遅れて来た勇者
ついに魔王軍に人質まで取られ
成す術も無く、
武器を捨て、両手を上げて
投降する姿勢を見せるヨーコ、
そして反乱軍。
魔族の者が手にする刃が
人質の胸に突き立てられている。
魔物や魔族の者達は
降伏しようとする反乱軍にも
容赦なく襲い掛かった。
「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」
背走するヨーコを追い詰める
魔王軍の兵士達。
「ユーコォーーーッ!!」
「ユーコォーーーッ!!」
ヨーコはユーコの名を
何度も泣き叫びながら、
彼女を呼ぶ。
そこで突然、
ヨーコを追う兵士達が、
横から蹴飛ばされた。
「僕の可愛い仔猫ちゃんに、
何すんだ、お前達は」
「お待たせしたね、
そんなに僕の名前を呼んで、
よっぽど会いたかったんだね、ハニー」
ヨーコの窮地に
何とか間に合ったユーコ。
「ユ、ユーコッ!!」
「なんで、いつも
来るのが遅いのよっ、ばかぁっ!」
泣きながらすがりつくヨーコ。
「ごめんね、ハニー」
ヨーコの涙を指で拭うユーコ。
「でも、とりあえず今は合体だね」
「……うんっ」
ユーコとヨーコは
自分の右腕の肘を曲げ、
互いの肘を交錯させて
叫ぶ。
「ブレイブッ」
「クロスッ」
すると二人の肉体は
粒子となって分解され、
二つの魂だけが残る。
二人の魂が
一つとなって融合を果たすと、
二人分の肉体の粒子が
新たな一つの肉体を
再構築して行く。
ユーコとヨーコ、
彼女達は二人で一人の勇者、
神々が創りし
人格融合合体勇者である。
-
熱気の中にそびえ立つ勇者。
それは鎧を着て、
羽根の着いた兜を被り
仮面をしている巨漢。
性別は不明だが
どう見ても女性には見えない、
筋骨隆々の巨人。
通常の勇者、その平均身長の
一.五倍程度のサイズがあり
二メートルは優に超えている。
これこそが、
勇者不足解消の為の
神々の試み、第二弾。
これまで勇者の人材は
体力や体格、筋力などの問題があり
どうしてもベースが
男性に限定されてしまっていた。
そこで神々が
またしても思い付いたのが、
女性二人を合体させて
肉体を再構成させることで
通常の男性ベース並みか
それ以上の勇者を創り上げること。
これで勇者界への女性進出も
盛んになること間違いなし、
神々はそう息巻いて
ユーコとヨーコを実験台にした訳だ。
これもまた
神々の戯れと言ってしまえば
それまでなのだが。
-
人質を取っていた魔族が
勇者の出現に気づいて、
手にする刃で人質を貫こうとしたが、
それよりも早く
自らの首から上が無くなっていた。
人質を救出した勇者が。
今度は反撃に移る。
宙に巨大な魔方陣を描くと、
そこから現出する
巨大な刃『斬魔刀』、
それは巨大な勇者の
さらに何倍もの大きさ。
その剣を片手で一振りすると、
眼前にいる魔王軍兵士の大群勢が
一瞬で全て切り裂かれる。
まさに一騎当千。
そうなのだ、この勇者、
デタラメに強い。
それはもう
神々が一生懸命考えたのだから
失敗なんぞする訳にはいかず、
多勢の神々が全精力を傾けて
チート性能に仕上げていた。
まるで
『僕が考えた最強チートヒーロー』
みたいなことになっている。
まぁこの場合
僕=神々なのだが。
-
「キャァァァァァァッ!」
次の朝、
陽子が会社に出勤すると
オフィスで夕子が机に
突っ伏して寝ていた。
「ちょ、ちょっと、
あんた起きなさいよっ!」
「まだ、終わってないじゃないのっ!
何寝てんのよっ、あんたはっ!」
夕子が寝たお陰で
ヨーコは命を救われたのだが、
そのことを陽子は一切知らない。
「……ん、あ
……おはよう……」
陽子に体を揺すられ
ようやく目を覚ます夕子。
夕子は、眠気防止ドリンクに打ち勝ったのだ、
睡魔が。
「あたしも手伝ってあげるから、
早くあんたもやんなさいよっ!
このままじゃ、お昼までに
間に合わないでしょうがっ!」
二人で会議の資料作成に
励む陽子と夕子。
こちらの人間世界では、
二人とも向こうの異世界のことは
一切何も覚えていない。
何故こちらの世界と
あちらの異世界で
二人ともここまで
人格が違うのだろうか。
陽子とヨーコに関しては、
本人も気づかない深層心理に
乙女心や幼児性が潜んでおり、
それが過酷な環境と
絶対的に頼れる
ユーコという存在が居る為に
前面に出てしまっているのだろう。
そして夕子とユーコに関しては、
この人間世界における彼女の肉体は
彼女にとって不自由なものでしかなく、
魂こそが自由な本来の姿
ということではないだろうか。
陽子と夕子は、
ユーコとヨーコであり、
二人で一人の勇者である筈なのに、
こちらの人間世界では
お互いの相性は最悪なのであった。
超人勇者は百合娘!? 夢の異邦人、ユーコとヨーコ ウロノロムロ @yuminokidossun
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