第3話

2月8日ごろ、自宅に新興ファイナンスから50万円の借金返済の督促状が届いたが、身に覚えのない借金であったため、放置していた。


しかし、2月12日に事態は動いた。バイト先のゲームセンターに私宛で電話が届いたのである。社員から「電話した方がいいんじゃないのかな」と言われ、その番号に電話を折り返した。すると、担当者から衝撃の事実が告げられた。


「わたくし、新興ファイナンスのKと申します。Nさん、いつになったら借金の返済をされるのでしょうか。」

「はぁ?借金って何のことですか」

「Nさん、とぼけないでください。1月6日に50万円の借金しているじゃないですか」

私は、1月6日と言われて、あのアルバイトのことを思い出した。例の中年男が私のスマホでどこかに電話をしていたのは覚えていた。私は、そのことを話した。話は理解してくれたようだが、それでも強い圧力をかけるように返済を迫ってきた。

「個人情報をたくさん言ってしまったのは、Nさんの注意不足ですし、お気の毒だとは思います。しかし、我々もあなた名義で借金されているので、あなたから返済してもらうしかないのです。明後日まで待ちますので、早急に先月分を振り込んでください」

そう言って相手は電話を切った。確かに個人情報を提供してしまった事自体は私の不注意であり、絶対にしてはいけないことである。とはいえ、警察にその事を伝えていますか、などは聞くことなく一方的に借金返済を迫って終わったのである。私はすぐそばに居た社員に相談した。

「なんか、名義勝手に使って借金背負わされたみたいです」

「警察に電話した方がいいんじゃない?今からでも電話した方がいいよ」

「とりあえず、休憩中に電話します」

そして、一旦ホールでバイトの仕事をした。



休憩中、私は最寄りの行橋警察署に連絡した。

「はい、行橋警察署です」

「すみません、身に覚えのない借金を背負わされてしまいまして」

そのまま電話で警察官に事情を話したが、警察官からの返答はあっけないものであった。

「う~ん、まず、A大学が管轄外なので、管轄の八幡東署に明日にでも出向いた方がよいと思います」

「やはり、管轄じゃないので無理ですか」

「そうですね。管轄外なので、話を聞くことしかできませんね。一応、八幡東署にも今聞いた内容は相談履歴で残しておきますので、明日にでもそちらに連絡するなりしてもらった方がいいですね」

「わかりました」

電話を切って思った。たしかに、管轄外ではどうにもならない。私はその後、社員に電話で話した内容と、翌日に八幡東署に行くことを伝えた。まずは、帰宅してから親にも報告しないといけない。怒られるとは思うが。

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