第6話
「ご飯作ったのよ〜。食べて行って!」
そろそろお昼だからお暇しないとと言うところで圭くんのお母さんがご飯に呼びに来た。
「え、でも」
「佑仁くんの分も作ったのよ〜。何も用意していないのなら食べて行って〜。じゃないと余っちゃうし」
佑仁は悠真くんに連れられて部屋から出ようとしている。その先には階段もあるためまだ心配だ。
「はい、頂きます。わざわざすみません。ありがとうございます!」
圭くんは私がお母さんと話している間にチビたちを止めて、両腕に2人を抱っこしていた。
力持ちだ。私にはできない芸当である。
下に行くと子供用の椅子が2つ用意されていた。佑仁を圭くんから受け取って隣り合わせの椅子に座らせた。悠真くんの隣に朱子さん、佑仁の向かいに私、私の隣に圭くん、その隣にお母さんが座った。
子どもたちによだれかけをつけて、ご飯を置く。
お母さんが作ったお昼は青椒肉絲に白米、タケノコの胡麻あえ、卵とほうれん草のスープだった。
子ども達にはすり潰したほうれん草に人参、なんちゃってお肉の大豆が白米と混ざったものだった。
ビビンバにそっくりに作られててすごい。
「お母さん、美味しいです。ありがとうございます」
佑仁も器用にスプーンを使いながら食べている。
「おいひ!」
佑仁が珍しく感想を言った。普段あんまり喋らないのもあってそれだけ美味しかったのだろう。
食後にはデザートも出てきた。私が持ってきたパウンドケーキに生クリームといちごにブルーベリーが乗っていた。子どもたちにはフルーツジュースだった。
それも美味しそうに飲んだ頃、佑仁がうとうとしだした。ご飯を食べて眠くなったのだろう。
「佑仁くん、寝ちゃいそうね。ベッドに寝かせてらっしゃいよ」
よだれかけを外すと圭くんが佑仁を抱き上げてくれた。
「佑仁寝かせてくる。ゆあはここにいていい」
「うん、ありがとう」
そのまま階段の方へ歩いていく。
「本当にあなた達夫婦見たいねぇ。もうくっついちゃったら?」
「え!?いや、圭くんにも選ぶ権利ってものがですね……」
あまりの不意打ちにあたふたしてしまう。すると悠真くんを見ていた朱子さんまで、
「圭仁も満更じゃなさそうだけど」
という援護射撃まできてしまった。
「でも、話したの2日前が初めてで圭くんのこと何も知らないですし」
「なーに言ってんのー!私なんて出会ってその場で旦那にプロポーズしたわ!」
なんて朱子さんが暴露する。朱子さんは喋り方といい立ち居振る舞いといいなんとも豪快である。
「あらぁ〜。私だってあっくんに出会ったその日に告白されたわよ〜」
なんと。この豪快な性格は父親であろうあっくんと呼ばれた人の遺伝のようである。
「もし良かったら佑仁くん預かるわよ〜。圭仁にはガツンと言っとくから〜」
口を挟むすきもなく、朱子さんとお母さんが口々に話している。
「はい、そこまで。関係ない母さんと姉ちゃんは黙ってて」
佑仁を寝かしてきた圭くんが帰ってきた。正直助かった。このままどう収拾を付ければいいか分からなかったから。
片付けをするお母さんを手伝い、キッチンに立つ。
キッチンも例に漏れず広い。冷蔵庫も柏木家の1.5倍はある。オーブンまでついているところを見ると、お母さんは相当な料理好きだと推測した。
オーブンで何を作るのかを聞きながら片付けをする。途中、朱子さんが家事を一切できないという愚痴が入ったが、旦那さんがなんでも出来るスーパーマンだということだった。
「もう大丈夫よ。ありがとう、助かったわ〜」
ある程度洗い終わるとお母さんから圭くんのところに行っておいでと言われた。
ダイニングに行くとお姉さんと話していたらしい圭くんがこっちを見た。
「ゆあ、佑仁寝てるけどどうする?」
「あら。私は2人で出かけてらっしゃいよ、って言ったんだけどね」
寝てしまった悠真くんを抱きながら朱子さんが妖艶に微笑んだ。
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