おかしな2人の青春

三題噺:「春」「橋の下」「おかしな山田くん」


「ねぇ、そこのおかしな山田くん」

「おかしなって何!? おかしなって!」

「え、だってこれやる時点でまともじゃないでしょ?」


わたしの眼下。

橋の下にいる山田くんと目が合う。

申し訳ない程度に流れる川は、今日も細い。


「春ちゃん直球で酷いよね」

「失礼ね、自分のおかしさを棚に上げるのやめてよね」


山田くんは変だ。おかしい。


「いや、春ちゃんもなかなかだと思うけど?」


山田くんはそう言って、笑った。

その場で右手を大きく上げて、跪く。


「姫、私めがお側で勝手に姫を守ることをお許しください」


芝居ががった、歯の浮く台詞。

ううんこれは芝居。わたしが台本を書いた芝居。


「仕方ないわね」


そこにいるのは、私だけを守る騎士ヤーマ・ダー。

私は陰謀渦巻く王家から出奔しようとするハル王女。


「許します、最期の時まで守るように」

「はっ、有り難き幸せ!」


あぁ、わたしたちはおかしいんだ。

二人だけの世界が、現実に重なって見えてるんだから。

ここはバルコニーで。

わたしたちはこれから一緒に逃げるんだ。そして、最期の時まで……。



END

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