12.アザミ
リノクのマサトによると、王国にはこういう風習があるらしい。
曰く、
「昔、ウィサール平原の辺りは雷雨の多い所で、
雷による事故死が多かったんだ。
平原自体もだだっ広くて、高低差も木も無いから尚更でね。
それで、平原を渡る者は薊で作ったお守りを持っていったそうだよ。」
「へえ?それって、効果あったの?」
「あったみたいだよ。今でも“
土産屋の定番になっているからね。」
そう言う訳で、リノクのアサヒは、同級生への土産として“神鳴草”を送った。
沙漠から帝国に帰るのは大変なので、転送装置で送ったのだが…
それで困った
「だあぁあ?!」
「ぎゃー!?」
此処は帝国メガロポリス・ヴァルトリピカ府府庁。
帝国最北端にして最も寒く…はないが辺鄙な所に、リアル雷が落ちた。
「何すんだこの
「なんだと?!このわたしに喧嘩売っておいてそれは無かろう!」
「はあぁ?!誰がお前に喧嘩なんて売るかー!!」
御近所も呆れる程度にうるさい府庁にはロシア棒の似合う三つ編み男子と、
「“陛下のお兄さん”って言われるとマジで騙されるレベルのバッタモン。」
「あ、呆れて物も言えないのだ・・・」
“ウチの陛下”にそっくりな剣バカが居た。
第五代皇帝の白さも大概だがコイツも白いのだ、本当に。
違う所は、服装とアクセントカラーと中身。
陛下は着物に対してコイツはピアスとPコート、
陛下はガーネットに対してコイツは本紫、
陛下はどちらかと言えば寡黙に対してコイツは…
御覧の通り、裏声レベルの甲高い声でよーく喋って大変うるさい!
「語り
「うーわ!!メシを人質にするなんてサイテーだ!」
「ふふふ、嫌ならわたしに勝つのだ。」
本日も絶好調だった府知事代理は、何処からともなく剣――しかもビームサーベルが主流の帝国において実剣である。おっと、これは陛下との貴重な共通点だ――を、すっごく良い笑顔でワタルに差し向けた。
その剣は、真っ白な本人に対して刀身も柄も真っ黒。互い違いの曲線に羊羹色の地色とhoneydewのラインで実に禍々しい。アレの斬れ味は身…いや、建物を以て知っていた。府庁の壁はコンクリート製だった筈だが、それがスパッと斬れるのだ。恐ろしすぎる。
「じゃなくて!!なんでオレが喧嘩売ったなんて話になるんだ?」
「何故だと?!よりによってわたしの大嫌いな花を置いておくからに決まっておろう?!」
「え…ええー?!」
それを早く言ってくれ!!
アナスタシアのワタルはついさっき自分で置いた切花を回収し、とりあえず彼の視界から外せるよう戸口に置いた。刺々しい茎葉はともかく、ふわっふわな赤紫色の花はとても可愛いのに…もったいない。
「確かにわたしも植物は好きだが、アザミは嫌いも嫌い大嫌いなのだ。
せっかく根絶やしにしたというのになんなのだ…」
「植物まで虐殺すんな!!」
ワタルはこの“真っ白なオエラカタ”がアザミというアザミを根ごと引き抜きまくっている様子をうっかり想像して爆笑しかけたが、それは相手へのツッコミでかき消した。高校時代に付いたリアクション大帝という渾名は、まだ現役だと信じたい。
「わたし植物は好きだがアザミだけは大嫌いなのだ!
雷雲に対して雷除けなど、嫌がらせ以外のなんなのだ?」
「…あー…」
ワタルはやっと今、全事象を把握出来た。
「剣のイメージが強すぎて忘れてた…
アンタそー言えば人間じゃなかった…」
「ふん、今更謝っても赦してやらないのだ。暇なら構え!!」
いよいよ痺れを切らした男は、例の剣と共に軽ーく机を跳び越えてワタルに襲いかかった。
「くっそー!!結局構って欲しいだけだろ!」
「あったりまえなのだ!!仕事など午前の段階で終わって暇なのだ!!」
「早すぎだろコノヤロー?!」
アナスタシアのワタルは自前のライフル型
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駅近所に生えてるの、アメリカオニアザミ(今回noteから借りてきた写真の植物もそうです。要注意外来生物)だわ…引っこ抜いたらゴボウの様に食べられないかなー?
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参考ホームページ
・http://www.yanagidou.co.jp/syouyaku-yakusou-azamikon.html
・wikipedia「アメリカオニアザミ」
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CAST
・リノクのマサト
・リノクのアサヒ
・「わたしの名を知りたくば勝ってみせよ!」「ホントフリーダムだなコノヤロー!?」
・アナスタシアのワタル
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