考察する者-1

『本日はここまでとなります。最後までご視聴頂き、ありがとうございました。ではまた、次回の動画でお会いできるのを楽しみにしています』


 つい先ほどアップしたばかりの自らの動画を見終えて、榎谷えだに幸也ゆきやは一息ついた。


 榎谷は「恐竜のしっぽ学園」というチャンネルを持つ、いわゆる「政治系ユーチューバー」であった。


 榎谷は某一流企業に勤めていたが、世の中に蔓延するフェイクニュース、その発信源がテレビや新聞を媒体とした大手マスコミと知り、世の中に真実を発信しなければという信念からその企業を退職し、この道に入った。


 もちろん、その情報源もある。


 榎谷の大学時代の友達もまた、優秀な者が多いからだ。


 そして、その情報源の一人が、神尾かみお遼平りょうへいというフリージャーナリストだった。


 神尾は常に嘆いていた。A国の情報操作、B国の臓器売買、C国の裏取引など、神尾の入手した情報は、ことごとく却下され、世間に知らされることはなかったからだ。


「これを公開したら、わが社はつぶされる」というのが、彼等の言い分だった。


「じゃあ、俺が世間に公開してやるよ」

 榎谷が決心したのが、その始まりだった。

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