第3話

圭くんと保育園までの道を歩く。


「さっきはありがとう。今までああいうことなかったからどうすればいいのか分かんなくて……。助かった」


「気をつけて。ゆあは可愛いから」


サラッとそういうこという。


「そういうとこだよ、圭くん」


「え、なにが?」


いやぁぁー!尊い!圭くん尊い!なにそのキョトン顔!


「なんでもない。ところで、圭くんはどこの高校なの?」


ここら辺の高校に疎いせいで制服を見てもどこの高校か分からなかった。


「青稜だよ。ゆあは?」


「え?あの、青稜?」


「あのがどれか分かんないけど、あの青稜」


「頭良いとこじゃん!絶対頭良いじゃん!だからかぁ、あんなに早く行ってるの」


青稜は保育園の3駅先にある、頭が良い生徒が多いという有名な進学校。


「ゆあは?」


「え、私?答えなきゃだめ?」


「聞かなくても分かるけど」


「じゃ、良いじゃん。言わずもがな、青嵐」


青稜と青嵐は姉妹校ではあるが、青稜は評判の良い進学校に対して青嵐は評判最悪の不良校。でも、青稜と違って専門コースがあって、私は料理が学びたくて青嵐を選んだ。


「何コース?」


「家政」


「じゃ、料理できる?」


「料理全般得意なの。あ!今度お礼に何か作るね」


そんなことを話していると保育園に着いた。門のところで待ってもらっても良いが不審者にでも間違えられても困るということで佑仁のところまで一緒に行くことに。


「あら、おかえりなさい。佑仁くん、お姉ちゃん来たよー。ところでそちら佑亜ちゃんの彼氏さん?」


出迎えてくれたのは佑仁の担任である小野先生だった。佐々木先生とは真逆のクールな性格なはずだが、ミーハーだった。


「いえいえ!友達です。電車で会って着いてきてもらっちゃったんです」


「でも、ちょうど良かったわ。今不審者がここら辺にいるらしくて佑亜ちゃんも来る時大丈夫かなと思っていたところよ」


「え、そうなんですか?気をつけます」


圭くんに着いてきて貰って正解だったかもしれない。不審者にでも鉢合わせしたらどうすればいいか分からない。


「佑仁」


それまで空気に徹してた圭くんが佑仁を呼んだ。すぐ後ろまで来ていたらしい。


少し前まではハイハイしか出来なかったはずなのにもう歩けていることに感動する。


荷物を取りに行くから圭くんに佑仁を見てもらうことにした。

圭くんは慣れた手つきで佑仁を抱き上げた。佑仁も覚えたての言葉を発しながらニコニコしている。


「圭くん、佑仁の荷物持ってくるから待ってて」


「うん」


佑仁の1歳児教室は玄関から遠いところにある。時間も時間なので玄関近くの教室で残った子供たちを集めて遊んでいるようだ。佑仁の荷物も他の子たちと同じように部屋の隅の棚の上に置かれていた。



「先生、今日もありがとうございました」


圭くんと佑仁のところに戻ると圭くんが佑仁に靴を履かせてくれたみたいで、先生に挨拶をして保育園を出た。


「何から何までありがとう、圭くん」


「いや、佑仁が可愛いから得してる」


初めは歩いていた佑仁もさすがに最近しっかり歩けるようになってきたところでもあり、疲れて圭くんに抱かれている。


「圭くんって子どもの扱い慣れてるね。近くに小さなお子さんいたの?」


「うん。姉ちゃんの子どもが。佑仁何歳?」


「1歳。もう少しで2歳になるよ」


「あ、じゃあ同い年かも」


なんと、圭くんのお姉さんのお子さんが佑仁と同い年らしい!佑仁と同じ男の子で名前は悠真はるまくんっていうんだって。佑仁を見ながら優しそうにいう圭くんにきゅんとした。なんたって普段は見れない垂れた目じりが堪らん。ってか姉ちゃんって呼んでるギャップ(普段姉貴とか言ってそう)にやられそうだ。


「佑仁と遊べるね。お姉さんは今ご実家にいらっしゃるの?」


「今姉ちゃんの旦那さんが海外出張してて、姉ちゃんも行きたかったらしいんだけど悠真いるから実家に来てる。遊びに来る?」


「そうなんだね〜。ん?んん?今なんと?」


佑仁と友達になってくれそうな候補1番の悠真くんのお家事情を聞いていいものなのかと思いながら聞いていたら、何やら聞きなれない単語が聞こえた。


「遊びに来る?」


「え、行ってもいいの?」


「うん」


こんなに直ぐに家に行くことがあるだろうか。いや、ない。

佑仁がいなければ決してありえない事だ。


「佑仁も悠真にあってみるか?」


圭くんは佑仁に微笑みながら聞いている。


「あい!」


「だって。明日土曜日だけど何か予定ある?」


両親からのお金もあり基本お金には困っておらず、土日は佑仁と遊べるようにバイトを入れていない。


「ううん。大丈夫、ないよ」


「おけ。連絡先ないの困るね。スマホ持ってる?」


母が亡くなる前に買ってくれたスマホがある。最近電池の減りがやばいけど。


「持ってる」


スマホをカバンから取り出し圭くんの言った電話番号を打ち込み登録する。するとレインに電話番号登録で圭という名前が出た。


「登録しといて。レイン送ってくれたらこっちも登録する」


圭くんは佑仁を抱っこしてくれているため、スマホを取り出せない。


「分かった。ってか、ごめん。佑仁もたせてた」


「いいよ、寝てるし」


佑仁は圭くんの腕の中ですうすうと寝息を立て寝ていた。


いつの間に……。


結局圭くんの家は反対方向なのにも関わらず、家まで送って貰ってしまった。



「じゃ、また明日」


家の前で佑仁をうけとり、圭くんに手を振った。


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