第23話 作戦会議!(前編)
清掃を終え戻ってくると、もう既に撮影用の機材が部室の中に運び込まれていた。
どうやらあの後すぐにここまで持ってきてくれたらしい。
「アイツら……勝手に部室に入りやがって」
「別にいいだろ。機材を貸してくれて、その上ここまで持ってきてくれたんだから」
「そうかもしれないけど、あんな奴らにアタシのテリトリーを踏みにじられたと思うと……」
持っていたトングを高速でカチカチさせるラン。
それで怒りを表現しているのだろうか……。
「でも良かったですね! これで映画が撮れます!」
「ノー。まだ全然必要なものが揃っていない」
「えっ、でも機材は――」
「桜の言う通りだ。まだ道具の問題だったり、キャストや役割も全く決めてない」
「それに作ったとしても、それを見せる機会が一番大事だよね」
星七の言う通りだ。そもそも、この映画を作る目的は自己満足ではなく、星人に対しての理解を深めてもらう為だ。だから、それを公開するような場所と時間が必要なのだ。
「だったら、隊長のアタシが麗にお願いしてみるわよ」
ランがたまには部長らしい事を言う。確かに、四天王寺ならどうにかしてくれるかもしれい。
「まずはそこからだな。その後、色々と決めておこう」
やるべき事は分かった。後は目的に向けて、着々と一段一段積み重ねていくだけだ。
◇
翌朝、俺はランと共に生徒会室を訪れていた。
生徒会長という立場上、アポイントメントを取らなければ会えないと心配していたが、直談判しに行ったのにもかかわらず、帰されるどころか拍子抜けする位あっさりと招き入れられてしまった。
「ふむ……、映画か」
「そうよ、そこで麗にはアタシ達が公表する場所を貸す許可を欲しいの!」
頼む立場なのに相変わらずのラン。その横で、俺は小さく謝罪とお願いの意味を込めて頭を下げる。
「よし、なんとかしてみよう。清掃活動の事もあり、学園内で君たちの評価は上がっている。それに私自身も、君たちの力になりたいと思っていたところだしな」
「ありがとうございます」
「ありがとう麗!」
俺は再び頭を下げ、ランは恐れ多い生徒会長に抱き着き、尻尾を振っている。まるで飼われている犬の様だ。
しかも、四天王寺自身も嫌がることなくランの頭を優しく撫でており、その飼い主にしか見えない……本人たちに言うのは絶対にやめておこう。
「なるべく許可の事は早く連絡しよう。君たちの制作活動が上手くいく事を祈ってるよ」
そう言っていた四天王寺だったが……放課後には、その許可が取れたと連絡があった。
地球防衛部の部室に隊員全員が集合し、それを報告する。
「凄いね、まさか第三講堂を使わせてもらえるなんて」
「あぁ、本当にあの人は何者なんだ……」
得体の知れない部活を作る許可をくれたり、場所を貸してくれる承認が半日で下りたり……明らかに生徒会長という権力以上のものが働いている様な……。
「で、発表日が今から来月の第二土曜日の放課後。今からちょうど一か月ね」
「い、一か月後ですか。それってどうなんですか、隼大さん?」
「規模を短編の映画する、いやするしかないにしても全く時間がないな。正直今から急ピッチで撮らないと間に合わない」
「少なくとも、これから清掃活動は当分お休みだね……」
「そうだな、少しでも今は映画製作に時間を向けたい」
現在俺たちは作品の方向性も、役割も何もかも決まってない。出発したけど辿り着く場所が分からず、彷徨っている船と一緒だ。
「だから一応、俺の方で役割は考えてきた。演者の方は、俺以外は一応全員出てもらうからな」
授業中に書いたそれを見せる。隣には都合よくランとアコもいたので、ちょくちょく揉め……相談し、決める事が出来た。
「アタシが脚本と主役!」
「ワタシは悪役です……」
「ウチは演出、編集」
「わたしは衣装とアシスタントね」
「で、俺が監督兼カメラマンだ」
これが適職だと判断し、振り分けた。最初にランが、主役、脚本、監督、カメラマンをやりたいと訳の分からない事を言い出したが、何度も懇切丁寧に無理だという事を説明し、折れさせた。
「衣装の方は、玩具天国にあったオリジナルスーツを使わせてもらおうと思ってるんだけど大丈夫か?」
というか、それ頼りで衣装担当を星七に振った。これに関しては断られたら、本当に後がない。
「うん、お父さんも大丈夫って言ってくれると思うけど……。あれは採寸も特にせずに作ってるからサイズが合うか分からないよ」
取りあえずは胸を撫でおろす。
「じゃあ、早速今日行ってランとアコに合うスーツを見つけよう」
やるべき事は沢山ある、だが今はしなければいけない事を優先し動いていこう。
「それと脚本は出来たら俺に直ぐに報告してくれ。早い方がいい」
「任せなさい! はりうっど? も超える様な超大作を書いてやるんだから!」
短編映画で予算も時間も能力もないし、作れるとは思えないが……。多分ランはそれを理解してないようなので、後で修正が必要になりそうだ。
「後は、演出の方は大丈夫なのか?」
タブレット端末をいじっていた桜に確認する。
「イエス。サーチで、音楽やSEもフリーのものを自動で選出する事が出来る。スクリプトソフトについても、前にランが特撮を見ていた時に興味があって勉強した。完璧に使える」
思わず即戦力じゃないか! と言いたくなる。ゼンマイはついているが、流石天才高機能AIだ。
「編集は俺も協力してやる。分からなかったり、こうしたほうがいいみたいな案があったら言ってくれ」
「イエス」
いつもの返事だが、どことなく頼もしく思える。
取りあえず今は動こう、問題は出て来てから対応すればいい。
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