ルシファル〜追放された悪魔〜

さしみ/鱵

第一話 アクマ?熊の親戚か?

やっと外気圏か……―――それにしても何故この私が・・・人間界などに落とされなければいけないのだ。


天界を追放されたのはまだ分かるが、よりにもよって元神であった私が地球などと……あっ。これはやばいなっ 教父に飲まされた超魔薬が今頃回って……


日曜の夕方……河川敷である一人の男が不良に囲まれていた。

名は、朝比奈あさひな 龍桜りゅうおう

この春、ヤクザも避けて通る不良学校

黒新こくしん高等学校に入学した。


「―――何奴も此奴も喧嘩になったら逃げやがる。使えねぇ」


「仲間に裏切られたな?中学で無敵の暴走龍と呼ばれてたてめぇでも流石に30人相手は負ける気しかしねぇよなぁ?ヒヒヒッ」


「御託はいいからかかって来いよモブ共ぉ!!」

辺りに響く大声で叱咤すると、

「あぁぁ!?お前らぶち殺せ〜!!」

怒号が飛び交い、1体30と言う反則極まりない殴り合いの喧嘩が始まった。

しかし、喧嘩も20分程で蹴りが着いた

「てめ……バケモンかよ……」

そう言い残し、膝から崩れ落ちたモブ不良に続き、俺も床に座り込んだ。

「こんなもんかよ黒新高校。幹部クラス連れて来いよ三下」


辺りを見渡すと先程まで怒号を飛ばしていた不良達は地面と睨めっこをしているかの如く額を下にし、倒れていた。


「とは言っても……流石に疲れた!……30人相手とか今までした事ねぇよ……取り絶えず家帰って風呂入るかぁ〜。」


土手に無造作に置かれた土埃で汚れた自分の学ランを着て、カバン片手に河川敷を出る。

漸く家にまで着きドアをゆっくりと開け、親にバレないように忍び足で風呂場へと向かう。


制服を脱ぎシャワーを浴び、裸のまま急いで自分の部屋がある2階に

「お〜寒っ」と身体を震わせながら上がる。

そして、ジャージに着替え、何事も無かったかのように親の居る1階に降りる。

「かーちゃん腹減った〜」


「あら、居たの!?全然気づかなかったわ。ご飯ならもう出来ますよ。」

俺のかーちゃんは年齢と顔が合わない。

一緒に歩いていると良くカップルと間違われる程だ。自分の親に言うのも何だが、美人系だと思う。

「あれ?親父は?」


「お父さんならもう帰って来てる頃じゃないかしら?」

俺の親父は普通の会社員だが、筋トレが趣味で体育会系だ。

「ほら、噂をすれば玄関からお父さんの声がするわよ。」


「ただいま〜!」


「いつ聞いてもうるせぇ声だな親父は。」


「生意気になったもんだな〜龍桜も。だがまぁ高校生はそんくらいないと逆に心配だからな。」


「だぁぁぁ!頭撫でんな!」

内心は嬉しいのだが、照れ隠しで手を払いのける。

俺の親父は身長が、186cm程あるので、177cmの俺の頭なんて軽々と撫でられるのだ。

「ふふふ。お父さん、もうお風呂湧いてるから先に入ってちょうだい。」


「仕事から帰った後の風呂は格別だからな〜。風呂上がりのビールも最高だぞ〜龍桜。一緒飲むか?」


「ナチュラルに未成年相手にビール誘うな!」


「ハハハ。龍桜、先飯食っとけ。」


「おぅ。」

いつの間にかリビングのテーブルには飯が並んでいた。

「しゃっ!食うぞ〜腹減った〜」

ダイニングチェアに腰をかけ、一気に飯口に詰める。

「ふふ。むせない様にね?」

笑顔で心配をしてくれる母をよそに、

「おぅ!」

とだけ、軽く返事をし、龍桜は飯を3杯おかわりした。

「ふ〜食った食った〜。」

かーちゃんの飯は何処の店よりも美味い。

「んじゃもう明日学校初日だし寝るわ〜」

部屋に戻ろうとすると、親父が風呂から出て来て一言「龍桜、喧嘩は男ならとことんやれ。だが犯罪は犯すなよ?」と優しい声で言ってくれた。

「わーってるって!じゃおやすみ」


「あぁ。おやすみ。」


「おやすみ龍ちゃん。」

そうだった、別に喧嘩して帰っても別にこそこそする必要はねぇのか。

親父も昔は喧嘩三昧だったのかもなぁ。

1人しみじみ思っていると、俺の部屋の隣がガチャと開いた。

「あ?帰ってたのか龍桜。帰ったらねーちゃんに一言ただいまって言おうねぇ?」

そうだった。家には姉貴が居たんだった……。姉貴にはいつまで経っても逆らえない。

「って。いででででで!!頭グリグリすんな!痛てぇだろ。」


「ふん。ガキは早く寝なさい。」


「チッ。おやすみ姉貴」

自分の部屋の前まで行くと、ドアの隙間から紫色の靄が出てるのが分かった。

「は?何だこりゃ。いや、今は寝るのが先だ。」

勢い良くドアを開けると、銀髪で、人形の様な美形の少女が床に寝ていた。

しかし、龍桜は気にも留めず

「こんな人形買ったか?」くらいしか思わなかった。

ベットに横になると直ぐに眠りについてしまった。


そして早朝

誰かの声で起こされているのが分かった。重い瞼を開けると、そこには昨日

部屋に横になっていた人形の様な少女が龍桜に話しかけていた。

咄嗟に飛び起き、顔を見合わせる。

「誰?……あっ!夢か。そうかそうか。しかし美人だな〜おめぇ。」


「何を言っているんだ人間。夢などでは無いぞ。」


「美人はスルーかよ。じゃあ軽く殴ってみてくれ。どーせ痛くねーし。」

龍桜は自分の頬を指さし、ここを殴れと挑発する。

瞬きをした直後、その少女が頬を軽く殴る。

瞬間俺はドアを突き破り、いつの間にか天井を見ていた。

「え?……」

痛いを通り越して、非現実的な事に驚いて声も出ない。

無言で、ドアを元の場所に嵌め、深呼吸をし落ち着いた所で質問をする。

「あのさ……君何者?」

その少女は曲げた指を顎に置き、少し考えて話し始めた。

「簡単に言えば堕天使……天界から追放された悪魔だ。」

耳を疑う様な答えが返ってきた。

「アクマ?熊の親戚か?……って違うよな〜。でもあんなパンチされたら信じるしか無いだろ……」


「所で人間、私と契約しないか?」


「契約?……血の契約!?無理無理」


「違う!私は天界を落とされ、挙句の果てに薬を飲まされて魔力が残っておらん。もう昔の名は捨てた……だから私に名前を付けろ。」


「名前……?名前つってもセンスねーからな俺……昔の名前は何だよ」

どんな悪魔かにもよるので、一応昔の名前を聞く事にした。

「ルシファー……ルシファーだ。」

まさかのルシファー……ゲームや、小説、漫画などで良く見かける悪魔だ。

知らない者は少ないだろう。

つか悪魔っていんの!?

「わ、分かったルシファーね。じゃあ……」

ここで適当言ったら殺されそうなので、真剣に考える事にした。

「ルシ……ルシフ……ルシファルでどうだ!?」


「ほぅ。ルシファルか。良い名だ。これから宜しく頼むぞ人間。」

お礼を言われた次の瞬間ルシファルの周りに紫の光が纏った。

「どんどん魔力が戻って来たぞ……フッ」

名前を与えたら魔力が戻るのか……

「―――ところで貴様の名前を聞いていなかったな。」


「俺の名前は朝比奈あさひな 龍桜りゅうおうだ。よろしくな。」


「龍桜か……。」

握手をし、

ルシファルと1階に降りる。

「つか親にどう説明しよう……」

階段の前で悩んで居ると、姉貴が降りてきた。

「わ〜何この子可愛いわね。どうしたの?」

姉貴はルシファルの頭を撫でて抱っこした。流石姉貴……と感心していると、親父も起きてきた。

「お?……犯罪犯すなって昨日言ったよな龍桜?!」

親父は拳を鳴らして近付いてきた。

「いやっ違う!!親父話を聞いてくれ!」


「何だ、そういう事か。彼女だったら早くそう言えよな龍桜〜!」

言い訳が思い付かないので、彼女という事にした。

「にしても親父、俺の事ボコボコにしといて早く言えよは鬼じゃねぇかな!?」


「まぁまぁ。悪かったって!な?」

手を合掌し謝る親父、ここは潔く許しリビングへ向かう。

「うわぁ。なんか知らんけどもう打ち解けてるし。つか早く飯食わないと入学式遅れる!」

食パンを1枚だけ食べ、部屋に戻り制服を着る。

ルシファルもご飯を食べた様で、顔が綻んでいた。すると、いつの間にかルシファルも制服に着替えていた。

「えっ!?何で!?」


「人間界に溶け込まないとな。」


「そ、そっか。」

そして、龍桜は洗面所へと行き、ワックスで髪をセットする。

玄関へと向かい、外へ出ると既に親父と、母ちゃんが車で待っていた。

ちなみに姉貴も後ろに乗っていた。

「あ〜緊張するな〜。」


「頑張れよ龍桜!喧嘩負けんなよ!」


「いやそこっ!?」


「あんまり人に迷惑かけちゃダメよ?龍ちゃん」


「おぅ。ってルシファルは膝の上に座んなよ!」


「契約者のそばに居るのは当たり前。」

耳元で、周りに聞こえない様に小さく囁くルシファル

空気読めるんだなこいつ……

「そろそろ学校に着くぞ〜。後からまた来るからな入学式に。」


「おぅ!」

母ちゃんと親父と姉貴に手を振り、車を降りると、本当に高校生か!?と思わせる様な新入生が多く居た。

「スキンヘッド居るし……」

こんな不良高校でルシファルが居ても誰も不思議に思わねぇしまぁ大丈夫だろうな。

「龍桜……まさかビビってるのか?」


「なわけねぇだろ。どんな奴だろーと売られた喧嘩は買うぜ。」


「そっ。それでこそ私が認めた契約者。」

事前に貰っていた地図を見て、体育館に行くと、入口付近と、入口前に見るからに不良の奴らが屯していた。

邪魔過ぎる……だがここで問題起こせば入学取り消しになりかねない。

我慢我慢。と拳を強く握り、屯する不良を避け入ろうとすると、右肩を引っ張られた。

「あ?」

睨みを利かせ、振り返ると、身長が龍桜より遥かに高い顔に傷のある大男が立っていた

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