5時間目「トイレ以外の場所で」

わたしは今保健室にいる。


保健室といっても、保健室の先生やけが人・病人がいるわけではない。


わたし一人でここにいる。


なぜここにいるかというと、スタート地点のくじ引きで保健室を引いたからだ。


他の生徒は、理科室・家庭科室・体育倉庫・屋上・音楽室にいるらしい。


わたしはここで今からおもらしをしなければならない。


トイレではなく、


この部屋の中で、


服を脱がずに、


そのままおしっこ…。



「あー、ダメだダメだ。深く考えないようにしよう。


恥ずかしくなるだけだ…。


ほかのみんなはどうしてるんだろう。


まだろくに挨拶もできてないのに、こんな状態になるなんて…。


でももし、ほかのみんなが早々におもらしする決意を固めて、


すぐにクリアしてしまうと、わたしが取り残され、


後でもっとひどい辱めを受けるかもしれない…。


それだけはダメだ!


ここは不本意だけど、さっさとおもらしをして教室に戻ろう。


さっき先生が配った水はすぐに飲みほした。


そろそろいい感じにトイレが近くなってくるはずだ。


そうだ、ただ立っているだけじゃ、水分が体の下まで落ちていかないだろう。


何かの本で、体の中の不要な水分は体の下の方にある膀胱ってところに溜まって、


それが多くなると、おしっことして出てくると書いてあった。


だったら、体を動かして、体内の水分の巡りをよくした方がいい!」



わたしは、ただ立っているだけではなく、保健室内を歩き回ることにした。


それだけでは足らないと思って、駆け足をしてみたり、ジャンプしたりもしてみた。



「…ダメだ。こんなんじゃ、1時間なんてあっという間に来てしまう。


膀胱におしっこが溜まるのを待つんじゃだめだ。


今、膀胱に溜まっている分だけでもいいから、


それを出せればいいんだ。


たしか先生は、おもらしをしろといっただけで、


どれだけおもらしをしろとは言っていない。


少しだけでもいいからおしっこができればいいんだ。」



方針転換したわたしは、必死におしっこを出す時をイメージしておなかに力を入れた。


しかし、おしっこは出なかった。



「出ない…!


出そうとすればするほど出ない!


逆かな?力を入れるよりも力を抜いたほうがいいのかな?」



幸いにもここは保健室。


病人用のベッドがある。


わたしはそこに寝転がって、ゆっくりと深呼吸をした。



「力を抜くイメージで…


緊張しない…。リラックス。」



目を閉じて、何も考えないようにした。


それでもおしっこが出る気配がない。



「だめだ。こうやっても出る気配がしない。


…そうだ!


確か先生はトイレに行ってはいけないと言っていた!


あの先生はかなりの変態。


おもらしのこともよくわかっているのだろう。


そんな先生がトイレに行くことを禁止したということは、


裏を返せばトイレの方がおもらししやすいということ…!


とはいえ、実際にトイレにはいけない。


だったら、自分がトイレにいると想像しやすい場所に行って、


そこをトイレだと思い込めば…!」



そう思い立ったわたしは、保健室を出た。


自分がおもらしをする場所を探しに…。

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