無人世界へ

 夜遅くなった頃、私は天界事務局へと向かう。

 日中は人目を気にして避けている。

 最初に向かうのは掲示板だ。

 何処か良さげな世界を探しているのだが優良物件は早い者勝ちでとっくに取られている。

 残っているのは凶暴な魔族が支配している世界とかばっかりだ。

「やっぱり無いかぁ・・・・・・」

 ため息をついて掲示板を離れる。

「あっ!ルティアさんっ!」

 声をかけられてビクッとしつつ振り向くと受付天使のミアだった。

「ミア、いきなり声かけないでよ、驚くでしょ」

「ルティアさんが来る頃なんじゃないか、と待っていたんですよ。実は良い話と悪い話があるんですが」

 良い話と悪い話?

「悪い話って・・・・・・?」

「ルティアさん、このままだと女神の資格剥奪されるかもしれません」

 えっ!? 剥奪っ!?

「ど、どういう事っ!?」

「実は近い内に天界審議会が行われて女神のリストラが審議されて、そのリストラリストの中にルティア様の名前が入っていたんです」

 リストラ・・・・・・。

 まぁ、当然と言えば当然よね。

 何にも結果を出してないんだから・・・・・・。

 因にだが女神の身分を剥奪されるとどうなるか、というといろんな道がある。

 もう一度女神を目指すのであれば女神補佐、もう女神になんて懲り懲り!というのであれば転生届を出して人間に、天界許すまじ!というのであれば邪神に。

 まぁ、現実的に言うと人間に転生するのがメジャーで邪神は一番最悪のパターンだ。

 ・・・・・・私も邪神になる事を一瞬だけよぎった事は誰にも言えない。

「そう・・・・・・、それで良い話というのは?」

「実は近日中に新たな世界が生まれる、と報告があったんです。ルティアさん、立候補してみませんか?」

 世界というのは定期的に生まれている。

 生まれたての世界は当然生命なんて無い。

 では、どうやって生命が生まれるのか?

 それは『世界樹』の存在が大きい。

 世界樹はその名の通り世界を創り発展させていく源。

 世界樹の大きさとか寿命は女神の評価の1つだ。

 でも、大体はある程度育った時点で派遣されるのよね。

「生まれたばかりの世界という事はまだ世界樹は生えてないよね?」

「はい!だから上司も誰を寄越すか相談しているみたいです。私はルティアさんが適任だと思うんです」

「なんで私が?」

「ルティアさん、樹木育てるの好きじゃないですか」

 ······あぁ~、そう言う事ね。

 別に好きではないけど暇とストレス解消の為にやっているだけなんだけど。

 だけど1から世界を育てるなんて今までやった事がないし、興味はある。

 それに生命がいないのであれば私の自由に出来る訳だし。

「うん、その話、乗ったわ」

「わかりました、では希望届を出しておきますね」

 そして、その1週間後、私はその新たに生まれた世界の女神になった。 

 

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