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こうなったら、一刻も早く高校生になって、創ちゃんの恋人になるんだからね。
「じゃあ、あと三十分だけな」
「創ちゃん、フローラ大学附属高校はそんなに難関校なの?」
「中高一貫校だし、附属大学もある。高校の募集人数は少ないし、狭き門なんだよ。それに男女共学だし、俺は薦めない」
「どうして男女共学はダメなの?」
「別にダメじゃないけど。同じ偏差値なら、俺はダリア女子大学附属高校を勧める」
「だから、どうして?」
「制服で進学する高校を選ぶなんてダメだよ。将来なりたい職業とか、学校の教育理念とか、自分に合った学校を選ばないと」
『男子がいるからダメなんだよ』って、素直に言えばいいのに。俺も素直じゃないな。
そもそも、教育理念なんて中学生にわかるわけないし。実際、俺だってよくわからないし。
「だって私立なのにミニスカートOKだし。髪型も自由だし。校則は公立より緩いんだから。みんなあの制服と自由な校風に憧れて、入学したいって言ってるんだよ」
「校則が緩い? 男女交際も緩いのか?」
「うん。ゆるゆるかも」
「ゆるゆる!? そんな高校は絶対にダメだよ。有名私立高校なのに、ゆるゆるって何なんだ!」
「自由な校風がどうしてダメなの? 生徒も伸び伸び学んでいて、男女共に国公立大学への進学率も高いんだよ」
創ちゃんは不満げに口を尖らせた。
少しイライラして、水槽の金魚みたいに落ち着かない。
「……きゃう!?」
創ちゃんはいきなり私の首筋に顔を埋めてキスをした。
「そ、創ちゃんが、吸血鬼になったぁ!? どうか命ばかりはお助けを……」
創ちゃんは「フンッ」て鼻を鳴らすと、問題集を広げた。
「俺だって吸血鬼にも、狼男にもなりますよ」
「もしかして、創ちゃんヤキモチを妬いてるの?」
「俺は餅も煎餅も、焼きません」
「全然、意味わかんない。創ちゃんが反対しても私はフローラ大学附属高校に行くからね」
「それは合格してから言いなさい。滑り止めの学校も決めないとな」
「意地悪だな。絶対合格するからね。それに、創ちゃんの法凛大学だって、男女共学でしょう」
「そうだけど。それが何か?」
「法凛大学には美人の女子大生が沢山いるんだよね。歴代のミス法凛は人気女子アナになってるし、美貴さんも妃乃さんも法凛大学だし、超美人だし」
「確かに、美人はたくさんいるけどさ」
「あー、今女子大生を妄想したでしょう。鼻の下が伸びてるよ」
「ばか、俺には礼奈がいるんだ。鼻の下なんて一ミリも伸びてません」
「ほんとかな? 測っていい?」
礼奈は物差しを手に、俺の鼻の下を計ろうとしている。
「話を誤魔化すな」
誤魔化したくもなる。
だって美人女子大生には、どう頑張っても勝てないから。
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