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「中学の時からずっと気持ちは変わらない。南のことが好きだよ、でもラブレターは出さない。俺なら直接告白する」
わ、わ、私が好き……!?
「山梨先輩、冗談はやめて下さい。サッカー部は恋愛禁止だから、鈴木先輩に叱られます」
「それはマネージャーと部員の交際を禁じているだけで、片想いは関係ないよ。恋する気持ちにレッドカードは通用しない」
「山梨、随分ストレートだな。南、俺も中学生の時と同じ気持ちだよ。南と同じ高校になれて嬉しかった。こんな風にみんなの前で告白するなんて不本意だけど、俺も南が好きだよ」
ひい、ひ、一橋先輩も……!?
今日はエイプリルフールじゃないよね。
「あの……あの……。私には……そのぅ……」
校庭のど真ん中で、先輩二人に告白され困惑している私に、救世主が現れる。
「礼奈、おはよう。山梨先輩、一橋先輩おはようございます。桐生君もおはよう。ていうか、みんなどうしたの? 真顔で怖いよ? 何かトラブルでもありました?」
「ゆ、百合野、おはよう。トラブルなんてナイよ」
「今朝、面白い夢を見たのよ。礼奈がたこ焼きを食べ過ぎて、茹で蛸になった夢。あはは、ていうか、礼奈の顔真っ赤だよ。夢で見た茹で蛸みたい。あれ正夢だったのかな」
「茹で蛸? あはあは、それは悲惨だよね。せ、先輩、失礼します」
私は百合野の手を掴み、ヘラヘラ笑いながらその場を逃げ出す。
三人の男子を校庭に残し、一目散に一階の女子トイレに逃げ込んだ。
「やだ、どうしたの? トイレ我慢してたの? だから真っ赤な顔でモジモジしてたの?」
「ち、違うの」
「もしかして、山梨先輩と何かあった? 礼奈、何をやらかしたの?」
「……どうしよう。告白されちゃった」
「こ、告白!? まじ? まさか二人から?」
「……うん」
「わぁお、どうするの? 山梨先輩はサッカー部の次期キャプテンなんだよ。新人マネージャーと恋愛沙汰でゴタゴタしたら気まずいよ」
「どうしよう……」
「『交際している彼氏がいます』って、正直に言えば? それが一番納得するでしょう。先輩同士が揉めることもないしね」
「あのね……」
私は学生鞄から昨日届いた手紙を取り出し、百合野に見せた。
「『君のことが大好きです。他の人を好きにならないで。』うわ、これ、重いな。差出人は誰?」
「わからないの」
「『他の人を好きにならないで。』なんて。ストーカーみたいで、ちょっと怖いね」
「……うん」
トイレの個室が開き、中から出て来たのは鈴木先輩だった。鈴木先輩は無言で手を洗い、私達に視線を向けた。
冷たくて、ちょっと怖い眼差し。
もしかして、私の話を全部聞いていたのかな……。
「部内恋愛禁止、その意味わかってるわよね」
「「は、はい!」」
私達は直立不動だ。
鈴木先輩はそれだけ言うと、私達に背を向けそのままトイレから立ち去る。
最悪だああ……。
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