第5話

2020年2月19日、私は北九州市小倉北区にある某法律事務所を訪れた。


「モニターのアルバイト被害の件で来られたNさんですね。弁護士のFです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「では、さっそく本題に入るけど、Mには具体的になんて言われたの」

どうやら、佐賀で逮捕された犯人はMというらしい。私は続けた。

「モニターのアルバイトをしたいと言われて、時間があったので了承しました」

「それで?」

「食堂が入っている建物に移動した後、いろいろ個人情報聞かれました」

「生年月日とか住所とかですかね」

「あと、運転免許証を写真で取られましたね」

「他には」

「口座番号も聞かれました」

「まあ、今回の件で反省されているとは思いますが、親切そうな物腰の柔らかい人であっても、見知らぬ人ですから迂闊に個人情報を話すのはいかがと思いますね」

「はい。十分反省しています。今思えば不審な点はいくらでもありましたから」

その後、諸手続きをした後、今後の予定確認をしてから弁護士事務所を後にした。


弁護士事務所を出た後、私は八幡東署のJという刑事に連絡を入れた。弁護士事務所に行くということもあり、同日の午後に八幡東署の刑事を連れて実況見分に行くことになっていた。

「N君、弁護士先生には会ったんかね」

「はい、先ほど終わりました」

「じゃあ、午後1時に八幡東署まで来もらえるね」

「はい、大丈夫です」

「じゃあ、午後1時でお待ちしてますんで」

「わかりました」


電話を切ったのち、時間潰しと昼食を兼ねて黒崎へと出た。黒崎は北九州市の副都心である。しかし、最近は地盤沈下が激しく、大して何もない。

昼食をとり、西鉄黒崎バスセンターからバスに乗って八幡東署へと向かった。しかし、バスに乗った直後、八幡東署から電話が来た。

「ごめん、N君。さっき、別の事件が発生した県、今日は対応できなくなったんよ」

「じゃあ、次はいつ大丈夫ですか」

「明日とか出てこれるかね。3時間もかからんと思うけん」

「あ~、大丈夫ですよ」

「じゃあ、明日の午後1時でお願いできるかね」

「はい」

「ごめんね、お手数おかけします。では、失礼します」


結局、別の事件が入ったため、実況見分は明日に先送りとなった。私は乗車していた戸畑駅行きで戸畑駅まで移動し、JRで行橋まで帰宅した。


翌日、午後1時に私は八幡東署刑事課を訪れた。そして、J刑事の現場見分に同行し、Mから声を掛けられた場所、実際にアンケートを取られた大学構内、その翌日に会ったスーパーなどを案内した。


「じゃあ、一応これで終わりましたんで、もし何かあれば、遠慮なく電話してきてください」

「わかりました」

「では、これにて失礼します」

私はJ刑事と別れた後、JRで行橋に戻った。


その後は特に何も起らなかったが、3月に入ると再び事態は動いたのである。

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