6.カカオ
帝国民の朝は、昨日沸かしておいた白湯を飲んでSNSを見ることから始まる。
《《《Happy Valentine!》》》
《アサヒぃ誕生日おめっと》
《Frohen Valentinstag.》
《リア充まじチョコの角で爆死しろおぉーっ!!!!!》
見れば友人もSNS本部も届ける恒例のお知らせと…万年恋人募集中なダチの悲鳴。
そんな本日はバレンタインデー、帝国メガロポリスではバレンタインカードと酒入りチョコを送り合い、合コンとロマンスの嵐が起きる日だ。なんせ我が国は寒冷地だし、この日は色んな意味で帝国全土がパッパラッパーになる。独り者だろうがリア充だろうが、お酒は本当に欠かせない。
「もうそんな時期なんだ…」
《リノクのアサヒ、一つ訊きたいのだが。》
「えぇ、なに?」
かつてのクラスメートに何を送ろうか考えていたリノクのアサヒは、通信音に反応した…反応に5秒もかからないのは、インターネット文化に慣れた者の
《バレンタインデーとは、男から花を贈る行事ではないのか?》
「あー…」
なるほど、そういう事もあるのか。
王国民でも帝国民でもないらしい実に複雑な友人(?)は、変わった言葉も話すだけにバレンタインデーの様式も違う様だ。
尤もアサヒには、友人(?)の居た世界――確かコから始まる――がイマイチよく分かっていないのだが…
「帝国(ウチ)にも花を贈る人は居るけど、鉄板は記念カードとウィスキーボンボンかな。ちなみにチョコがけを送らないと義理認定される。」
《酒とチョコ、か…しかし詳しいな。》
「そりゃあ専門分野なんで。」
《そうだな。帝国立オブリガツィ国際文化比較専攻二年生だったな。》
「うわあぁフルで覚えてた…ところで、
《無いな。王宮でも見なかった。》
「まじで?」
《仕方無い、キャロブの種でも送ろう》
「たね?! わぁ嬉しい!! ありがとう!!!」
《キャロブチョコなるものを期待している。》
さて、帝国メガロポリスでは大きな祭りとなったバレンタインデー、王国ではどうだろう?
王国と帝国では、バレンタインデーに関する風習が違うのかもしれない。
氣になったリノクのアサヒは、朝食でユニオン・クレッセントの皆に訊いてみた。
「チョコレート? ウチではモーニが振る舞うるび。」
「え?」
答えはまさかの、2月14日限定のおやつだった。
そう言えば、王国ではチョコレートそのものを見た事が無かった。クーベルチュールや準チョコレートも、チョコとかカカオと名の付く物は、大きな店にすら無かったのだ。
「チョコレートに出来る良質なカカオが貴重なんだな、これが。」
理由は、みんなのお兄さんが教えてくれた。
「(1)カカオの栽培には温暖な日陰が良くて、新鮮な実から取った種しか発芽
しない。(2)カカオが実を付ける確率は1%未満。(3)カカオをチョコにする
には発酵と加工が必要で、精錬は大の男も嫌がる重労働。
…誰がやるよ?」
「チョコレートを作るって、大変だったんだ…」
モーニが言うには、カカオの育つ大地は確かに有るが、上述の通りカカオを使おうとする者はもう居ない。かつ、歴史的な出来事も無かったので、王国の2月14日は記念日ですら無かったのだった。
「…それじゃ帝国はと言うと、カカオの育つ大地は無いけど、海外取引で得たチョコレートをもう一度食べたい!と超頑張った某帝国民の御陰で温室栽培と機械による大量生産工場が確立。輸出入の立場が逆転したんだって。」
《そうか。つまり、キャロブチョコも作製が困難という事か?》
「かもねー。調べたらまた連絡するよ。それじゃあね!」
《Auf Wiedersehen.》
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カカオからチョコレートを作る方法(大量生産版)
https://www.meiji.co.jp/learned/factory/chocolate/
最近はルビーだの初摘みカカオだの、カカオだけで1本物語作れそうな程、情報が出てきました。京都で凝ってると言えば、Dari Kやcacao ∞ magicかな?キャロブもその内ネタにしたいですね、Happy Valentine!
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CAST
・リノクのアサヒ
・ファスタラヴィアのコージ以下、同級生の皆様
・リヒター=アンゲリカ
・ヴィクター=グレイス
・モーニ=ゼルコバ
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