赤い闇
三題噺:「神様」「迷信」「楽園」
目の前の全てが燃えている。
夜の闇。その闇を赤く染め抜く炎。
「どうして……」
揺らめく赤い闇が、この世の楽園と謳われた
その豊かだった緑も、整った街並みも、明日を信じていた人々の夢も。
山が火を吹くなんて、迷信だと誰もが思っていた。
だってそれはここじゃなく、どこか遠くの大陸の話で。こことは関係のないことだったから。
火を吹く山は、煙が出ているのだと言われていたから。
「神様……助けて……!」
どうしようもなかった。
人の力は弱い。わたしはこんなにも無力だ。何も出来ない。何も!
熱風が肌を焼く。
「神は誰も救わねぇよ」
わたしの肩を、大きな手が叩いた。
振り返らなくても、誰かはわかる。
「神なんてのは、いないか、いても黙って見てるだけさ」
赤い闇が踊る。
そうだ、神様がいるなら、どうしてこんなことをする?
誰が、罰せられるようなことをした?
それとも生贄でも欲しているの?
「人は、自らを救うしかねぇんだよ」
今ここに神様がいないなら。
何も、誰も救ってくれないなら。
「……わかった。神様に祈るのはもうやめるわ」
この光景を忘れない。
この、全てを覆い尽くし、飲み込んだ赤い闇を。
わたしは、わたしたちは自らを救う。何も救わない神なんか捨てて。
「行くぞ」
その声に頷き、踵を返す。
さようなら、迷信で滅んだ、地上の楽園だったわたしの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます