【3】お姫様と見た星空

妄想キャンプは『欲望』が『理性』をぶっ壊します。

32

「なぁ、創。キャンプいかね?」


 夏休みも終わりに近づいた頃、敏樹からキャンプに誘われた。


「キャンプ? いいね」


「だろ。高校最後の夏休みだし、良も誘ってさ」


 良は俺達の共通の友達、林田良介はやしだりょうすけ


「何処にいくんだよ?」


「そりゃあ、山より海だよな。キャンプは海に決まってるだろ。湘南だよ、湘南」


「男三人で行くのか?」


 野郎三人でキャンプって、礼奈にナンパ目的だと勘違いされそうだよ。


 しかも狭いテントで、抱き合って寝る気かよ。


「バカか、彼女同伴に決まってんだろ」


「えっ? 彼女同伴!?」


「そうだよ。彼女同伴。それなら創も行くだろう」


 俺の脳裏に、ニコッて笑った礼奈の顔が浮かんだ。礼奈とキャンプだなんて、初体験だよ。礼奈の水着姿を想像しただけで、デレーッと鼻の下が伸び鼻息が荒くなる。


 こ、これはヤバすぎる。


「こらっ、何コーフンしてんだよっ!」


 敏樹にピシャリと頭を叩かれ、妄想の世界から現実に戻った。


「いや……そのう……」


「てめぇ、礼奈の服を剝ぎ取り水着にして妄想してねぇだろうな!」


「……いやいや、着せ替え人形じゃないんだから、そんなことは……」


 ていうか、妄想するに決まってるだろ。

 大好きな礼奈と初キャンプなんだよ。


「この間のこともあるし、お前を殴ったせいで礼奈はまだ怒ってるし、礼奈の機嫌をとるために、今回は礼奈の同行を許可するけど、創、わかってんだろーな」


 つうか、お前は礼奈の親父かよ!

 なんで、敏樹の許可がいるんだ。


「わかってるよ。『礼奈に手を出すな』って言いたいんだろ!」


「そーそー。わかってればよろしい」


 ――くそっ、兄妹揃って俺を虐めるのか?


 仔猫みたいにスリスリ擦り寄って、蛸の吸盤みたいにはりついて離れない礼奈に、俺が対抗できると思ってるのか。


 だけどその誘惑に負けて、俺が礼奈に手を出したら、敏樹にボコられるんだよな。


 俺はどうすればいいんだよ。

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