第5話 元彼の存在

私は幸せ者だ。

人並み以上の幸せを感じていると実感していた。

それは幼馴染のⅠ子と再会して、恋愛感情を抱いたからだ。

人を好きなることは、こんなにも心が幸せになると初めて実感した。


Ⅰ子とは中学校時代の幼馴染だったから、二人の会話は昔話で花が咲いた。

私は柔道部で毎日グランドをランニングして汗を流していた。

彼女は茶道部で、教室からそんな私の姿を見ていたのだと。

当時の二人はお互いに恋愛感情などなく、会話をした記憶が皆無だった。


当時の私は同級生のK子ちゃんが好きだったとⅠ子に打ち明けた。

『そうだったの?私とK子ちゃんは今でも仲良しなんだよ(笑)』


するとⅠ子はK子ちゃんとのエピソードを話し始めた。

二人は同じ高校へ進学して、そして同じチアガール部に所属していた。

K子ちゃんは高校生になると好きな異性が出来て、その彼は野球部のピッチャーだったのだ。

Ⅰ子はそんなK子ちゃんの恋心を知って、凄くK子ちゃんを応援したんだと。


私は違う高校へ進学しても柔道部は続けていた。

そしてⅠ子の学校とも対外試合で行ったこともあると話した。


『もしかして柔道部のH君を知ってるの?』

それはⅠ子の高校に所属する柔道部のライバルだった。


『アイツ強くて覚えてるよ!Ⅰ子の知り合いなの?』

知り合いの話しになると、Ⅰ子はこうも盛り上がるのだと思った(笑)

取りとめのない会話だったが彼女と共通点ができると嬉しいことだ!


でも、そんな幸せな二人の日々が、一遍する日が来るとは思いもよらなかった。




風呂上りの夜更けに私の電話が突然鳴った・・・


『はいTETSUOの電話ですけど!どちら様ですか?』

その相手は非通知の番号で電話をして来た。


『Ⅰ子さんとは・・・もう会わないで欲しい!』

小さな音量で少し甲高い声の持ち主からの電話であった。


『は?だから誰ですか?』

私は知らない電話番号の主に、もう一度訪ねた。


『私はⅠ子さんと付き合ってる者です・・・プー!プー!プー!』

そう言い残すと電話は切れた。

短い電話の内容だが、相手はⅠ子の元カレだと察した。

そしてⅠ子と付き合っていると宣言をしていた。

詳しい関係は分からないが、今でもⅠ子と会っているのか。


いろいろな考えが頭の中を駆け巡り、そして答えが出ないまま私は朝を迎えた・・・


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