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 ◇


 第一志望のフローラ大学附属高校に合格した礼奈は、公立高校の受験は取り下げ、さっさと入学手続きを済ませた。


「「礼奈ちゃんの合格を祝し、カンパーイ!」」


 今日は敏樹と美貴ちゃん、良介と妃乃ちゃんと一緒に礼奈の合格祝賀会。……と言っても、場所は行きつけのカラオケ店。


「でも凄いね。フローラ大学附属高校だなんて、あそこ超偏差値高いし、しかも高校から入学するなんて至難の業だよね」


「俺が家庭教師をしたからな」


「やだ、二人きりで何を勉強したの?」


 妃乃ちゃんは相変わらず空気が読めない。敏樹の目の前で爆弾を落とすんじゃない。


「国語、数学、英語、受験三科目だよ。もともと礼奈は成績優秀だったから、過去問で傾向と対策をした」


「それから、それから?」


 一体、何を期待してるんだよ。俺達はご褒美のチューしかしていない。しかも、唇ではなく額や頬だ。


 まるで幼稚園のような、可愛いチューなんだからな。


「妃乃、いい加減にしろよ。敏樹の顔が怒りで崩壊してるだろ」


「ごめーん」


「あはは、敏樹の顔はもとから崩壊してるよな」


 冗談を言いながら笑ってる俺達の横で、敏樹は動物園のゴリラが興奮した時みたいに「フガフガ」と鼻をならした。


「やだ、敏樹。そんなに怒らないの。礼奈ちゃんはもうすぐ高校生だし、そろそろ恋は解禁、お兄ちゃんの監視から解放してあげないとね」


 さすが、美貴ちゃん。

 いいコト言うな。


 礼奈は敏樹の怒りなんてお構い無しに、俺の腕にしがみついて離れない。


 マシュマロみたいな豊かなバストが腕に密着し、俺の目尻は自然と下がる。


「何、デレーッとしてんだ! 礼奈、野獣から離れろ、離れろ!」


 誰が野獣だよ。野獣は敏樹だろう。


 俺と礼奈の間に無理矢理分け入り、邪魔をする敏樹は、本当に大人げない。


「礼奈ちゃん、高校生になったらイケメンが学校にウジャウジャいるよ。創ちゃんよりカッコいい男子に告られたらどうする?」


 妃乃ちゃんはまるで桐生のことを知ってるみたいな口調だ。桐生は年下とはいえ、イケメンには違いない。


「創ちゃんよりカッコいい人なんていないよ。創ちゃんは世界一イケメンだから」


 礼奈……。

 そんなに、俺のことを?


「ラブラブだなぁ。でも男と女なんて、いつどうなるかわかんないからね。だから恋愛って面白いのよ」


「俺達は強い絆で結ばれてるから。他の男が礼奈に言い寄ったってカンケーないよ」


 は、は、はっ、ビシッと言ってやった。

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