理不尽な夜だったけど、素敵な朝だったね。

39

「創ちゃん、星が綺麗だね」


「そうだな……」


 夜空に煌めく星よりも、隣に寝ている礼奈の方が何倍も綺麗だよ。


 俺の腕まくらで、夜空を見つめる可愛い横顔。


 どうしよう……。

 キスしたくなってきた。


 キスしようかな。

 キスくらいしてもいいよな。


 あいつら、今頃テントでイチャついているんだから。


 礼奈の体を引き寄せ、その髪を優しく撫でる。会話は途切れ沈黙が流れた。


 首の後ろがちょっとだけ汗ばんでる礼奈。俺は緊張からかすでに汗だくだ。


「礼奈……あ、暑くない?」


「うん、ちょっと……暑い」


「車の窓を全部開ける?」


「やだ……外から見えちゃうもん」


 見えちゃうもんって……。

 

 そんな色っぽい言い方しなくても。


 もしかして、俺の下心も見えてるのか?

 ヤバいな。ダダ漏れだ。


 車の窓にはカーテンもついてるし、しかもスモークガラスだし、もう少し窓を開けてもプライバシーはバッチリ確保されてる。


 そもそも、ここは駐車場だ。

 周辺の車の所有者は、みんなテントや砂浜で楽しい夏の夜を過ごしているはずだ。


「……礼奈……キスしていい? お、おやすみのキスだから」


「うん……」


 俺は礼奈の額にチュッとキスをする。


「……っ」


 車の中でキスするのは初めてだよ。なんか……テンションが上がってきた。


 額にキスしただけなのに、礼奈の頬はほんのり赤く染まる。


 額にしかキスができない焦れったさと、はにかんだ礼奈の顔が可愛くて、自分の意思に反して、額から唇が離れない。


「……やだぁ。くすぐったいよぅ」


 どうしよう……。

 もう制御不能だ。


 AIだって誤作動を起こすことはある。


 礼奈が普通に呼吸しているだけで、その息が頬に触れ俺の理性をじわじわと破壊していく。


 理性なんて、理性なんて、この世から抹殺だ。


 このキャミソールワンピースの肩紐のリボンを解くと、パラッとはだけるんだよ。


 ――『簡単じゃん。解いちゃえよ』

 欲望が俺の脳内で悪魔のように囁いた。

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