第4話

私は、バイトから帰宅後、母親にこれまでのいきさつを話した。


「あんたも余計なことしてくれるね」

「ごめんなさい」

「でも、起きたことはどうにもならないから、明日朝一で銀行と警察に連絡しなさい」

「わかった」


私はその日、普段よりも約1時間早く就寝したものの、なかなか寝つけなかった。



翌朝、8時半に起床した。丁度、事態を聞きつけた父親がわざわざ仕事を休んで帰ってきたところだった。

「おまえ、ほんと余計なことしかしてくれんな」

「ごめんなさい」

「9時になったらすぐ銀行に連絡しろよ」

「わかってる」


9時ちょうどに銀行へ連絡をし、口座を一切操作できないようにしてもらった。その後、父親の運転で私は八幡東署へと向かった。



八幡東署では、刑事課に案内された。すでに、同じ大学で複数名が同様の被害を警察に訴えており、その事件を担当しているJという刑事が対応してくれた。事情を事細かく話した後、犯人から受け取った領収書を参考資料として警察に提出した。


一通りの聴取が終わったところで、警察から告げられた。

「一応、犯人自体は1月に佐賀県で逮捕されてましてね、もしかしたら連絡来ていたかもしれませんけどね。あと、返済については民事になりますのでね、警察ではどうしようもできません。他に被害受けた子が、同じ弁護士先生の所行っているので、そちらに行かれた方がいいと思います。あと、消費生活センターにも行かれたらいいと思います」

わかりました、と伝えて八幡東署を後にし、消費生活センターに向かった。


車での移動中、父が言った。

「犯人佐賀で逮捕されてたってよ」

「さっき警察の人も言ってた」

「佐賀県警から電話来てたりしたん」

「なんか来てた気がする」

「帰ったら電話しろよ、家の電話から」

「わかった」


八幡東署から車で約15分、北九州市消費生活センターに着いたはいいが、居住地が違ったため、すぐ追い出されそうになった。

「ここは、北九州市の消費生活センターなので、行橋市の消費生活センターに行かれてください」

ここで父が切り出した。

「あの、モニターのアルバイト被害の件で、八幡東署の方から、こちらに行くように言われたんですよ」

「あ、モニターのアルバイト被害の方なんですね。では、そちらに座ってください」

居住地が異なるということで追い出されかけたが、父の説明のお陰で対応してもらえることになった。

「では、1月6日に大学でモニターのアルバイトをされたら、こうなっていたということですね」

「そうですね。おそらく、登録と言い聞かせて、勝手に契約していたのだと思います」

「昨日、新興ファイナンスさんの方から電話が来たんですよね」

「そうですね。バイト先に電話が来たので、それを折り返し電話した感じです」

「その電話番号、まだ残っていますか」

「はい、こちらです」

そして、消費生活センターの所員はそこに電話を掛けた。一時して、電話に代わるように言われ、電話を代わった。

「昨日お伝えした通り、私自身は契約していませんし、そもそも実家住まいの学生なので消費者金融から借金するほどお金に困っていない」

これ以外にもいろいろ言ったが、正直上の一文以外は何を言ったか覚えていない。しかし、電話の後、消費生活センターの方から弁護士の先生を紹介してもらい、アポイントまで取ってくださり、来週の水曜日、2月19日に弁護士の下を訪れることになった。


消費生活センターからの帰り、父が言った。

「いいか、2度と口座番号とか住所とか個人情報バラしたりするなよ。今回、大変な目に遭っているんだから、同じ過ちは起こさないでくれよ」

「うん、気を付ける。次、街頭アンケートとかで個人情報聞かれたら即警察に連絡するくらいの気持ちでいる」

「ホント、それくらいの気持ちでいてくれな困るよ、うちはただでさえ生活キツいんだから」

「うん、わかってる」

私と父を乗せた車は、自宅に向かって走り続けた。


自宅に帰り着いたのち、私は自宅の電話機から佐賀県警察に電話し、対応した刑事課の刑事にモニターのアルバイト被害の件について、これまでのいきさつを伝えた。佐賀県警の刑事はすぐ折返しの電話をしてほしかったと前置きしつつ、既に捜査自体は終わっており、今後は福岡県警の方で捜査されることになる、と伝えられた。電話を切った後、一気に緊張感が抜けた気がした。

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