双子の魔女と秘事と

三題噺 : 「朝日の注ぐ窓辺」「口紅」「双子の魔法使い(魔女)」



「ハァーイ」

「ハァーイィ」


朝日のそそぐ窓辺で甲高いハーモニーを奏でたのは、全く同じ顔の少女2人。

対して俺は、ベッドの中で固まっていた。

なんだこれ、どういう状況?


「あっ、その顔は昨日のこと忘れたんですかぁー?」

「あーんなことやこーんなこともしたのにぃー?」


猫の目の様な瞳がキラキラ光り、色違いの口紅を引いた口端が吊り上がる。

いや待て誤解だいや昨日なにしてたんだっけ記憶がないぞまずいまずいまずい。


「あんなの初めてでしたぁー」

「私たちの初めてを捧げちゃいましたぁー」


全く同じ動きで絵に描いたような恥じらいポーズを披露する二人。

あ、可愛い……じゃなくて!

モヤのかかった頭を覚ましたくてベッドから起き上がろうとし……それは失敗した。


「いてぇ!!!」


双子だ、そうだ俺は昨日この双子の魔法使いの元へ来たのだ。

俺はひどい怪我を負っていたはず。

昨日、俺はこの森にあるというマンドラゴラを採りに来たんだ。高く売れるだろうからな。

しかしたどり着く前に怪鳥に襲われた。それほど大きくはなかったが、空飛ぶ相手に苦戦して一方的にやられてしまった。

なんとか逃げ出したものの、大量に出血していたためだろうか、街の方向すらわからなくなっていた。

このまま迷って死ぬのか、そう思い始めた時にこの家を見つけたのだ。


「ダメですよぉ〜大人しくしてなきゃー」

「せっかく魔法で傷口ふさいだんですよぉ」

「私達魔法で手当てしたのはじめてでぇ」

「ちゃんと出来てないかもですから、寝てないとー」


同じ顔がにっこり笑う。


「怪我させてごめんなさぁい」

「人避けだけしてくれれば良かったんですけどぉ」

「加減間違えちゃったみたいですぅー」

「きつく叱っておきますねぇー」


まさか、あの怪鳥は……。


「たぶん、お兄さんで練習すれば手当てもすぐ上手くなりますぅ」

「なりますぅー」

「元気になったら私達と色々しましょうー」

「あーんなことやこーんなことですぅー」


双子の双眸が細められた。近づいてきた双子が、左右から俺の耳元に顔を寄せる。


「お兄さん、いいカラダしてますからぁ」

「きっととっても気持ちいいと思いますぅ」


ふうっと耳にかかった息で背筋が粟立ち、同時に傷の痛みで呻く。艶のある声に頭が真っ白になりかけた。

ままま待て待て待てそんなつもりなのかいや駄目だろいや可愛いな!じゃない!


「まずはぁ、ちゃんと治しましょー」

「魔法いっぱい練習しますからぁー」

「「ねーーー」」



◆ ◇ ◆



「ッハァーーー!! 気持ちいいッ!!」


俺の歓喜の声に、双子の笑い声が重なる。

その四つの瞳をキラキラさせて、2人はダンスでも踊っているかの様に身体をしならせた。


「私達もですぅー」

「やっぱり最高ですぅー」


ああ、本当にそうだ。こんなに可愛い魔法使いと、畑仕事ができるなんてな!

マンドラゴラ栽培、最高かよ。


ザクザクと双子が鍬で畑を耕す。その手さばきはもうプロの農家だ。

マンドラゴラは手作業で魔力を土へ染み込ませる事でよく育つ。もう2度の収穫を経た俺は、双子のいい相棒になっていると自負している。

俺、真っ当に生きるよ神様。


「さぁ、もうひと勝負しようぜ!」

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