44
「広兼先生、宜しくお願いします」
「礼奈、先生だなんてよせよ」
「創ちゃん、毎日来てね」
「毎日はちょっと難しいかも。バイトもあるしな」
「先生、礼奈は本気で勉強したいの。ダメかな?」
上目遣いで俺を見上げる礼奈。
『本気で勉強したい』って、本当なのかな?
ちょっと嘘っぽい気がする。
「礼奈、毎日は創ちゃんに悪いわよ。週に二、三日頼めるかしら?」
「はい、わかりました。バイトは週三なので、そのくらいなら都合がつくと思います」
「じゃあ宜しくお願いしますね。礼奈しっかり勉強するのよ」
「はーい、ママ。真剣に勉強するから、部屋には絶対に入って来ないでね。覗き見もダメよ」
上機嫌で返事をした礼奈。
今のセリフ、深い意味はないよな?
俺は家庭教師なんて未経験だし。しかも大学生になったばかり。この俺が本当に勉強を教えることが出来るのか不安だ。しかも生徒は、この小悪魔なお姫様なんだから。
俺達は礼奈の部屋に入る。部屋に入るなり、礼奈は俺にムギュって抱き着いた。
「こらこら、俺は抱き枕じゃないんだよ。礼奈は受験生なんだから。ちゃんと受験勉強しないと。どうして進学塾に行かないんだよ? 俺に勉強を教わるよりも効率的だし、志望校の合格率も上がるのに」
「進学塾で他校の男子と仲良くなってもいいの?」
そ、それは困る。
「みんな勉強するために通ってるんだ。塾でナンパする男子はいないよ」
「そうかな。もしも塾の先生が超イケメンだったらどうする?」
そ、それも困る。
礼奈に近寄る男は、中学校の教師だってNGだ。
「だったらプロの家庭教師にするとか」
「プロの家庭教師と二人きりで勉強してもいいの? 誘惑されちゃうかも」
……っ、俺を脅してるのか?
女性の家庭教師を雇えばいいだろう。
「だからね、礼奈は創ちゃんがいいの。創ちゃんじゃないと、勉強する意欲がわかないの。ねっ先生、宜しくお願いします」
先生だなんて。先生だなんて。
その呼び方、ちょっと萌えだな。
正直、かなり萌えだ。
「今度さ、書店で問題集を何冊か買ってくるよ」
「うん、ママに問題集のお金は貰ってね」
「そんなことしていいのかな?」
「だって創ちゃんは、家庭教師だもん。必要経費は請求しないとね。家庭教師の月謝ももらえばいいのに。そしたら週末のデート代にできるし」
なるほど。月謝を貰ってデート代を浮かせるのか。さすが俺の姫は頭がいい。
いやいや、それはちょっと違うだろ。そんなことをしたら、俺の良心が痛む。
でも教材費くらいは、必要経費だから貰ってもいいかも。
「今日からする? ねぇ、創ちゃん、今すぐする? ねぇ、しようよ」
『今すぐする』とか『しようよ』なんて言葉を、礼奈が言うと誘惑されてるようにしか聞こえない自分が怖い。
「うん、やろうか。見せて」
「やだぁ、創ちゃん本当にやるの? じゃあちょっとだけだよ。今、見せてあげるね」
バンッてドアが開き、鬼の形相をした敏樹登場だ。
「さっきから、『やる』とか『する』とか『見せて』とか『見せてあげる』とか、お前らエロいんだよ! 創! お前ぶっ飛ばすぞ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます