同じ青色。騎士になるべく鍛えているので、スタイルも申し分ないんだけど……。その、胸がデカい。
かつてリリアの設定を考えた時にかなり大きめにしたのだが、キャロルさんのそれは一回り以上豊かだ。
「王子殿、あんまりジロジロ見ないでやってくだせぇ。あと、……手を出したら○す」
「ヒィッ⁉︎」
悲しいかな。男としての本能にしたがったルークスはサトウ先生の殺気に襲われる。あんなにまじまじと見てたら彼氏的にはいい気はしないわな。
というかバカ王子。目が野獣と同じだぞ。もっとこうさり気なく見る感じで、
「アイン。キャロルさんを見過ぎよ」
「あぁ、姉様。その関節はそっちに曲がらないから!ごめんなさい‼︎」
綺麗なサブミッション頂きました。最近はキャロルさんやサトウ先生から護身術を習ってるステラだけど、筋がいいのか物凄く痛い。
「まったく、どうして男共はこうおっぱい星人なのかね」
最後に来たのはアヤメさん。大胆な赤のマイクロビキニで登場だった。
「おい、アヤメ。流石にそれは……」
「えっと、アヤメさん?」
ドヤ顔をしながらアヤメさんだが、場の空気は微妙な感じになった。
それもそのはず、
「おい、芋女。そのパッドの量は反則だろ」
このバカ王子! みんなが空気読むか悩んでるところになんというデリカシー無い発言をしているんだ。
ただ、薄着の私服でも凹凸が無かった人が水着になった途端巨乳になるとかあり得ない。
着痩せのレベルが、次元が違う。
「はぁ? パッドとか何言ってるのかわからないんだけど。元から私はこんな風に(ポトッ)」
アヤメさんが大袈裟に重たそうに胸を持ち上げた瞬間、肌色の何かが砂浜に落ちた。
「………………………水着、変えてくる」
「「「「「ど、どうぞ」」」」」
夏のバカンスはまだ始まったばかりだ。
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