45
「ばーか、何を勘違いしてんだよ。お前の頭ん中、エロしかないのか。俺は今日から礼奈の家庭教師なんだよ。勝手に部屋に入らないでくれるかな」
「創が礼奈の家庭教師!?」
「おう。今日から俺を『先生』と呼べ」
「あほか、純真無垢な礼奈に、お前は何を教える気だ!」
アホは敏樹の方だ。
勉強に決まってんだろ。
でも……勉強にも色々あるからな。
「得意の数学とか、英語に決まってるだろ。俺は敏樹より成績は良かったからな。お前はスポーツ推薦だし」
「フン、十段階で評価七だったくせに。創に家庭教師が勤まるのか」
「お前は評価五だろ。五段階評価じゃないのに、体育以外は全部五。よく俺と同じ大学に合格したよな。空手に感謝しろよ」
敏樹はスポーツ推薦で大学に合格した。鬼瓦軍曹は都の大会で優勝した実績を持つ空手部の主将だ。
「敏樹、邪魔すんなよな。俺達、今から勉強するんだから」
「ちぇっ、勉強なら俺が教えてやるっつーの」
「お兄ちゃんと勉強するのは死んでも嫌。創ちゃんじゃないと勉強しないんだからね」
敏樹は口をへの字にひん曲げ、部屋のドアを閉めた。ていうか、ドアの隙間がちょっと開いてるし、そこから小さな目玉がギョロギョロしてるし。
超気持ち悪い。
ここはホラーの館か。
「敏樹!」
「ちぇっ!」
敏樹はバタンとドアを閉めたが、まだ人の気配を感じる。絶対にドアに耳をあて、盗み聞きしてるに違いない。
「敏樹いい加減にしろ!」
『チッ』
ドア越しに敏樹の舌打ちが聞こえた。
やっぱりな。
「礼奈、英語の教科書を見せて」
「うん」
俺は中学校の英語の教科書をパラパラと捲る。
「志望校聞いてなかったな。第一志望はどこ?」
「フローラ大学附属高校」
「フ、フローラ!? あそこは偏差値が高いし、男女共学だし、私学を受験するなら女子校にすればいいのに」
「女子校? どうして? フローラの制服は都内の高校で一番可愛いんだよ。スカートやブラウスが何種類もあって組み合わせは自由なんだから」
「もしかして、制服で高校を選んだのか?」
「うん、女子の間では一番人気なんだからね」
はぁ……。
ダメだこりゃ。
「礼奈、学校の成績はどれくらい?」
「お兄ちゃんや創ちゃんよりはいいと思う。でも創ちゃんが勉強を教えてくれるなら、もっと礼奈頑張る」
「本気でやらないと、フローラ大学附属高校は受からないよ。志望校がフローラ大学附属高校なら、遊んでる暇はない。ビシビシやるからな」
「ビシビシ? 嬉しい。創ちゃんが合格祝いにキスしてくれるなら、どんなスパルタも耐えられる」
ぐっ……。
キスが合格祝い?
「お母さんに家庭教師を頼まれたんだ。合格してもそんなことはしません」
「えー? つまんないの」
俺のお姫様は、どうやら受験生の自覚はゼロのようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます