＜番外編・小話＞悪役令嬢は、悪役令嬢になりたい

IF END：分岐点１の選択の結果、ギルド長ルートは封鎖されました

「来い！！」

　と言われて、流されるまま、文字の如く船に乗って国境を越えたわけですが、え？いやいやいや、え？？？？

この展開で、ネロとくっつかないとか炎上しない？

ネットの海って、原料は海水じゃなくて、油だよ？

小さな火種で大火災に見舞われるんだよ？

「あのままだったら、お嬢が処刑されちまうところだった」

　されないよ。

私の知らない罪状が積みあがってたら話は別だけど、今のところ、私よりお前の方が処刑ものの犯罪を現在進行形で犯しているよ。

次期国王の婚約者であり、公爵令嬢の誘拐ぞ？

処刑でも生ぬるいわ。

「安心しろ。俺が守ってやる」

　チェンジで。

「俺じゃ、ダメか？」

　ダメだろ。

人気キャラ上位ならまだしも、ランキングに名前も出なさそうなキャラとくっついたら、焚書ものなんだよ。

作者にもっと優しくしよ？

それと、いい大人の男が、親子ほどの年の差のある女に対して、縋りついているのはどうかと思うぞ。

「お前が好きなんだ」

　惚れ薬を飲んだか、洗脳でもされたのかという変わりように、ただただ唖然とするばかりである。

何だ？

悪役令嬢をストーリーから退場させたい作者の意志が働いたとでもいうのか？

まあ、本来の原作準拠でもないし、悪役令嬢として十分の働きを果たしたわけでもないが、私が退場したことで物語が正常になるのであれば良いことである。

さて、これからどうするか。

言葉も通じない異国の地で頼れる人間は目の前の誘拐犯だけという積みに積んだ状況。

　私は腕を組んで、唸った。

私の行動次第でこの誘拐が、駆け落ちにかわったらどうする。

というか、既にその噂も流れていそうである。

どちらにせよ、もう私の名誉は失墜したも同然だ。

捕まった場合、この男は処刑で済むかもしれんが、私の行く末は生きながらにして地獄という悲惨な末路かもしれん。

全く、よくぞ、やらかしてくれたな。

恨みのこもった眼差しを向けると、男は頬を染めて、

「そんなに見つめるな。照れる」

「照れとる場合か！！」